第16章:嘘
「油断するな。街道に出たとはいえ、ここはまだ黒い森の領域だ。あの木々の陰から、いつ魔物や野獣が飛び出してきてもおかしくない」
ガレンの声が静寂を破った。重く、警告に満ちていた。
僕は力なく頷くだけにとどめ、反射的に左胸に手を当てて、ジャケットの内側にグロック17のグリップの膨らみがまだあることを確かめた。薄い霧が立ち込め始め、石畳の道を乳白色の帳で包み込み、視界をわずか数十メートルほどに遮っていた。
僕は下を向き、足元を見つめた。
これは山でよく見かけるありふれた土の小道ではない。本格的な土木工事の賜物だ。大きな川石が幾何学的な精密さで敷き詰められ、平らに突き固められており、以前ユーチューブのドキュメンタリーで見た古代ローマ街道に似ていた。石の隙間に生えた緑の苔はこの道が非常に古く、おそらく何百年も経っていることを物語っていたが、路面は今なお頑丈で平坦だった。
ありがたい。
少なくとも、ぬかるんだ赤土に足を取られずに済む。
しかし、その安堵感も新しい体の現実的な体力によって徐々に削り取られていった。
三十分が経過した。
肺が焼けるように熱かった。呼吸をするたびに重く苦しい。朝の四時から休む間もなく酷使されてきた両足は――ゴブリンの巣での疾走から、生死を賭けた戦い、そしてこの長い道のりに至るまで――今や煮えたぎる鉛を詰め込まれたかのようだった。
「はぁ……はぁ……ガレン、ディナ……」
僕は立ち止まり、震える膝に両手をついて前屈みになった。背中を冷や汗が流れ落ち、ジャケットの湿気と混ざり合う。
「まだ……はぁ……遠いの?」
僕は顔を上げ、すがるような目で二人を見つめた。
ディナとガレンが振り返った。ディナは元気そのもので、まるで街の公園を散歩してきたかのように息も乱れていなかった。ガレンも、無事な方の肩に重いトムを担いでいるにもかかわらず、目立った疲労の色は見せていなかった。
『くそっ。これが身体能力の差なのか?』
「あと数キロよ、リアム」
ディナは励ますように微笑んで答えたが、正直なところ、今の僕には少し癪に障る笑顔だった。
「この速度なら、たぶん今夜にはヴェニンブルクの門に着くはずよ」
「今夜?!」
僕はもどかしさに声を漏らした。
「足がもげそうだよ。昔は……こんなに長く歩いたことなんてなかったんだ。ましてやこんな起伏のある道なんて」
ディナはくすくすと笑った。
「もっと体を鍛え直さなきゃね、リアム」
僕の腹が突然鳴った。大きく。昨晩から空っぽだった消化器官が奏でる抗議の合奏だった。
ガレンはトムをゆっくりと地面に下ろした。僕を見つめ、それから僕の腹に目をやった。
「みんなは……お腹空いてないの?」
僕は恥ずかしそうに尋ねた。
ガレンは深くため息をついた。
「腹が減ってるに決まってるだろ、リアム。ペコペコだ。だが食糧は昨夜で完全に底をついた。何を食えってんだ? 草か?」
僕は背筋を伸ばし、額の汗を拭った。あるアイデアが閃いた。というか正確には、僕の個人商店からの解決策だ。
「それなら……少し休んで食事にしない? 僕、まだ予備の食料があるんだ」
ガレンとディナの目がわずかに見開かれた。道路脇の岩にもたれかかって座っていたトムが、弱々しくも熱心に頷いた。
「本気か? なら断る理由はないな」
ガレンはきっぱりと言った。
僕たちは街道から脇にそれ、直接風が当たらないように少し藪に隠れた場所を探した。
ガレンはすぐに作業に取りかかった。大剣で藪を払い、僕たちが座るための小さなスペースを整えた。それから散らばっていた木の小枝を集め始めた。
問題は、この森が湿っていることだった。木々は濡れていた。
ガレンは長剣を使って湿った薪を割ろうとした。ボコッ! 刃のこぼれた剣は弾かれるだけで、うまく割れなかった。その剣は肉を斬るために作られたもので、薪を割るためのものではなかった。
「待って、これを使って」
僕は腰に手を伸ばし、冒険の始まりに十ポイントで買った炭素鋼ハンティングナイフを引き抜いた。ガレンに向けて放り投げる。
「受け取って」
ガレンは柄を手際よくキャッチした。彼はしばらくそのナイフを見つめた。マットブラックの刃、人間工学に基づいた複合ゴム製のグリップ、そしてその光沢から伝わってくる鋭利さ。
「恩に着る。俺のナイフはさっきのゴブリンの巣で失くしちまったんだ」
彼は呟いた。
彼はそのナイフを濡れた木に振り下ろした。
スッ。
まるでチーズを切っているかのように、木は滑らかに両断された。ガレンの目が丸くなった。もう一度試す。スッ。火種用の薄い木削りが難なく作られていく。
「なんてこった……」
ガレンは手の中のナイフを驚嘆の目で見つめた。慎重に刃に触れる。
「一体どういうナイフだ? 切れ味が凄まじい。まるでミスリルナイフのようだ。それにこれを見ろ……」
彼は刀身を指で弾いた。
「これほど湿気があるのに、錆びの兆候が微塵もない。それに柄の作りも……目釘もなしに完璧に一体化している。実になめらかだ」
ガレンは深い好奇心を湛えた目で僕を見た。
「これほどの業物だ……相当な高値がしたんじゃないか?」
「ええ、まあ……」
僕は適当に答え、気に留めていないふりを装いながらバッグからステンレス鍋を取り出した。
『たった十ポイントだよ、ガレン。あんたを救った手榴弾より安いんだ……』
『さっきミスリルナイフって言ったか? あの金属、この世界にも実在するのか?』
即席のかまどを作るために石を並べ始め、その上にピカピカの鍋を置いた。ガレンは手持ちの火打石と、僕のナイフで作った乾いた木削りを使って、ようやく小さな火を起こすことに成功した。
ディナが僕の隣にしゃがみ込み、その目はステンレス鍋に釘付けになっていた。鏡のような金属の表面に、彼女の顔がはっきりと映り込んでいる。
「すごく……綺麗な鍋ね」
ディナは鍋の縁に触れながら呟いた。
「この金属……すごく滑らか。気泡もなければ、ムラのある場所もないわ」
彼女は僕を見つめた。
「どこで手に入れたの?」
「通りすがりの商人からだよ。う、うん、偶然その商人がいい物を持ってたから、あのナイフとこの鍋を買ったんだ、あはは」
僕はぎこちなく笑った。火の熱さのせいではない冷や汗が垂れ始めていた。
二人は鋭すぎる。現代の製品は、この中世世界においては加工の質の高さがあまりにも目立ちすぎていた。
ガレンが僕のナイフを返してきた。焚き火の向かい側に座り、僕をまっすぐに見据える。
「リアム」
その声は静かだったが、重みがあった。
「実のところ、俺たちはもう気づいているんだ」
僕の顔から笑みが一瞬で凍りついた。心臓が一拍止まる。
「気づいてるって……何を?」
僕は静かに尋ね、いざという時に対処できるよう、ジャケットのポケットの中で服の生地を握りしめた。
『思考が激しく回転した。僕が異世界から来たと知られたのか? 転移者だとバレたのか?』
「お前が自分で言っていたような『迷子の旅人』なんかじゃないってことさ」
ガレンは落ち着いた様子で続けた。
「迷子の旅人が、お前のように綺麗で上等な服を着ているはずがない。服のデザインこそ奇妙だが、生地は非常に高価に見えるし、貴族が普段着ている布地と同等かもしれないくらいだ。それにその道具も……」
彼は僕の鍋とナイフを指差した。
「さっき、通りすがりの商人から買ったと言ったな?」
「う、うん……」
「この黒い森を通る商人など存在しない。ここがルシ王国の最果ての地だと教えたはずだろ? 仮に来る者がいたとしても、前哨基地で冒険者用の補給物資や携帯食料を売る輜重兵くらいだ。そんな連中が、これほど質の高い鍋やナイフを売っているはずがない」
彼は少し僕を観察してから言葉を続けた。
「それに、お前の語る身の上話は、黒い森に関する知識の乏しさと完全に矛盾している。まず、お前は迷子の旅人だと言った。『迷子』ということは、少なくとも以前にルシ王国かフェルマン王国に立ち寄ったことがあるはずだ。百歩譲って陸路ではなく黒い森の海岸沿いから来たとしても、このアヴァロン諸島の存在くらい知っているはずだ。黒い森の海岸に漂着した遭難者だと仮定しても、その説はすぐに破綻する。お前の服も体の状態も綺麗すぎて、外海を漂流してきた人間の姿とは到底思えない」
彼は少し身を乗り出した。
「さらに言えば、俺たちと一緒に歩いている間、お前はこの世界について何も知らない人間のようだった。ゴブリンの残虐さについても、魔術についてもだ。お前が見せた反応は、人生で初めてそれらを目にした人間の反応そのものだった」
僕は唾を飲み込んだ。
チェックメイトだ。
万事休すだ。今や彼らは僕を嘘つきで、信用に値しない人間……下手をすれば敵だと見なしているに違いない。
『くそっ……自分の言葉が矛盾だらけだったなんて気づかなかった!』
「だがな」
もたれかかっていた場所からトムが口を挟んだ。その声は弱々しかったが、温かかった。
「話したくないなら、話さなくていい。誰にだって秘密の一つや二つはあるもんだ」
「ごめんなさい」
僕は肩を落とし、頭を下げて言った。
「嘘をついてごめん。でも……今はまだ、みんなに話すことができないんだ」
「いいんだ、坊主」
ガレンは薄い笑みを浮かべて答えた。
「俺たちに悪意を抱いていない限り、お前が誰で、どこから来たかなんてことは少しも重要じゃない」
安堵感が僕を満たした。彼らは僕が嘘をついていると知りながら、僕の素性ではなく、僕自身を信じることを選んでくれたのだ。そして幸いなことに……僕がなぜエルフの耳を隠すためにこのニット帽をかぶり続けているのかまでは尋ねてこなかった。
それこそが、僕が守らなければならない最後の秘密だった。
「ありがとう」
僕は心から言った。
「それじゃあ……あの茂みの裏で食料を取ってくるよ」
「本当は、加護を隠す必要なんてないのよ、リアム。知られたからといって危険なものじゃないわ」
「それに、私たちはもう前に見ているしね」
「あなたの加護は、食べ物や魔導具を出せる力なんでしょう?」
「もしかして……そのナイフも鍋も、あの奇妙な武器も、着ている服全部も、その加護から出たものなんじゃない?」
立ち上がろうとしたばかりの僕は、血の気を引かせてその場に固まった。
「図星みたいね」
ディナは勝ち誇ったように悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。
「そんなに怖がった顔をしないで、リアム。まるで私たちがあなたに何かひどいことでもするみたいじゃない」
「ごめん……」
僕は座り直した。
「本当のところ……加護って何なの?」
僕は尋ねた。
「じゃああんた、加護が何なのかも知らずにその力を使っていたのか?」
トムが呆れたように僕を見た。
「どういうわけか、もう驚きもしないな」
ガレンがため息をつきながら呟いた。
「加護とは、生まれつき特定の個人に世界から授けられる能力のことだ。魔術のように後から学ぶことはできない」
「この奇跡のような現象は、自らの被造物に対する神の深い愛と慈しみの証として創られたのだと言う者もいる。教会はそれを固く信じているな」
「だが一方で、加護は人間がまだ解明できていない偶発的な自然現象にすぎないという見解もある」
「真相がどうであれ、魔術と同じでこの能力自体に害はない。違いと言えば、加護は往々にして魔術よりも遥かに奇跡的だということだ」
「より奇跡的?」
僕は尋ねた。
「ええ」
ディナは頷きながら答えた。
「例えばあなたの加護がそうよ。その能力は、どんな魔術でも真似できないものだわ。無から有を生み出すなんて、本来なら不可能なの。今の時代の魔術にはそんな真似はできない」
「魔術であなたの能力のような物を作ろうとすれば、人間が普通に物を作るのと同じように過程が必要になるわ。それは奇跡とは呼べない」
「でも、あなたの力は完全に奇跡の領域よ。一瞬で現れるし、引き換えにする代償も何も必要としていないように見える。あったとしても魔力くらいでしょうけど、それにしたって驚くほど効率がいいわ」
ディナは少し言葉を切ってから続けた。
「神話の時代なら、そんな創造の魔術も実在したのかもしれないけれどね」
『そうだったのか……通販システムよ、お前は実はそんなに凄まじい力だったんだな』
『役に立たないだの、望んでいた力じゃないだの言ったさっきの暴言を許してくれ』
「加護の能力は個人によって千差万別よ。時々似たようなものもあるけれどね」
「でも、多くの人が持つ加護は実際のところ大して役に立たないものばかりなの。けれどあなたの加護は……ひどくユニークで便利そうね」
「服や武器、食べ物を出せる加護なんて、私自身見たことがないわ。トム、ガレン、二人はこんなの見たことある?」
「いや。俺の知る加護持ちの能力は、大半が戦闘特化型ばかりだ。リアムの能力ほど独特なものは見たことがないな」
ガレンが答えた。
「俺もない」
トムも同調した。
「情報を教えてくれてありがとう、ディナ。この世界を理解するのにすごく助かったよ」
「どういたしまして、リアム」
「それじゃあ待ってて、物を持ってくるから」
「ええ、待ってるわ」
ディナ、トム、ガレンが頷いた。
ディナは自分の食器を取り出し始め、ガレンとトムもそれに倣った。
「リアム、この水を鍋に注いでもいいか? スープを作るんだろ?」
「うん、どうぞ」
僕はガレンに許可を出した。
「システム」
僕は唱えた。
青い画面が現れた。温かくて汁気があり、腹にたまるものが欲しかった。元気が湧いてくるような何かが。
【インドミ 汁麺 ソト味(5袋パック)】
価格:10ポイント
【インドミ用 特大チリソースパウチ(150ml)】
価格:2ポイント
【ミネラルウォーター 1.5Lボトル ×2】
価格:4ポイント
合計:16ポイント
段ボール箱が手の中に現れた。すぐにそれを引き裂き、四袋のインスタント麺――一人一袋ずつ――と水、ソースを取り出した。
「それ、あの洞窟で食べていたもの?」
ディナが興味深そうに尋ねた。
僕は頷いた。
「お口に合わなかった、ディナ?」
「まさか、大好きよ。また食べたいと思っていたくらいなんだから。でもあのときはほんの少ししかくれなかったじゃない。ケチね」
ディナはその整った顔にわざとらしい怒りの表情を作ってすねてみせた。
「それなら、今回はお腹いっぱいになるよ。麺を丸々一人前あげるから」
「それなら、私の分も作ってちょうだい、リアム」
「ガレンとトムも食べる?」
僕は冗談めかして尋ねた。
「当たり前だ。俺の腹の音を聞いてみろ、さっきから鳴りっぱなしだ」
ガレンは自分の鎧をポンポンと叩きながら言った。
「俺も一杯頼むよ、リアム。作ってくれ」
トムも同調した。
「了解。みんなが食べたいなら、今すぐ作るよ」
湯が沸き始めたところで、麺の包装を開けた。
カサッ。
プラスチック包装特有の音が鳴る。
沸騰した湯の中に四つの乾麺を投入した。茹でられる小麦粉の香りが漂い始める。
それぞれの器に、ソト味の粉末スープと調味油を注ぎ分けた。
麺が茹で上がるのを待つ間、バッグの中身を開けた。
元のチュニック、ゴブリンの鍋、その他のゴミ。
歩み寄って、それらを茂みの中へと投げ捨てた。
これらの品はもう必要なかった。
「何を捨てたんだ、リアム?」
「ただのゴミだよ、ガレン」
「麺が茹で上がったみたいだ、取り分けるよ」
「みんな、器を出して」
ざるもおたまも持っていなかったため、スプーンを使うしかなかった。以前作った木の箸も捨ててしまっていた。
ファッ。
白い湯気が立ち上り、それとともに……破壊的な香りを運んできた。
人工ライムの爽やかな香り、レモングラス、ニンニク、そして濃厚なうま味調味料の風味が空気中に弾け、森のカビ臭い霧を突き抜けた。世界中の人間が思わず生唾を飲み込むような匂いだった。
ガレンは鼻をひくつかせた。目を見開く。
「この匂いは……たまらんな……ひどく食欲をそそる」
彼は鍋の方へ身を乗り出しながら言った。
『おい頼むから落ち着いてくれ、ただの小麦の香りだぞ』
トムまでもが背筋を伸ばそうとしていた。
「匂いを嗅いだだけで、腹が減って痛いくらいだ」
僕は誇らしげに微笑んだ。
「ところでリアム、この料理は何て名前なの?」
ディナが尋ねた。
「ミー・ソトっていうんだ。僕の故郷の郷土料理だよ。まあ、簡略版だけどね」
「ミー・ソトね」
僕はスプーンで麺をすくい、器へと一杯ずつ取り分けた。調味料が均等に混ざるようかき混ぜる。スープは食欲をそそる濁った黄色へと変わっていった。最後に、赤みと体を温める辛味を加えるために、適量のチリソースを注ぎ入れた。
「どうぞ、受け取って」
彼らはそれぞれの器を受け取り、口にし始めた。
僕も自分の器を手にとった。
ガレンはスープを軽くフーフーと吹き冷まし、木の器の端から直接すすり込んだ。
ズズッ。
彼は固まった。目を閉じる。
「これは……」
ガレンは目を開き、感嘆しながら器を見つめた。
「信じられないほど美味い。スープは様々な味が折り重なっていて濃厚だし、パスタに似たこの麺も柔らかくて絶品だ。俺が普段食べているあの硬いパスタとはまるで違う」
「この粉末も!」
麺を口に運んだ後、ディナが歓声を上げた。
「本当だわ、麺もスープも……すごく美味しい! 麺の食感も、普段食べている固い小麦のパスタよりずっとモチモチして柔らかいわ!」
「この出汁は……」
熱さと辛さで青白い顔を次第に赤らめながら、トムが満足そうに息を吐いた。
「まるで回復薬を飲んでいるみたいだ。体が一気に温まる」
「あんたが入れた、あの赤い液体のせいだな?」
トムが確認するように尋ねた。
「そうだよ。チリソースっていって、唐辛子っていう植物の実を細かくすり潰すと辛味が出るんだ」
「唐辛子? 聞いたことがないな」
「僕の故郷の植物なんだ。この能力で具現化しただけだよ」
「リアム、お前のその能力は本当に羨ましいほど便利だな。俺にそんな力があれば、森の中で腹を空かせたり不味い飯を食ったりしなくて済むのに」
ガレンは器を置きながら、羨ましそうにぼやいた。
それを聞いて苦笑いするだけに留め、自分も麺を口に運んだ。馴染み深いミー・ソトの風味が舌の上に広がった。
ああ……ささやかな現世の至福だ。
霧深き森のただ中、街道の脇で、僕たち四人は車座になってズルズルと音を立てながらインスタント麺をすすった。ほんのひととき、僕たちはゴブリンのことも、疲労も、周囲に潜む危険も忘れていた。
残ったのは、温かいソトのスープと、この奇妙な連帯感だけだった。




