第15章:街道を見つける
「よし、出発するぞ」
ガレンの声が、湿った朝の静寂を破った。肩に応急処置の包帯を巻かれながらも彼は真っ直ぐに立ち、昨夜の戦いの警戒の色をまだ瞳に残したまま、僕たちを一人ずつ見つめた。
僕は黒いポンチョのフードを深く引き下げ、顔の半分を覆った。さっきトムが返してくれたのだ。幸いにも、ガレンが彼を背負ってゴブリンの追撃から逃げた際、置き去りにされずに済んでいた。滑らかなPVC素材の生地には、冷たい夜露の粒がびっしりとついていた。
反射的にジャケットのサイドポケットに手が伸び、グロック17が無事にあることを確かめた。金属は冷たく湿っていた。
僕たちは移動を始めた。隊列は少し変わり、ディナが道案内として先頭に立ち、僕が中央、そして無事な左肩にトムを背負ったガレンが殿を務めた。
ガレンをちらりと横目で見た。ゴブリンのナイフで刺された右肩の傷口からは、汚れた包帯の隙間からわずかに血が滲んでいた。実のところ、残っている救急セットで包帯を巻き直してやろうかと申し出たい気持ちはあった。だが……言葉が出てこなかった。
さっきの言い争いによる気まずさと罪悪感が、まだ喉元に引っかかっていた。
『どうしようもないだろ? 僕は人付き合いの下手な負け犬なんだから』
心の中で自虐的に悪態をついた。
僕たちは次第に川幅を広げる川沿いを進んだ。今朝の森の雰囲気は、どこか奇妙だった。
頭上の空は幾重にも渦巻く分厚い灰色の雲に覆われ、太陽を完全に遮っていた。森は薄暗く、まるで永遠の夕暮れの中で時間が止まってしまったかのようだった。
デジタル腕時計のガラスから露を拭い取った。画面の黒い数字が緑色にぼんやりと光る。
07:35。
「朝の七時半か……」
僕は不思議に思って呟いた。
「もうすっかり明るくなっていていいはずなのに」
数歩前を歩いていたディナが、少し振り返った。その聡い耳が僕の呟きを捉えたらしい。
「どうしたの、リアム?」
「ううん」
僕は暗い木々の葉の隙間を見上げながら答えた。
「ただ……この森じゃ、こんな天気が普通なのかなって。すごく暗いから」
視線を隣の川へと移した。数分前までは澄んで穏やかだった水が、今や一変していた。粗雑にかき混ぜたココアのように濁った濃い茶色に染まっている。流れは激しく、小さな渦を巻きながら折れた枝や腐った落ち葉を押し流していた。上流で鉄砲水が起きた兆候だ。
「普通か、って?」
ディナはピンクの髪を揺らしながら、静かに首を横に振った。
「普段なら普通じゃないわ。でも、雨季ならこれが普通よ」
「雨季?」
フードの下で眉をひそめた。
その言葉は……ひどく特徴的だった。普通、四季のある国なら秋や冬と呼ぶ。雨季というのは熱帯気候特有の表現だ。
「そうよ。知らなかったの?」
ディナは探るような視線を向けたが、足取りは緩めなかった。
僕は首を横に振った。
「僕の故郷とは……気候が少し違ってて」
「そうなのね」
ディナは前方の微かな小道に視線を戻し、行く手を遮る濡れた枝を時折手で払った。
「雨季っていうのはね、アヴァロン島全体に空から雨が降り注ぐ長い期間のことよ。普通は丸々五ヶ月から六ヶ月くらい続くわ」
彼女は少し首を傾げ、人差し指で顎をトントンと叩いた。彼女独特の考える仕草だ。
「でもまあ……自然なんて予測できないものよ。時には四ヶ月くらいで短く終わることもあるし、逆に六ヶ月まで延びることもある。何が原因なのかは、王都の魔術師や学者たちだってまだ議論しているくらいだしね」
ディナは不吉な想像を払いのけるように軽く手を振った。
「でも、滝みたいに休む間もなくずっと降り続いているわけじゃないからね。そんなの恐ろしすぎるわ。それじゃ私たち、溺れ死んじゃうもの」
「降り方はもっと……気まぐれなの」
彼女は気楽な調子で説明を続けた。
「朝に大雨が降ったかと思えば、昼には汗ばむほど太陽がギラギラ照りつけて、夕方にまた雨が降ったりする。次の日は一日中晴れることもあるし、二日続けて一滴も雨が降らないことだってあるわ」
彼女は水たまりの中に小さな小石を蹴り入れた。
「雨の強さもコロコロ変わるのよ。恐ろしい豪雨の嵐になることもあれば、ただの小雨だったり、あるいは……」
彼女は頭上に垂れ込める灰色の空を指差した。
「……今みたいに一日中どんより曇っているだけだったりね」
彼女は荒れ狂う川の方を指差した。
「あの川が見える? 上流で猛烈な雨が降ったに違いないわ。この季節はね、鉄砲水や土砂崩れが冒険者にとっての一番の命取りになるのよ。魔物よりもずっと危険なんだから」
ディナはため息をつき、口から白い息が漏れた。
「昨日、黒い森に出発する前に行商人から聞いた話なんだけどね。山の麓にある村が、二日間降り続いた雨のせいで土砂崩れに巻き込まれて埋まったらしいの。本当に気の毒なことだわ」
その説明を聞いて、現代人として――そして基礎地理学をかじった大学生としての好奇心が刺激された。
五ヶ月から六ヶ月? それはひどく長い雨季だ。まさに熱帯地域の特徴そのものじゃないか。
「あのさ、ディナ」
僕は慎重に尋ねた。
「ここって……冬はあるの? つまり、雪は降ったりする?」
この質問にはリスクがあった。自分が暮らしている世界の基本的な気候を尋ねるなんて、「黒い森で孤立して暮らしていた住人」という偽りの設定を暴かれかねない。だが、自分が今どこにいるのかを把握するためには、この情報がどうしても必要だった。
ディナは一瞬言葉を失い、一瞬だけ足を止めてから再び歩き出した。
「また変な質問ね」
彼女はくすくすと小さく笑った。
「あるわけないじゃない。アヴァロン島は温暖な地域よ。雪や冬なんて、ここではあり得ないわ」
彼女は人差し指で顎をトントンと叩いた。
「天候を操作するような高位の魔術でも使わない限り、自然に雪が降ることなんてないわ。生まれてこの方、雪なんて一度も見たことがないもの。うちの先祖だってそうよ」
「あ、でも先生は見たことがあるって言ってたわ!」
不意に思い出したように、彼女は熱のこもった声で叫んだ。
「海の向こうのアタナシア大陸にある魔術協会の本部へ留学したことがあるのよ。あそこでは冬になると世界中が真っ白に染まって、吐く息が空気中で凍りつくんですって!」
僕は感心したふりをして何度も頷いた。だが頭の中では、パズルのピースを組み立てるように思考をフル回転させていた。
雪が降らない。降水量が多い。雨季がある。
結論――アヴァロン島は熱帯、あるいは少なくとも温暖な亜熱帯気候に属している。
だが……ここには大きな異常があった。
ディナの背中を見つめ、それからガレンとトムに目をやった。
彼らは白人だ。彫りの深い顔立ち、高い鼻、はっきりとした骨格、多彩な瞳の色――コーカソイドの特徴そのものだ。まるで北欧や西欧の人間のようだった。
進化論の観点からすれば、これは筋が通らない。
地球では、一年を通して強い日差しを浴びる熱帯気候に暮らす人間は、紫外線から身を守るためにメラニン色素を増やし、肌を黒く進化させてきた。彼らのような青白い肌は、日照量の少ない高緯度地域に住む人種の特徴であるはずなのだ。
なら、これは何を意味している?
アヴァロン島の人類は余所者なのか? 寒冷な別の大陸からの侵略者か? それとも……数千年前にこの島へ移住してきたばかりで、進化がまだ肌の色素を変えるまでに至っていないのか?
あるいは……この魔術の世界には、地球の科学理論など通用しないのか?
「考えすぎかもしれないな」
こめかみを揉みながら呟いた。
「竜がいて、魔術があって、ゴブリンがいるんだ。肌のメラニン色素なんかに頭を悩ませてどうする」
「どうしたの、リアム?」
ディナの声にハッと我に返った。彼女はまた後ろを振り返り、少し心配そうな表情を浮かべていた。
「難しそうな顔をして。頭でも痛いの?」
僕は慌ててとびきりの笑顔を作った――何も知らない無邪気な子供の笑顔だ。
「ううん、ディナ」
僕は答えた。
「ただ……疲れちゃって。早く街に着いて、ふかふかのベッドで眠りたいなと思って」
ディナは楽しそうに笑った。
「あはは、ふかふかのベッドね。私も恋しいわ。それなら、もうひと踏ん張り我慢しなさい。私たちの旅も、あと一日くらいで終わるはずだから」
「あと一日も?」
少しがっかりして声を上げた。僕の足はもうクラゲのようにふにゃふにゃだった。
「たぶんね」
ディナは少し自信なさげに付け加えた。
「正直に言うと、この森のルートを通るのは初めてなのよ。最初に入ってきた道から少し外れちゃったし」
焦りが込み上げてきた。
「待って……まさか迷子になったんじゃないだろうね?」
「落ち着け、リアム」
背後からガレンの太い声が響いた。
大柄な男は歩幅を広げ、僕たちの隣に並んだ。かなり重いトムを背負っているにもかかわらず、その呼吸は乱れていなかった。
「俺はこのあたりの地形を熟知している。さっき谷のゴブリンの巣を突破したことで、むしろ大幅に近道できたんだ」
不意に、ガレンが足を止めた。目を細め、前方を見据える。
僕は反射的に拳銃のグリップに手をかけた。
「敵?」
「違う」
ガレンが答えた。髭面に、ゆっくりと大きな笑みが広がっていった。
彼は顎で前方を指差した。
「あれを見ろ」
彼の視線の先を追った。前方で、生い茂る木々と藪が突然開けていた。広い隙間が森を二つに切り裂いている。
そしてその開けた場所の中央に、一本の道が延びていた。
ありふれた土の小道ではない。明確な意図を持って整備された道だった。綺麗に敷き詰められ突き固められた川石は、隙間に苔や雑草が生い茂っているものの、明らかに文明の痕跡を示していた。道幅は馬車が二台すれ違えるほどに広い。
王国街道だ。
「やっと……」
ディナは深く息を吐き、重荷を下ろしたかのように肩の力を抜いて安堵した。
「これで帰れるわ」
「本道だ」
ガレンの背中でトムが呟いた。弱々しい声だったが、希望に満ちていた。
「この道の先が、ヴェニンブルクだ」
僕はその石畳の道を見つめた。彼らにとっては帰り道だが、僕にとっては真新しい世界への本物の扉だった。
ジャケットの前を合わせ、彼らに続いて前へ踏み出した。
ついに、この世界の街を目にすることができる!




