第12章:死闘
脳内を駆け巡るアドレナリンのせいで、時間が歪み、まるでゆっくりと流れているように感じられた。
ガレンのわずかに開いた口から白い呼気が漏れるのが見え、軍太鼓のように耳元で乱暴に脈打つ自らの心臓の鼓動が聞こえ、僕たちの目の前にいる緑の軍勢から立ち上る錆びた鉄の臭いが鼻を突いた。
何十もの黄色い瞳が一斉に瞬いた。静寂。
そして、一つの音がその静寂を引き裂いた。
バツンッ!
弓の弦が放たれた音だ。
「伏せろ!」
ガレンが叫んだ。
彼は大剣を大雑把な横薙ぎに振り抜いた。
キィン!
矢は弾き飛ばされ、鉄の鏃がガレンの剣の刃と打ち合って小さな火花を散らした。だが、それは単なる始まりにすぎなかった。合図だったのだ。
「キイィィッ!!」
あらゆる方角から甲高い鬨の声が爆発した。決壊したダムのように、緑色の生き物の海が前へと押し寄せてきた。木の槍が突き出され、黄色い歯の生えそろった口が大きく開かれ、僕たちの肉を引き裂こうと構えていた。
「ディナ! 俺の後ろへ! リアム、好きに撃て!」
ガレンが命じた。その声はもう震えていなかった。
ガレンは前へ進み出て、僕たちのための肉と鋼の盾となった。盾がないため、彼は両手で大剣を扱った。最初の一撃が先頭のゴブリンを肩から腰まで両断した。赤い血が噴き出し、すでにくすんでいた彼の銀色の鎧を濡らした。
感嘆している暇はなかった。三匹のゴブリンが仲間の死体を跳び越え、ナイフを構えて僕めがけて一直線に走ってきた。
『慌てるな。慌てるな。狙え』
手が震えていた。ゲームでの射撃の練習は、本気で命を狙われる感覚など教えてはくれなかった。視界には照準器などない。ただ揺れる銃口と、迫り来るおぞましい顔があるだけだ。
引き金を引いた。
プシュッ!
外れた。弾丸はそのゴブリンの足元の地面を抉った。
「くそっ!」
ゴブリンは嘲笑うように口を歪め、跳びかかってきた。
僕は一歩後ずさりし、木の根に足を取られそうになった。照準も合わせず、反射的に再び撃った。
プシュッ! プシュッ!
今度は、外すには距離が近すぎた。ゴブリンの胸が弾け飛んだ。跳躍の勢いのまま僕の足元に激突して倒れ、事切れる直前の鉤爪が新しいカーゴパンツをかすめて引き裂いた。
さらに二匹が迫る。
「どいて!」
ディナが叫んだ。
僕は横へと身を投げ出した。
「ウィンドブレード!」
カミソリのように薄い透明な風の刃が、鋭い風切り音を立ててディナの前方の空気を切り裂きながら放たれた。
二匹のゴブリンは避ける間もなかった。その首元が綺麗に切断された。
緑色の頭部が地面をごろごろと転がり、その顔には残酷な表情が貼りついたままだった。
「ありがとう!」
転がりながら立ち上がり、僕は叫んだ。
「油断しないで! 多すぎるわ!」
冷や汗をこめかみに滲ませながら、ディナが怒鳴り返した。
僕たちは小さな円陣を組んだ。ガレンが前方に立ち、近づこうとするゴブリンを容赦ない力強い戦い方で薙ぎ払った。無駄な動きは一つもない。一振りごとに一つの死があった。中央にいるディナは、回り込もうとするゴブリンの邪魔をするため、時折小さな風弾を放っていた。
そして僕……僕は中距離の処刑人だった。
プシュッ! プシュッ! プシュッ!
手の中のグロック17は休むことなく作動した。サプレッサーの静かな風切り音は、今や絶え間ない死のリズムのように響いていた。ガレンの剣の間合いをすり抜けたゴブリンや、遠くから弓を射ようとするゴブリンがいるたびに、僕が息の根を止めた。
一匹は頭に。一匹は胸に。さらにもう一匹は首に。
「くそっ、リロード!」
銃のスライドが後方で固定されたのを見て僕は叫んだ。弾切れだ。
マガジンキャッチを押し、空のマガジンが泥だらけの地面に落ちた。震える左手でポケットを探り、新しいマガジンを引き抜いて一気に押し込んだ。
カチッ。
スライドを引いた。再び発射準備完了。
だが奴らの数は減らなかった。それどころか、巣を踏み荒らされたアリのように、他の小屋からさらに多くのゴブリンが這い出してきた。
「ガレン! 左!」
一匹のゴブリンが小屋の屋根から飛び降り、ガレンの首を突き刺そうとした。
ガレンは身を捻ったが、コンマ数秒遅れた。ゴブリンのナイフが彼の革の肩当てに突き刺さり、肉にまで達した。
「ぐあっ!」
ガレンは唸り声を上げ、激痛が彼の怒りに火をつけた。大きな左手でそのゴブリンの頭を掴むと、力任せに握り潰すようにして地面に叩きつけた。
バキッ。
骨の折れるおぞましい音が響いた。
「ガレン!」
ディナが悲鳴を上げた。
「平気だ!」
ガレンは肩からナイフを引き抜いた。新鮮な血が勢いよく噴き出す。彼の呼吸は荒く途切れがちになり始め、剣を振るう速度も次第に鈍っていった。
ディナの頭上の空気が激しく歪み、勢いよく渦巻く五つの白く透明な魔力の渦へと凝縮していった。
一瞬のうちに、その渦から何十本もの風の槍が射出され、彼らを取り囲むゴブリンの群れに向かって巨大なドリルのように回転しながら突き進んだ。
「ウィンドランス!」
ディナが叫んだ。
何百もの緑肌の小鬼の体が引き裂かれ、挽肉のようにバラバラに刻まれた。
ディナが魔術の杖を固く握りしめる中、杖の先端にある青い水晶は一段と輝きを増し、眩い光を放っていた。
その光景に僕は息を呑んだ。今のディナは、まるで敵を討ち滅ぼす戦乙女のように見えた。
ディナの魔術は凄まじかったが、敵の数が多すぎた。
『くそっ……彼らを助けるために、僕にできることは何かないのか?』
『僕たち三人、ここで死ぬのか?』
打開策を求めて頭がパニックを起こしていた。周囲を見回し、隙を、脱出路を探した。だが何もない。完全に包囲されていた。生きている緑の壁が、あらゆる方向から僕たちを閉じ込めていた。
ディナがゴブリンを屠り続けても、奴らの数はむしろ増え続けていた。
ディナはすでに限界を迎えているように見えた。
「リアム! ガレン! 何とかして! もう持たない!」
ディナが叫んだ。彼女の鼻から血が垂れ始めていた。
『何か。何かだ。考えろ、リアム! 僕にはシステムがある!』
僕は後退し、ガレンの広い背中の後ろに身を隠した。
『システム!』
心の中で叫んだ。
青いホログラム画面が現れ、乱戦の最中に透明に浮かび上がった。時間は止まらない。画面の背景で、ガレンがゴブリンの顔面を蹴り飛ばし、歯を砕いているのが見えた。
大量破壊兵器が必要だ。いや、それでは高すぎる。陽動になるものが必要だ。活路を開ける何かが。
潜入する前のガレンの言葉を思い出した。
「ゴブリンは光と音に敏感だ。暗闇で非常に優れた視力を持っている」
その考えが閃光のように頭を駆け抜けた。
光だ。
焦りながら検索欄に入力した。指が激しく震え、何度も打ち間違えた。
フラッシュバン。
結果が表示された。
【M84スタングレネード(フラッシュバン)】
説明:100万カンデラの閃光と170デシベルの轟音を発生させる非致死性手榴弾。一時的な失明、難聴、完全な空間識失調を引き起こす。有効半径5〜10メートル。
価格:30ポイント
『くそっ、高すぎる!』
深く考えることもなく、購入ボタンを押した。二つ。
合計:60ポイント
ブウゥゥン……
安全ピンのついた二つの金属製の円筒が手の中に現れた。冷たく、重みがあった。
「ガレン! ディナ! 目と耳を塞いで!」
ゴブリンの喚き散らす喧騒に負けないよう、ありったけの力で叫んだ。声がかすれた。
「何だと?!」
ガレンは二本の槍を同時に弾きながら、わけもわからず一瞬振り返った。
「いいから早く! 今すぐ!」
一つ目の手榴弾の安全ピンを歯で引き抜いた。冷たい鉄の味が舌に触れた。
ピン。
ピンが外れた。安全レバーが弾け飛ぶ。
ガレンの肩越しにその金属の筒を高く投げ上げた。門の前で最も密集していたゴブリンの群れのど真ん中に落ちる。
「目を閉じて!」
地面に身を投げ出し、両手で耳を塞いで目を固く閉じながら、もう一度叫んだ。
信頼か、あるいはパニックによる本能からか、ガレンとディナも同じように身を投げ出して顔を覆った。
ゴブリンたちは群れの真ん中に落ちてきた見慣れない物体を見つめた。何匹かは近づき、好奇心から鼻を近づけて匂いを嗅ぎさえした。
一秒。
二秒。
カァァァッ!!!
世界が白一色に染まった。
目を閉じ腕で覆っていたにもかかわらず、眩い白光がまぶたを貫いて見えた。そしてその音は……信じられないほどの轟音だった。
耳を塞いでいたにもかかわらず、大槌で叩かれたかのような衝撃が鼓膜を打った。大地が揺れる。
そして、悲鳴。
戦いの叫びではない。純粋な激痛の悲鳴だ。何百匹ものゴブリンが一斉に悲鳴を上げた。胸を抉るような凄惨な叫び声だった。
「ギャアァァッ! ギエェェッ!」
奴らは武器を取り落とし、自らの目を爪で引っかき、狂乱して地面を転げ回った。暗闇に適応した鋭敏な感覚が、今や呪いとなっていた。100万カンデラの光が網膜を焼き焦がし、夜の世界を苦痛に満ちた白い地獄へと変えてしまったのだ。
「今だ!」
立ち上がった。頭が少し耳鳴りを起こしていたが、視界はまだ保たれていた。
目の前の光景は完全な阿鼻叫喚だった。ゴブリンたちは目も見えず耳も聞こえず、方向感覚を失っていた。お互いに衝突し合い、混乱の中で同士討ちを始めていた。
「走れ! 門の方へ!」
僕は叫んだ。
ガレンは立ち上がった。閃光の残像で涙を流していたが、理解していた。彼はディナの腕を掴んだ。
「リアムに続け!」
僕たちは混乱したゴブリンの群れを突き破るように走った。
もう慎重に狙いを定める必要はなかった。行く手を阻むものすべてを撃ち抜いた。
プシュッ! プシュッ! プシュッ!
ガレンは左右に剣を振るい、攻撃が見えてすらいないゴブリンの肉を切り裂いた。僕たちは熱したナイフがバターを切り裂くように突き進んだ。
門に到達した。だがそこには、爆発の有効範囲外にいたゴブリンの一団が、戸惑いながらも立ち塞がっていた。およそ十五匹が脱出口を塞いでいる。
「くそっ、まだいやがるか!」
ガレンが悪態をついた。
ポケットを手探りした。まだフラッシュバンがもう一つある。
だがピンを抜く暇もなく、足元の地面が揺れた。
ズシン……ズシン……ズシン……
爆発の揺れではない。足音の振動だ。途方もなく重い足音。
門の前のゴブリンたちが不意に二手に分かれ、顔にありありと恐怖を浮かべて道を開けた。僕たちを恐れているのではない。背後にいる存在を恐れているのだ。
門の外の暗い森の中から、巨大な影が現れた。
身長は三メートル近くあった。傷だらけの濃い緑色の皮膚の下で、筋肉が岩の塊のように盛り上がっている。他の奴らのような革の鎧ではなく、全身を覆う粗野な黒鉄の鎧を纏っていた。右手には、恐ろしく鋭利に見える大剣を握りしめている。
その瞳は燃えるように赤く、邪悪な知性と純粋な残虐さに満ちていた。
「ホブゴブリン? 違う……もっと大きいわ」
ディナが静かに呟いた。
「ゴブリンロードだ……Cランクの魔物、ゴブリンキングの一段下の奴だ」
血の気を失った青ざめた顔でガレンが言った。手の中の剣がゆっくりと下がった。
その怪物――ゴブリンロードは僕たちを見下ろした。転がる配下の死体の山を見、僕たちが引き起こした混乱を見つめた。
突き出た牙の並ぶ口を開き、僕の骨の髄まで震わせるような咆哮を轟かせた。
「グルルルオォォッ!!!」
咆哮とともに猛烈な突風が巻き起こり、砂塵と枯葉を吹き飛ばした。放たれる殺気はあまりにも濃密で、首を絞められているかのようだった。
僕の神経系が叫んでいた――逃げろ。
だが足が動かなかった。九ミリ口径の拳銃で渡り合える相手の次元ではない。皮膚はトラックのタイヤのように分厚く見え、鎧に覆われている。あの大剣は……一撃でも喰らえば真っ二つにされる。
ゴブリンロードは大剣を高く掲げ、僕たちを微塵に粉砕しようと振りかぶった。
「リアム……」
隣でディナの声が激しく震えた。
「他に何か魔導具はないの?」
僕は唾を飲み込んだ。喉がカラカラに渇いていた。ポケットの中の最後のフラッシュバンを強く握りしめる。
「一つだけある」
僕は静かに答えた。
「でも、あんな大きな魔物に効くかどうかはわからない」
ガレンが一歩前へ進み出て、僕たちとその怪物の間に割って入った。肩から血を流しながらも、その背中は真っ直ぐに伸びていた。
「俺が食い止める」
彼は言った。その声は静かで、静かすぎた。
「お前たちは逃げろ。トムを探して、ここから立ち去るんだ」
「えっ?! 嫌よ!」
ディナと僕が叫んだ。
「死んじゃうよ!」
ガレンは少しだけ振り返り、笑みを浮かべた。
「それが戦士の役目だ」
僕たちの返答を待つことなく、ガレンは自らの恐怖を振り払うかのような雄叫びを上げ、その巨躯に向かって突撃した。刃の欠けた長剣を高く掲げ、死そのものに挑みかかる。
「ガレン!!」
巨大な剣が振り下ろされ始めたとき、時間が再び止まったように思えた。ガレンの死が目の前に見えた。
駄目だ。こんなの許されない!!!
こんな風に終わっていいはずがない!
手が勝手に動いた。
「システム!」
僕は叫んだ。絶望が脳の回転を今まで以上に加速させていた。
爆発物。高性能炸薬。
あの鎧を引き裂ける何かがいる。あの魔物を殺せる何かが。
リストが表示された。
【M67破片手榴弾】
価格:50ポイント
「購入!」
握っていたフラッシュバンを取り落とすと同時に、左手の中に緑色の鉄球が現れた。
ピンを引き抜いた。
「ガレン! 伏せろおおおッ!!!」
喉が張り裂けんばかりの声で、僕はありったけの力で叫んだ。
すでに大剣の間合いに踏み込みかけていたガレンは、僕の叫び声を聞いた。彼は何も尋ねなかった。振り返りもしなかった。僕を信じてくれたのだ。彼は前へと身を投げ出し、泥の中を滑り込むようにして、その巨体の足の間へと飛び込んだ。
僕は手榴弾を投げた。地面に向けてではない。咆哮を上げるゴブリンロードの顔面めがけて真っ直ぐに。
投擲は完璧だった。アドレナリンと恐怖、そして生存本能が僕の腕を導いていた。
緑色の鉄球が宙を舞い、ゆっくりと回転しながら……
大きく開かれたゴブリンロードの口の中へと、吸い込まれるように飛び込んだ。
怪物の赤い目が、喉に飛び込んできた異物に気づいて見開かれた。奴はむせ返り、その動きが止まった。大剣は狙いを外し、大地を揺るがす轟音とともにガレンの脇の地面を叩き割った。
一秒、二秒、三秒……静寂。
そして……
ドォォォォンッ!!!




