5章 ー03
「だったら止めなさいよ!」
朱奈は透子に言われるのが気にくわないとばかりに怒気を孕んだ目で叫ぶ。
「止めたところで、きゅう尾様の封印が解けたら私達だって無傷で済む訳ないじゃない!白拓は自分も死ぬ覚悟があったから封印を解こうとしたのでしょう?!」
透子も負けてはいなかった。
「朱奈にもその覚悟があるなら良いわ。でもそうじゃないなら、白拓を止めるんじゃなくて、白拓に加勢して。貴女も妖力が高いのでしょう?」
透子の怒りが爆発的なものから、静かなものへ変わっていく。
「なんで私が人間なんかの言う事を……」
「だったら自分で選んで。このまま白拓が傷つくのを見てるか、封印が解けて白拓が更に傷つくのを見ているのか」
透子は自分でも驚く程、冷静に怒りの感情を燃やしていた。
それが朱奈の自分勝手な行動になのか、彼女によって白拓がいたずらに傷ついてしまっているからなのか、それともその両方なのかは分からない。
分かるのは、静かに燃える怒りの炎と共に、何か別のモノが沸き上がってきている事であった。
透子の黒く、しかし星が瞬いている夜空のような瞳に、睨むかのように見つめられて朱奈はギリッと奥歯を噛み締めた。
「なんで私が……」
「いい加減にしてよ!」
透子は感情のままに朱奈の頬を叩いていた。
朱奈は衝撃的だった。
爪も牙も持たない下等な生き物が自分を傷つけたのだと。
「貴女はどうしたいのよ!?」
透子はおまけの言葉を投げ捨てて、麗華に向き直る。




