5章 ー01
『貴女にそっくりな少女が本当にいたでしょう?今は私のお陰で止んでいる雪も、その子のせいで止まなかったのよ。それに貴女のお母様だって……気味が悪いわよね。自分と同じ顔があるだなんて。大丈夫よ。私が良い事を教えてあげるー』
そう目の前の美しい女に教えて貰った通りに岩の縄を切った麗華は立ち尽くしていた。
目の前の女が少しずらした岩の隙間から流れ混んでくる空気は禍々しく、立ち尽くすしか出来ないのである。
「朱奈!」
叫び声のした方を向くと、濃紺の着物に黒の袴姿の見た事もない見目の良い青年がこちらに向かって大股で向かってきていた。
「白拓!」
麗華は初めて彼女の心の底からの笑顔を見た。
その華やいだ笑顔を見せていた朱奈の顔が曇る。
「ひっ」
麗華も気がついた。青年の後ろに例の少女がいる事に。
朱奈はその少女を"災いを呼ぶ女"なのだと教えてくれていた。
(本当、そっくりで薄気味悪い)
麗華は岩と少女に挟まれ、身を強ばらせる。
「朱奈、封印を解くとどうなるか話した筈だが」
青年の声は鋭く、それでいて凛とした美しさがあった。
「別にこの世がどうなっても構わないものっ」
朱奈は更に岩をどかそうとする。
(この世がどうなっても……?)
この時、麗華は漸く朱奈が自分に言った事が事実ではない事を悟った。
急いで近づこうとするも
「きゃっ」
と、岩に手を掛けた朱奈は吹き飛ばさる。
見えない壁に麗華も押し潰されそうになり慌ててその場から離れた。




