4章 ー11
透子はよく能天気な笑みを浮かべていた。
(本当の家は立派なのにそんな事も知らず、幸せなこった)
透子の能天気さ苛立ちを覚えた。
しかし、その笑顔は老婆を励ます為なのだと、自分の貧しさを打ち消そうとするものだと分かってしまってからは、腹立ちもなくただ健気な透子を見ているだけになってしまった。
そんな時に千載一遇の好機が訪れた。
透子が崖から落ちたのである。
罪悪感などなく老婆から透子を切り離した。
透子は雪があったとは言え、背中を強く打ち付けたのだろう。腰骨にヒビが入っていた。
(歩けぬかも知れぬ)
白拓は手から妖力をチマチマと送り込んでいる場合ではないなと、苦しげに顔を歪ませていた透子に口づけした。
透子のそれは、その香りに違わない味がした。
更に顔を近づけようとした時――
カリカリカリ
爪で襖を引っ掻く音が耳に入った。
「ちっ」
舌打ちしたが、透子の頬を優しく解放した白拓が襖を開く。
先程透子の足元を抜けたであろう鼠が、チーチーないて白拓に何やら訴えている。
白拓はしゃがんでそれを聞く。
「……おい、濁に快や老婆が結界から出ないように伝えろ。朱奈が片割れを連れ出しやがった」
立ち上がり、煙管を持っていない方の手を懐に入れた白拓は目を光らせ、そう透子に告げたのだった。
4章も終わりです。
あと2章で終わります^^




