4章 ー10
(あんなに人間嫌いな朱奈さんが?)
透子は信じられなかった。
「なぁんか、おかしいと思わないか?あの朱奈だぜ」
白拓もキナ臭いと思っている様子なので、単純に自分だけを朱奈が嫌っているのではないと分かり少し安心する。
「俺はお前らがあの家に戻る事に賛成できないが、帰りたいなら、いつ帰っても良い。命の保証はしないがな」
一言多いなと、透子は軽く白拓を睨む。
そんな透子を無視して白拓が煙をふーっと吐く。
「……私とばっちゃんはいつになったら家に戻れるのかなぁ」
溜め息と共に透子の口から言葉がこぼれ落ちる。
「別に一生いても構わないが」
耳聡い白拓が透子の言葉を拾ったが、彼の呟きは人である透子の耳には入らなかった。
(なんでこんな小娘が気になるのか)
ぶつぶつと不満を溢している透子を白拓は見つめた。
どこにでそうな特別可愛らしくも綺麗でもない人の子である。
強いて言うなら(だが、しかし霊力の高さ故か芳しい匂いがする)のだ。
双子の姉・麗華より強い花のような匂いを感じる。
この匂いのお陰で透子を見つけたと言っても過言ではない。
封印を解けるであろう姫巫女と似た香りを持つ透子を、ここより何里も遠い山で見つけた時、白拓は自分の運の良さに笑わずにはいられなかった。
数日観察していると、どうも老婆と二人きりで住んでおり、尚好都合であった。
いつなんどき拐かしても問題ないのだと、出来すぎた現実に彼は上機嫌であった。




