3章 ー12
「なんだよ。切り傷なら舐めとけば治るだろ」
透子の慌てぶりにクスクスと白拓が笑い、透子の片方の手首を掴む。
(からかってる…!)
身を捩るが、もう片方の手で腰を抱き寄せよせるように腕を回している白拓のせいで身動きが取れなかった。
自分の肌を這う白拓の舌の感覚に透子はぎゅっと目を閉じた。
「……これで良いだろう」
白拓が自分を解放する気配に透子は開眼する。
白拓は自分の指で唇の下を拭っていた。
(……っ)
「なんだよ」
赤い顔で自分を凝視する透子を不思議そうな顔をして白拓は見た。
「いえ、何も」
白拓はなんでもないようだが、ナツとずっと二人暮らしだった透子は免疫がなく、彼の行動に羞恥心を抱くのだった。
「ふ~ん?」
察した白拓は愉快そうに透子の顔を覗く。
透子は赤い顔で何でもないですよと、澄まして見せた。
「まぁ、良い。俺はちょっと外に出る。お前は良い子にしてろよ」
白拓は立ち上がり、透子の頭をくしゃりと撫でて部屋から出ていった。
(なんなのよ)
透子は赤い顔で乱れた髪を直す。
(本当になんなのよ)
実際、透子の首の傷は消えている。そんな事より白拓に首を舐められた事実の方が透子に重くのし掛かる。
透子は羞恥心以外の何かが混じっているような気恥ずかしさを、首を降って追い払ったのだった。




