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特別編13 「ハロウィン」

一話1000字前後の短編連作です。が、今回は特別編ということで若干長めになってます。


本編は毎週火曜日更新中!

 街から離れた草原にアトリエがポツンと一軒建っている。

 そこへ、小さな影が訪れた。


 コンコン。


「ん、お客さんかな? はーい、今出ますー!」


 街から遠いこともあり、錬金術士が住まうアトリエにお客さんとは珍しく、怪訝な表情を浮かべながらもお手伝いさんはドアノブをひねる。


「こんにちわっ! お菓子をくれないとイタズラしちゃいますよっ!」


 玄関先に佇んでいたのは、白金色プラチナに輝くショートヘアと大きなうさ耳が愛らしい郵便ちゃんことチナ……が、悪魔風の衣装を着てニッコリ笑顔で両手を差し出していた。

 彼女はその愛称のごとく郵便配達の仕事をしていて、ここをよく訪れるため顔馴染みだ。


「ああ、郵便ちゃん。お仕事はもう終わったの?」

「はいっ! 今日は超特急でおわらせましたっ!……っじゃなくて!」


 のんきにマイペースなことを言うお手伝いさんにすっかり乗せられて普通に返事をしてしまいつつ、首を振って本来の目的を思い出す。


「ハッピーハロウィンですっ! お菓子くれないとイタズラしちゃいますよっ!」


 改めて言い直し、両手を差し出す郵便ちゃん。


「はっぴーはろうぃん? って、何? 新しい遊びとか?」

「ええっ!? ハロウィンを知らないんですかっ?!」


 予想外の返事が返ってきて驚く郵便ちゃん。


 アトリエで暮らす面々は基本的に街へは行かず、1日のほとんどをアトリエで過ごす。それゆえに、街がハロウィンムードに染まっていても気付かない。


 そもそも、ハロウィンというものをお手伝いさんは知らなかった。


「お手伝い君〜? どちらさ……郵便ちゅわぁぁ〜〜ん!!!!!!!!!!」


 奥で錬金の仕事を続けていた錬金術士が、玄関での話し声を聞きつけて様子を見に来た。途端、猛烈ダッシュで郵便ちゃんに抱き付く。

 彼女はふわふわなものと可愛いものには目がない。視界に入っただけで我を忘れてしまうほどだ。


「れんきんじゅつしさんっ、あの……くるしい、ですっ?!」


 駆け寄ってきた錬金術士に熱烈なハグを極められて、小さな体がさらに小さくなっていく。


「なになに!? もしかして私に会いに来てくれたの〜!?」

「じゃなぐて、ハロヴィンでず……れんぎんじゅぢゅじざん……!」


 あまりにも興奮して力加減がバカになった錬金術士は、力いっぱい郵便ちゃんを抱きしめて肺の空気が絞り出されている。

 郵便ちゃんの意識が途切れてしまう前にお手伝いさんがやんわりと引き剥がしつつ、錬金術士を「どうどう」と馬のように落ち着ける。


「えっと、お菓子だよね。はいどうぞ」


 ばっちりお菓子を準備していたお手伝いさんはパッと懐から取り出して、郵便ちゃんに手渡した。


「あ、ありがとですっ! やっぱり知ってるじゃないですかハロウィンっ!」

「いや、知らないけどね。常備してるんだよ、色々あって。イタズラされてもこまっちゃうし」

「は、はぁ……?」


 何食わぬ顔をしながら、懐から取り出したお菓子を錬金術士に食べさせて落ち着かせている。というより、手懐けていると言った方が近いか。


 とにかく、郵便ちゃんからすれば〝お手伝いさんのお菓子をもらう〟という当初の目的を果たせたので、よしとしておく。

 実は街の方では、お手伝いさんの料理の腕が噂となり、結構有名だったりするのだ。


「はーい、それじゃあ先生は仕事の続きをしましょうねー」


 背を押され、ぐいぐいとアトリエの奥へ押しやられる錬金術士。視界に郵便ちゃんを入れておくといつまた暴走するか分からない。


「郵便ちゃん」

「はいっ?」


 奥から戻ってきたお手伝いさんから追加のお菓子を手渡され、呆然とする。


「ご家族とか、お友達とかに渡してあげて」

「いいのですかっ?」

「いつもお仕事頑張ってるからね。郵便ちゃんがいなかったらここまで仕事の依頼を届けてくれる人がいないからさ。感謝の印と、これからもよろしくってことで」


 お手伝いさんは暖かくなる微笑みを浮かべながら言う。


「ありがとうございますっ。では、ありがたく頂戴しますねっ」

「うん。今度来た時は、感想聞かせてくれると嬉しいな」

「かしこまりですっ! たまには街の方にも遊びに来てくださいね。その時はウチに寄ってくれるとうれしいですっ!」

「分かった。必ず」

「それではっ!」


 元気に返事をして、郵便ちゃんは踵を返し、猛烈なスピードで街の方角へ駆けて行った。


 楽しそうに帰っていく小さな姿を見送って、お手伝いさんは今後の事を考えて頭を抱える。


「おーてーつーだーいーくーんー」


 郵便ちゃんを勝手に帰してしまったため、暴徒と化してしまった錬金術士をどうやってなだめるか。お菓子を与えるのは一時しのぎに過ぎないため、これからが厄介だ。


 とりあえず、郵便ちゃんの言葉をそのまま伝えれば、落ち着くかもしれない。


「今度近いうち、郵便ちゃんの家に遊びに、街の方へ行きましょうか。買い足したいものもあるし」

「いく〜!」


 あっさりと負のオーラが払拭された錬金術士。どこまでも好きなものに正直な人だった。

個人的に郵便ちゃんことチナはお気に入りなキャラなんですが、本編では出番が来なくてなかなか登場させられず、実は歯痒い思いをしていたり……。


チナちゃんならいっぱいお菓子あげちゃう! ハッピーハロウィン!

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