081 「これも立派な錬金術だ」
一話1000文字前後の短編連作です。
毎週火曜日更新中!
一つ前に特別編13「ハロウィン」があるので未読の方はお気を付けを。
「うっ……」
突然後頭部を殴られて気絶してしまったお手伝いさんだが、ものの数十秒で目が覚めた。
いつの間にか随分と打たれ強くなってしまったのか、それとも師匠が手加減をしてくれたのかは分からないが、耳元で鳴り響く轟音のような耳鳴りがなければ、痛み以外に異常は感じられない。
「ん? もう起きやがったか。テメェはすげー奴なのかそうじゃねーのか、どっちなんだよ」
「少なくとも先生や大先生よりは凄くないですね……」
ズキズキと痛む後頭部を手で押さえながら、具合を確かめる。
かなり硬質な物で殴られたような衝撃だったが、その割には軽傷だ。血が出ているという事もなく、目立った外傷はない。少しタンコブが出来ているくらいか。
(もう帰りたい……!)
と、お手伝いさんが思うのも当然だ。いきなり背後から襲われて、ヘラヘラしていられるほどお人好しになったつもりはない。
心の奥底で、行方を眩ませてしまったいぬねこを恨みながらも深く息をついて心を静める。
いくら早く帰りたいと言っても、この八方塞がりな状況ではどうしようもない。また師匠に襲われてしまうのではないかという恐怖とも戦いながら、生きて錬金術士の元へ帰らなければ。
(きっと今頃、一人で黙々と錬金の修行をしているに違いない。喉を乾かしてたり、お腹を空かせていたりするかもしれない)
いつもそうだった。おねだりしてくるから、だから甘い紅茶やお菓子を準備してあげていた。
「大先生。いきなり殴りかかってきたことはこの際、脇に置いておきましょう」
鋼の精神力で文句を言いたい気持ちをねじ伏せて、冷静に物申す。
決して水に流したわけではない。脇に置いて後回しにしただけだ。
いつまでもやられっぱなしで終わるお手伝いさんではないのだった。
「おう。テメーにゃちょいと期待してんだ。このアタシを裏切るなよ?」
人の事をぶん殴っておいてよく上から目線に物を言えるなと密かに思いつつ、大きく咳払い。
「察するに、大先生のその……そこには、色々と物が入っているようですね」
「おう、ここか?」
そう言って師匠は、襟に指を引っ掛けて大胆にその胸を見せびらかす。
慌てて目線を逸らしつつ、しかし念のため殴られないように警戒は忘れない。
「そこから、何か使える物がないか探しましょう」
とにかくある物を全部出してもらったが、正直言って気持ち悪かった。
洞窟で戦った時に使ったあの背丈ほどもある大きさのスプーン。それと似たような物が他にも数本出てきたのだ。さらに小型の錬金壺や、よく分からない物やよく分からない物や、とにかくよく分からない物が大量に。
「大先生……いったいどんな手品で?」
「これも立派な錬金術だ」
谷間からありえない量のアイテムを取り出すのが錬金術なのかと言いたくなるが、師匠が発する謎の説得力には手も足も出なかった。
この人については気にしていたらキリがないと割り切って、とにかく漁ってみる。
師匠以外には使い方など分からない物だらけだが、使用するのではなく利用できればいい。
正しい使い方でなくてもいいのだ。
「大先生。これは?」
そしてお手伝いさんは、一つのアイテムをつまみ上げた。
次回第82話「あ、思い出した」
お楽しみに!




