031 「じゃあこうしましょう」
一話が1000字程度の短編連作です。一話3分もあれば読めるかと。
寒くなってきたのでコタツでぬくぬくミカンでも食べながらドゾ。
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いぬねこが言うには、怪鳥はこのカゴから発する匂いに釣られて攫ったらしい。
怪鳥がこのカゴの中身を欲しがっているのなら、あげるのはやぶさかではないというか、むしろ是非とも献上したい所だが一つ問題がある。
これは食べさせても良いものなのか、という点だ。
肉料理といぬねこから聞いたが、中身は変わらず、ツルツルピカピカの暗黒物質だった。
しかしお手伝いさんが食べた物と比べるとその匂いは段違いに強く、肉料理としての匂いがしてきたが見た目的に到底食べられる物とは思えない。
お手伝いさんが食べたおにぎりやサンドイッチには普通に考えると匂いと呼べる物は感じられないだろうが、この暗黒物質からは確かに良い匂いがしてきた事は事実。
おそらくこれの匂いが付いたため、おにぎりからも良い匂いがしてきたのだと思われる。
あの時は匂いに釣られて、もしかしたら悪いのは見た目だけで実は美味しいのかもと少しでも思ったのが間違いだった。
怪鳥もお手伝いさんのように、そんな過ちを犯してしまうかもしれない。もっと言えば食べるのは怪鳥ではなくてこの小さくて可愛らしい怪鳥のひな鳥だ。
食べさせたらきっと死んでしまうのでは。
そんな予感がお手伝いさんの脳裏をよぎる。
「これをひな鳥にあげるって言うんですか……?」
錬金術士が作った暗黒物質を指差して言う。
「匂いの元はそれに間違いないだろうし、人間には食べられる物じゃない。それは実際に食した君が一番分かっているだろう? 持っていてもしょうがないと思わないのかな?」
「それはまぁ……そうですけど……」
でも、錬金術士が作った料理だ。きっとピクニックのために頑張って作ってくれたに違いないだろう。下準備とか色々あったみたいだし。
これは確かに人間には食べられた物じゃないけれど、そんな錬金術士の頑張りを無駄にするような行為はお手伝いさんにはどうにも出来なかった。
「何を渋る必要があるんだい? それをこの怪鳥に渡すだけで事なきを得るんだよ?」
そうすればお手伝いさんがこれを食べる必要は無くなる。残してしまったと錬金術士に気を使わなくて済むかもしれない。いや、怪鳥にあげたら、食べなかった、もしくは食べられなかったって事になって結局気を使ってしまうかもしれない。
いつか感想を聞かれた時に困ってしまうだろう。味に違いがあるとは思えないが。
とにかく、お手伝いさんは錬金術士が作った料理を食べられないにしろ、勿体無いと思っているのだった。
「仕方が無い、そんな事で悩むようなら小生が他の可能性を提示してあげよう。君のリュックに入ってるのをあげるという選択肢も残っているんだよ?」
「え⁈ どうしてそれを!」
どうしてお手伝いさんの荷物の中身をいぬねこが知っているのだろう。確かにお手伝いさんのリュックの中には非常食としてお手製の干物やら缶詰やらの日持ちがする食べ物が入っている。しかし全て自室で用意したのでいぬねこがリュックの中身を知っている事は無いはずだ。
「なぁに、君の性格を考えれば、常に何かしらの備えはあるだろうと踏んだまでさ」
つまり、カマをかけた訳だ。
もしもの事態のために取っておきたかったが、今がそのもしもの時なのかもしれない。
「……じゃあこうしましょう」
そこで、お手伝いさんはある提案をした。
次回第32話「提案」
お楽しみに!




