030 「勘違い」
一話が1000字程度の短編連作です。3分もあれば読めるかと。
爪のお手入れでもしながらドゾ。
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お手伝いさんから見たら、いぬねこと怪鳥はただただ黙ってお互いの事を見つめ合っているようにしか見えなかった。
話をしてみようとか言っていたが、文字通り言葉を話す訳ではないようだ。
端から見ると、怪鳥に睨まれて身動き出来ない小動物、みたいな関係にも見えるような。
「ふむ……」
と、ときおり人語でいぬねこが発するくらいで、ほとんどが無言のやり取りだ。むしろ本当にやり取りをしているのか怪しいくらい。
いぬねこと怪鳥が見つめ合っているその間に、お手伝いさんは周りをぐるりと見てみる。
どうやらこの穴は怪鳥が掘って作った訳ではなくて、もともとあった洞窟をそのまま巣として使っているらしい。奥の方には暗くてよく見えないが空間が続いている。風も僅かながら流れているし、どこか別の場所に繋がっているのかも知れない。
そして最後に怪鳥のひな鳥を見てみる。
想像以上の小ささに驚いたが、間違いなくあの怪鳥のひな鳥だ。それが5羽。
専門的な知識が無いので詳しくは分からないが、元気が無いように見える。普通の鳥と同じような生態であるならばもっとピィーピィー鳴いてうるさいくらいだと思うのだが、このひな鳥達はえらく大人しい。
「そういう事なら、小生達に任せるといい」
話がついたようだ。
いぬねこはひな鳥の様子を見ていたお手伝いさんの元へ歩み、会話の内容を掻い摘んで教えてくれた。
「どうやらこのひな鳥達はお腹を空かせていて元気が無いらしい。だが餌を中々見つけられずに探し回っていた所、ちょうど小生達がきて良い匂いがしてきたから攫ったそうだ」
良い匂いと言うのはつまり、人間の匂いだろうか。この怪鳥は人肉を好む肉食動物だったのか? となると今現在のこの状況はかなり危ない事になる。
だが襲ってはこない。つまり人肉が目的ではないのか。
「良い匂いって……?」
「十中八九、君が持ってるそれのことだろうね」
いぬねこが言う〝それ〟とは、錬金術士が作ったサンドイッチが入ったカゴの事らしい。
「これ?」
でもサンドイッチに匂いなんてあるものなのか? 動物の嗅覚は人間よりも鋭い事は周知の事実ではあるが、大空を飛び回っていた鳥が匂いで獲物を見つけるなんて聞いた事が無い。
鳥が獲物を探す時は、嗅覚ではなく視覚で探すはずだが。
「でもこのカゴにはサンドイッチが入っているんでしょう?」
「うん? だれがそんな事を言ったのかな?」
「え?」
「そのカゴには、小生の記憶が正しければ肉料理が入っていたはずだよ。何て言う料理か聞いていないけれど、材料に肉を使っていたから間違いないだろう」
どういう事だ?
カゴの中身を聞いた時、錬金術士は『ピクニックと言えばサンドイッチとかおにぎりとかでしょー』と言っていた。
とか、と言う事は別の物が入っていてもおかしくない。
お手伝いさんは、一つのカゴにおにぎり、もう一つのカゴにサンドイッチが入っていると勘違いしていたのだ。
つまり、お手伝いさんが死に物狂いで食べたのは、おにぎりだけじゃなくてサンドイッチも含まれていたかもしれない事になる。いや、もしかしたら他にも何か別の食べ物が紛れ込んでいた可能性だってある。
(おにぎりとサンドイッチの違いなんて無かったぞ⁈)
どちらも丸いツルツルピカピカの暗黒物質と化していた。
錬金術士の料理スキルは、マイナス方面に凄い事になっているようだった。
次回第31話「じゃあこうしましょう」
お楽しみに!




