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029 「ひな」

一話一話が1000字程度の短編連作です。一話読むのに3分かからないかと。

愛犬とご一緒にでもドゾ。


毎週火曜日不定時に更新中!

 大きな山の周りをぐるりと半周したところで、怪鳥は切り立った岩壁に進路を向けた。

 目を凝らして見ると、一カ所だけ大きな穴が空いているのが見て取れる。


「もしかして……」

「ああ。あれがこの怪鳥の巣で間違いないだろうね。中にはお腹を空かせた子供とは思えない大きさの怪鳥が数羽いて、大口を開けながら親の帰りを待っている事だろう」

「なんでそんな具体的に不安を煽るんですか!」


 どうやらついに運命の時がやってきたようだ。

 地面に近い場所に巣があったりしたら、ギリギリで攻撃して着地、そのまま遁走。なんて作戦も考えていたのだが、運の悪い事に切り立った岩壁に穴を掘り、そこに巣を作る習性を持つ怪鳥のようだ。

 ギリギリで攻撃をして脱出した所で、結局は岩山の急斜面を転げ落ちる事になる。

 そうならないようにするには……。


「巣に入ってから攻撃するしかないですかね?」

「今考えられる最善の策としてはかなり危なっかしいけれど小生もそれ以外に考えられない」


 そうこう話しているうちに巣穴は眼前に迫っていた。

 こうなったらもう覚悟を決めるしか無い! 命を奪う事自体したくないが自分が生き残るためにはそうするしか無いんだ。

 お手伝いさんは自分に言い聞かせた。


「うおぉぉぉぉぉぁぁぁぁ!」


 威嚇のつもりで出来る限りの咆哮を発しながら、そんな事は知らんとばかりに怪鳥は巣穴に入っていく。

 そこでパッ、と腕の拘束が解かれて無様にも数メートル地面を転がされる。いぬねこは、さすがに動物の名を冠しているだけあって、自分で飛び降りて見事に着地していた。

 慌てて立ち上がり、そこでお手伝いさん達が目にしたものとは。


「ちっさ!」


 掌に乗るくらいの小さなひな鳥だった。

 木の枝や葉っぱを泥で固めて作られた、小さな巣。そこにはまだ生まれて間もないであろう、目も開いていないひな鳥達がひしめき合っていたのだ。

 一瞬目を疑ったお手伝いさんだが、よくよく見てみればあの怪鳥のおもむきがある様に感じる。つまりこの小さな鳥が、人間を運べるくらいの大きな怪鳥へと成長する訳だ。


「そうだあいつは⁈」


 その怪鳥と言えば、これ以上襲ってくる事も無く、ただ黙ってこちらを見つめていた。

 何かを訴えかけているような、そんな目をしている。


「もしかしたら何か事情があるのかもしれないね。小生が話をしてみよう」

「いぬねこちゃん意思疎通出来るんですか⁈ この怪鳥と⁈」

「無論だ。小生を何だと思っているのかな?」

「むしろ何なんですかって聞きたいくらいですよ!」


 どうして攫われている時に話をしてくれなかったんだ……。

 ここにきていぬねこのビックリ特技を知ったお手伝いさんだった。

次回第30話「勘違い」


お楽しみに!

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