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032 「提案」

一話一話が1000字程度の短編連作です。3分もあれば読めるかと。

ここに書くネタが無くなってきちゃったなぁ……。


毎週火曜日不定時に更新中!

 その提案とは、お手伝いさんが持ってきたお手製の非常食か、それとも錬金術士が作った暗黒物質か。

 どちらかを怪鳥に選んでもらうという提案だ。

 今までの事を考えると、この怪鳥には少なからず知性がある事が分かる。いぬねこもいるし交渉は容易いはず。いぬねこから話を通してもらえば充分に可能な提案だろう。


「それで君が納得するのなら、そうしよう。では早速話をしてみようじゃないか」


 いぬねこが怪鳥と見つめ合っている間に暗黒物質が入ったカゴを置き、自分のリュックから非常食を取り出して少し距離を取って隣に置く。


「分かってくれたよ。それと、お礼も言っていた」

「どういたしましてと伝えておいてください」


 怪鳥はお手伝いさんの提案を飲み、どちらかを選ぶ事になった。

 だが怪鳥はお手伝いさんの非常食には目もくれず、速攻で錬金術士が作った暗黒物質を選んだようだ。カゴを咥えて上を向き、中身を胃袋へと落とし込んでいった。


「うっそぉ⁈」


 お手伝いさんは迷わず暗黒物質を選んだ事に驚く。てっきり自分の非常食を選ぶとばかり思っていて、少なくともちょっとくらいは迷うだろうと予想していただけに、正直な所ショックだった。

 あんなに毒々しい見た目をしていて味だって見た目に負けないくらい凄い事になっているのに、どうして。

 そう思っているとおもむろに怪鳥は飲み込んだ暗黒物質を吐き出した。突然やってきたモザイクものの情景にお手伝いさんは軽く引いてしまう。


「ほら! やっぱりあれは食べない方がよかったんじゃ……」

「君は動物を舐めすぎているようだね。いや、単純に知識が浅いだけかな」

「え……? いや、でも」


 どう見てもマズかったから吐き出したようにしか見えない。

 ツルツルピカピカの暗黒物質は、怪鳥の体の中で何があったのか分からないが原形を止めずにグチャグチャになっていた。噛んでもいなかったし、体の中に入っていたのはほんの僅かな時間だったはずだが、あっという間に溶かされてしまったのだろうか。


「少し考えてみなさい。君の頭なら分かるはずだ。食べ物を欲しているのは誰だい? どうやって食べるんだい?」

「それは……」


 食べ物を欲しているのは怪鳥ではなく、怪鳥のひな鳥。掌に乗るくらい小さな鳥が暗黒物質をそのままで食べられる訳が無い。当然食べやすくする必要がある。


 それゆえの、行為だった訳だ。


 そしてひな鳥は自力で食べる事は出来ない。まだ目は開いてないし、巣から外に出る事も出来ないはずだ。だから親が食べさせてあげるしかない。

 簡単に言ってしまえば口移しという奴で。

 お手伝いさんはそこまで分かって、理解はした。


 ――だが、納得はできなかった。

次回第33話「金色の瞳」


お楽しみに!

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