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特別編23 「こどもの日」

一話1000字前後の短編連作です。


本編は毎週火曜日更新中!

 本日も伝説の錬金術士と呼ばれる女の子は、アトリエで鼻歌交じりに錬金釜をかき回す。


 例によって、何を練金しているのかは聞いていない。


「先生、なんかご機嫌ですね?」

「んふふ〜、わっかる〜?」


 錬金術士との付き合いもずいぶんと長いものになってきたので、お手伝いさんもすぐに気付いた。


 ニンマリと笑みを浮かべながら振り返る錬金術士。跳ねるような言葉の裏には楽しげな感情がにじんでいて、こちらまで楽しい気持ちになってくるお手伝いさん。


「今日はね、こどもの日なんだって! いぬねこちゃんが教えてくれたの〜!」

「こどもの日、ですか?」


 犬にも猫にも見える動物、いぬねこに聞いたという錬金術士。ならば本人に聞いてみるほうが早いだろう。


「なんですか、こどもの日って?」

「そうだね……ひとことで言ってしまえば、こいのぼりを上げて子供の成長を願う行事のことだよ」

「こいのぼり……?」


 鯉が滝を登ると龍になるという伝説から、立派に成長してほしいという願いを込められて始まった行事なのだとか。


「ってことはもしかして……」


 お手伝いさんは楽しそうに釜をかき混ぜている錬金術士に視線を向けると、


「そのと〜り! こいのぼりを作ってるの〜!」


 実に子供らしく、宣言。


 しかし、お手伝いさんは真逆の反応を見せ、ガックリとうな垂れるように首を振る。


「珍しくちゃんと仕事してると思ったら、遊んでたんですか……」

「遊んでたとは失礼な! なんだかんだで参加できそうな行事には参加してきたんだから、当然でしょ!」

「言葉もないです……」


 言われてみればそうだったと、思い出したお手伝いさん。今までの経験上、楽しそうにしているときは大体がこうして遊んでいた。


 前言を撤回しよう。付き合いが長くても、わかんないもんはわかんない!


 半ばやけくそで、開き直るお手伝いさん。


 こうなると錬金術士は頑固ということだけは確かなので、真面目に仕事をしてほしいのならばさっさとやりたいことをやらせてあげたほうがいいのだ。




   ***




 完成の雄叫びをあげた錬金術士。


 そして二人と一匹は、アトリエの外に出た。


 完成した大きい布製の鯉を干し竿の先端にくくりつけたお手伝いさんは、


「うおぉぉー!」


 と、珍しく男らしい声をあげて一気に掲げると、鯉が筒状の体から風を通して大きくたなびく。


 今回は素材の都合上大きいの一匹のみ。むしろそれだけで済んで良かったとお手伝いさんは密かに胸をなでおろした。


「おお〜かっこいい!」

「え、そうですか……?」

「——こいのぼり〜!」

「ですよね〜……」


 ある意味期待通りのお言葉を頂戴し、心の涙を流すお手伝いさん。


「じゃ、満足したから私は仕事に戻ります!」

「えぇ?! えちょ?!」


 一人満足げに頷くと、あっさりと踵を返してアトリエに戻って行ってしまった。


 一人外に残されるお手伝いさん。


「これ、どうすればいいんですかぁ!!」


 外には、やり場をなくしたお手伝いさんの気合いと風にたなびく鯉だけが残された。


 アトリエの中で、


「君。彼はどうするんだい?」

「いい眺めだから、しばらくああしてもらおっかな〜」

「やれやれ……彼も災難だね」


 錬金術士のドS発言に呆れた吐息を漏らすいぬねこであった。

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