特別編22 「エイプリルフール。2年目」
一話1000字前後の短編連作です。
本編は毎週火曜日更新中!
エイプリルフールと言えば、嘘を吐いてもいい日として有名だ。
有名ということは、何を言ったところで大抵疑われる。
例えば——
「先生。朝ごはんの用意できましたよ」
「嘘でしょ〜! だからまだ寝てる〜!」
「いやいや……」
とか。
あるいは——
「今日は先生の好きなハニートーストにしてみました。甘いですよ」
「嘘だ〜! 甘いとか言ってホントは苦いんでしょ〜?!」
「苦いハチミツなんてありませんよ……」
とか。
まぁ、「例えば」とか「あるいは」とか使っても、どれも実際に言われたばかりの言葉だ。
ここまで変に疑われると、逆に嘘は吐きたくなくなるというもの。
(もう今日は絶対ウソつかない! 騙されても騙すことはしないぞ!)
と、お手伝いさんは一人で妙な誓いを立てた。
錬金術士はいつものように手を抜いて仕事に向き合っているが、時折合う視線はどうも猜疑心が込められている。
「先生……さっきからチラチラと見てるみたいですけど、どうしたんですか?」
「別に〜? 何でもないよ〜?」
それこそ嘘だろうと思いつつ、錬金釜をかき混ぜる手を止めさせたくはなかったので、これ以上追求することはやめた。
しかしお互いの言葉を微妙に疑い合うこの時間は意外と辛いものがある。
ここはもう、言ってしまおう。その方がいい。
「先生」
「なに〜?」
「僕は今日、ウソついたりしませんから。だからいつも通りにしてくれません?」
「嘘だ〜! それがもう嘘なんでしょ〜?」
「本当ですから」
やはり信じてはくれなかった。が、言いたいことは言った。
いつものように雑用に戻ろうとした時、いぬねこがしめしめとイヤらしい笑みを浮かべながら、昼寝を中断して窓辺から視線をこちらへ向けてきた。
犬にも猫にも見える動物なので、しめしめとイヤらしく笑っているかは分からないが。
「では、君が本当に嘘を吐かないか、小生が確かめてみようではないか」
「いぬねこちゃん、そんな方法があるの〜?」
「使える状況は非常に限られているけれどね。では、小生の質問に答えてもらおうかな」
そしていぬねこは、お手伝いさんにとって実にイヤらしい質問を投げかけた。
「君には好きな人がいるね?」
「う……っ」
どんな質問が来ても正直に即答してやるつもりだった。
けど、この質問はあまりにも意地悪すぎる!
「い、い……い」
「い? い、何だい?」
「いま、せん……!」
やってしまった……結局嘘を吐いてしまった。正確には吐かされた、だけど。
「お手伝い君好きな人いないんだ〜……」
「そこは信じちゃうんですか?!」
「ックックック…………っ!」
笑いを堪えきれなくて、いぬねこが燗に障る声を漏らした……。
エイプリルフールは妙に疑い深くなってしまいますよね〜。




