103 「僕にトドメを刺す気ですか……っ?!」
一話1000字前後の短編連作です。
毎週火曜日更新中!
一つ前に特別編22「エイプリルフール。2年目」があります。未読の方はお気をつけを。
これまでの経緯を掻い摘んで話した。
錬金術士は、お手伝いさんの豹変については黙っていることにした。そうしろと師匠に言われたからでもあるが、何より彼女自身が信じられなかったからだ。
優しいお手伝いさんが、自分を殺そうとしたことなど。
「そんなことがあったんですか……」
だから彼には〝オオカミに襲われて危うく死にかけたところを師匠に救われた〟ということになっている。
どうやってここまで彼を運んできたのかという問題については、いぬねこがあの怪鳥に頼んで運んでもらったのだ。
錬金術士といぬねこの話を聞いて、彼は軽く困惑している様子だった。
「なんか……凄い迷惑をかけちゃったみたいで……本当に申し訳ないです」
ベッドの上から心底すまなそうに視線を伏せるお手伝いさん。
錬金術士は手を振って答える。
「ううん私は平気だよ。大変だったのはむしろお師匠さんの方かな〜」
「……そうだ、大先生は? 助けてくれたお礼くらいはしないと……」
少し視線を彷徨わせるがここは錬金術士のアトリエなので、当然魔女風の格好をした女性の姿は見当たらない。
一ヶ月も寝たきりだったのだ。この場にいる方が不自然だろう。
「だったらお礼の手紙を認めて送ればいいんじゃないのかな? 目が覚めたという報告も兼ねれば一石二鳥というものだ」
いぬねこはあらかじめ答えを用意していた風に、スラスラと。
また山に登って顔を見せるよりは、現実的な案。
「そうしたいのはやまやまなんですけど……これじゃ書けないですよ」
彼の言う〝これ〟とは、手足の拘束。
目覚めて嬉しそうにしている錬金術士だが、どういうわけか一向にこの拘束を解こうとはしなかった。それどころか、彼にはどうして拘束されているのかの理由が釈然としない。
「僕どうして縛られてるんです?」
何気なく聞いた質問に、錬金術士はパァッと表情を明るくした。
「お手伝い君!」
「えっ? なんですか……?」
「今なんて言ったの〜!?」
「『どうして縛られてるんですか』って……」
「その前!」
「その前?……『僕』?」
眉をひそめて怪訝な顔をするお手伝いさん。
ただの一人称に意味などないはずだが、それを聞いて彼女はさらに表情を明るくする。
「待ってて! いま解いてあげるから」
多少手こずりながら、ようやく手足とベッドの拘束が解除された。
自由になった体を動かそうとした時、違和感に気付く。
「あ、あれ……?」
動かない。
拘束は解かれたはずなのに、身体中の骨が金属になってしまったかのように重く、とにかく鈍重。いくら力を込めても力が入っているのかすら分からない。
「ふむ……どうやら一ヶ月ほど同じ態勢だったから体が固まってしまったようだね。ゆっくりとリハビリしようじゃないか。まずは腹ごしらえをしよう。彼女に何か消化の良い栄養のあるものを作ってもらうといい」
「まっかせて〜!」
「僕にトドメを刺す気ですか……っ?!」
徐々に日常を取り戻していくアトリエの面々だった。
次回第104話「とっても……刺激的でふ」
お楽しみに!




