34. 決戦③
現実は、あまりにも残酷だった。
敵はまだ数万を数え、新型機だけでも数百にものぼる。
そして、捕らわれた魔法少女たちは、敵の内部深くに組み込まれている。
無理に破壊すれば、中の少女たちも死ぬ。
結花は唇を噛む。
助けたい。絶対に助けたい。
でも、今の自分たちには、その力がない。
その時。
「辛い判断をしなきゃいけない」
カイトが言う。
沈黙。
「今、敵を止めなければもっと多くの人が死ぬ」
「でも・・・」
結花の声が震える。
「この子たちは・・・」
ミカエラは答える。
「分かってる。私だって助けたいよ。エミちゃんも、リーちゃんも、セリカちゃんも・・・でも・・・」
少し間を置いて。
「未来を守るためには、時に選ばなければならない」
誰も答えなかった。
それは敗北だった。
救えない命があるという現実。
ヒーローには、必ずしも全てを救う力があるわけではない。
カイトは静かに前を見る。
「・・・行こう」
「カイト?」
「助けられなかったことを忘れない」
「でも」
操縦桿を握る。
「だからこそ、ここで止まるわけにはいかない」
二機はおびただしい数の敵を、端から撃破していく。
しかし。
敵は最後の切り札を出した。
それは、地球で滅びた人類が残した、絶望と怨念の結晶だった。
機械の国が最後に残したもの・・・。
ダイソン球そのものを無に帰すために作られた巨大で不気味な砲身・・・。
「勝てない」
誰もが思った。
敵の数はキリがなく、こちらの機体もそう長くはもたない。
もちろん結花やミカエラの魔法では、届かない。
その時、カイトが気付く。
「・・・まだある」
「何が?」
結花が聞く。
「ダイソン球」
何億年も。
恒星の力を集め続けた文明の遺産。
誰も使えなかった力。
「どういうこと!?」
あたしは訳がわからずたずねる。
「エネルギーは、まだ眠っている・・・俺を、信じろ!」
その時のあたしには、きっとどんなに丁寧に説明されても理解することなんてできなかった。
だって、ダイソン球の存在すらさっき知ったばっかりで、それがどんなものなのかだって分かっていなかったんだから。
「でも、信じるよ!」
わからなくったって、今のカイトなら信じられる。
不思議な安心感があった。
「影から、出るぞ!」
そこは、灼熱の世界。
全天を覆いつくす、間近の太陽。
機体が何秒持つかもわからない。
でも、どうせ機体の限界は近いのだ。
そこに可能性があるのなら!
「温度限界!」
「冷却不能!」
警告音が鳴り響く。
しかし、それは眠っていた力が目覚める引き金となる。
黄金の光。
太陽の力。
人類が残した最後の遺産。
「ダイソン球エネルギー炉、接続・・・確認!」
「出力、上昇」
アーク・ファルコンの内部。
封印されていた武装が展開する。
『ライジングキャノン』
カイトは照準を合わせる。
数億年、ため込んできたダイソン球のエネルギーを一気に解放する!!
その瞬間、結花が気付く。
「カイト」
「何?」
「怖くないの?」
カイトは少しだけ笑った。
「怖いよ・・・でも、怖くても進めるって、教えてもらったから」
それは。
魔法少女たちが何度も示してきたことだった。
「撃つ!」
『それ』を起動したカイトは、不思議なくらい落ち着いていた。
・・・音は、なかった。
全天を覆い尽くす黄金の光が宇宙を走る。
何光年の彼方からも見えるであろうほどの、光、光、光・・・。
それは敵の大群を一気に飲みこんでいき・・・
まるではじめから何も存在しなかったかのように、すべてを消し去った。
つかみ取った未来。
助けられなかった命。
・・・そして、戦いは終わった。
黄金の光が消えたあと。
宇宙には静寂だけが残っていた。
勝った。
それなのに、涙が止まらなかった。
この後、19:10にエピローグを公開します。




