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28. 作戦会議

 ルカさんが持ち帰った機械兵の残骸は、その日のうちにカンナさんの研究室へ運び込まれた。


 魔法少女たちはもちろん、宇宙防衛隊のカイトたちも集められ、緊急の作戦会議が開かれる。


 部屋の中央には分解された敵機。


 その隣には、エーテルの入った小さな密閉容器。


 誰も口を開こうとはしなかった。


 最初に沈黙を破ったのはルカさんだった。


 「間違いない。この装置は魔法少女から魔力を抜き取り、そのまま動力に変えている。」


 部屋の空気が重くなる。


 カンナは静かにうなずきながら、解析結果を映し出した。


 「敵の装甲は従来型より三倍以上硬くなっています。さらに魔法耐性を持ち、高出力兵器も搭載していました。」


 別の画面には、最近一か月の戦闘記録が映る。


 敵の出現数。撃破率。味方の負傷率。


 どれも悪化していた。


 「そして一番深刻なのは・・・」


 カンナは少しだけ言葉を詰まらせた。


 「敵は撤退という判断をするようになっています」


 部屋がざわつく。


 「今までは壊れるまで戦っていました。しかし今回は損傷すると撤退した。つまり情報を持ち帰っているということです」


 カイトが腕を組む。


 「次はもっと強い奴が来る」


 「はい」


 短い返事だった。


 だが、その一言だけで十分だった。


 誰も反論できない。


 カンナはゆっくり全員を見渡した。


 「率直に申し上げます」


 深呼吸する。


 「現在の戦力では・・・敗北は時間の問題です」


 部屋の空気が凍った。


 結花は思わず拳を握る。


 そんな・・・昨日まで頑張れば勝てると思っていたのに。


 その希望が、数字だけで否定された。


 美咲さんが静かに尋ねる。


 「残された方法は?」


 誰もがその答えを待った。


 カンナさんが目を閉じる。


 そして。


 「一つだけあります」


 そう言った。


 全員が顔を上げる。


 「敵の技術を利用します」


 ルカさんが眉をひそめる。


 「つまり?」


 カンナさんは苦しそうに答えた。


 「魔法を動力へ変換する技術です」


 部屋が静まり返る。


 「まさか・・・」


 桃果の声が震える。


 「魔法少女を・・・」


 カンナはうつむいたまま、小さくうなずいた。


 「ただし敵のように本人の意思を無視して魔力を搾取する方法ではありません。魔力を提供する本人の同意を前提に、安全限界を設けた装置を開発できれば、ロボット側の出力を飛躍的に向上させられる可能性があります」


 「それでも反対!」


 最初に立ち上がったのは美咲さんだった。


 左腕はギプスに覆われて、痛々しい格好だ。


 「そんなことしたら私たちまで敵と同じじゃない!」


 「そうです!」


 いろはさんも続く。


 「魔法少女は人を守るために戦うんです!」


 「誰かを燃料にするなんて・・・」


 他には、何も言えない子だっている。


 ただ、ぎゅっと拳を握っていた。


 ルカさんも静かに口を開く。


 「私も、反対よ」


 珍しく笑っていない。


 「敵の技術を真似した瞬間、私たちは何を守ってるのか分からなくなる」


 部屋のあちこちから賛同の声が上がる。


 結花も当然そう思った。


 そんな方法。


 絶対に嫌だ。・・・でも。


 カイトが静かに口を開く。


 「他には?」


 誰も答えられない。


 「勝てる方法はあるのか?」


 沈黙。


 「俺たちがもっと強くなればいい」


 そう言ったあと、自分で首を振る。


 「でも、それじゃ間に合わない」


 ハルキも唇をかんだ。


 「俺たちも命を懸ける。でも今のままじゃ守れない」


 その言葉が、部屋に重く落ちた。


 結花は下を向いた。


 頭の中では何度も答えがぶつかり合っていた。


 嫌だ。怖い。でも・・・。


 このままなら、みんな負ける。


 カイトも。ハルキも。桃果さんも。みかちゃんも。


 誰も守れない。


 自分はどうなんだろう。


 桃果さんほど強くない。


 美咲さんほど経験もない。


 ミカちゃんのような圧倒的な力もない。


 宇宙で戦う男子たちを助けることもできない。


 自分はいつも誰かに守られてきた。


 だったら、せめて。


 自分にもできることがあるなら。


 結花はゆっくり立ち上がった。


 震える声だった。


 「・・・あたし・・・」


 全員が振り向く。


 「その装置が、本当に安全に作れるなら・・・」


 言葉が詰まる。怖い。


 足も震えている。


 それでも続けた。


 「半人前のあたしが役に立つ方法は、それしかないと思う」


 部屋中が息をのんだ。


 「結花ちゃん!」


 真っ先に叫んだのはミカちゃんだった。


 「そんなこと言っちゃ駄目!」


 結花は首を横に振る。


 「嫌だよ。もちろん怖いよ。でも・・・」


 涙が一粒こぼれる。


 「みんなに守られてばっかりなのは、もっと嫌」


 誰も、すぐには言葉を返すことができなかった。


 あたしは、自分で決断した。


 そして、その思いはミカちゃんにも伝わった。


「結花ちゃんがやるなら、私もやる。だって結花ちゃんは、あたしの相棒だもの」

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