24. 金城ルカ
金城ルカさん。
その時のあたしには、ただ「嫌な人だ」としか思えなかった。
だけど――その頃のあたしは知らなかった。
ルカさんが、どうしてそこまで「魔法少女の誇り」にこだわるようになったのかを。
ルカさんは、このコロニーでカンナさんから魔法を教わって、最初に一人前になった魔法少女だった。
・・・もっとも、最初から素直に弟子になったわけじゃない。
当時のルカさんは、成績優秀で何をやらせても一番と言われるような優等生だった。
それだけにプライドも高く、自分より年下のカンナさんに頭を下げて教えを受けるなんて、到底受け入れられなかったらしい。
けれど、コロニーは守らなければならない。
その頃、コロニーの中で戦える魔法少女は、カンナさんただ一人。
一人では限界があることくらい、ルカさんにも分かっていた。
だからこそ彼女は、魔法少女とは別の道を選ぼうとした。
男子たちが宇宙で敵と戦っている。
その事実を知ったルカさんは、男子に混じってロボットパイロット候補生の訓練を受ける決意をしたのだ。
もちろん、このことは極秘事項。
あたしは後になってから知ることになるんだけど。
訓練を始めたルカさんは、持ち前の才能ですぐに頭角を現した。
上位10%。
そこへ到達するまでに時間はかからなかった。
さらに努力を重ね、やがて上位5%にまで食い込む。
誰もが認める優秀な候補生。
だけど――。
そこで、どうしても越えられない壁があった。
女子である自分は、その先へは決して進めない。
才能が足りないのではない。
努力が足りないのでもない。
求められる資質そのものが違う。
その現実を、優秀であったがゆえにルカさんは誰よりも早く悟ってしまった。
その頃、候補生の中で常に首位を走っていたのが、あたしのお兄ちゃん――裕太だった。
運動能力も、判断力も、操縦技術も飛び抜けている。
誰もがお兄ちゃんなら大丈夫だと思っていた。
でも、お兄ちゃんには一つだけ、大きな弱点があった。
気が弱かったのだ。
実力は誰よりもあるのに、自分に自信が持てない。
そのままでは、本番で力を出し切れないかもしれない。
ルカさんは、自分が正規パイロットになれないと悟ると、自分が前へ出ることをやめた。
代わりに、お兄ちゃんを支える側へ回った。
励まし、競い合い、ときにはわざと挑発しながら。
お兄ちゃんが、自分の力を信じられるようになるまで。
その成果が少しずつ表れ始めた頃。
ルカさんは候補生を辞め、ようやく年下のカンナさんに頭を下げた。
「魔法を教えてください」
その一言を口にするまでに、どれだけの葛藤があったのか。
その頃のあたしには想像もできなかった。
ルカさんが一年間、男子に混じって訓練を受けている間に桃果さんや美咲さん、いろはさんはもうカンナさんに弟子入りしていた。
だけど、先に一人前になったのはルカさんの方だった。
けれど、それで苦労が終わったわけじゃない。
今度はカンナさんが、他のコロニーでも魔法少女を育てなければならないと言って、このコロニーを離れることになった。
残されたのは、正式な魔法少女はルカさん一人。
マジカルゲージが溜まっていない日でも、敵は待ってくれない。
代わりに戦ってくれる仲間もいない。
逃げることも許されない。
たった一人で市民を守り続ける毎日は、実際の何百倍にも長く感じられたという。
ようやくカンナさんが戻り、後輩たちが育ち始めて、ルカさんは初めて「一人じゃない」戦いを経験することになる。
だからこそ、ルカさんは後輩に厳しかった。
命を預ける仲間だから。
甘さが命取りになることを、自分が誰より知っていたから。
その厳しさに泣かされ、多くの後輩に嫌われたことも少なくなかった。
そんなルカさんを、一番近くで支え続けたのが、いろはさんだった。
「ルカ先輩は、本当は誰より優しい人・・・だからこそ、誰より厳しくあろうとしていた」
そう信じて、周りとの間を取り持ち続けた。
そして、誰より厳格なルカさんの、一番の理解者になったのもまた、いろはさんだった。
けど・・・
それはまだ、その時のあたしは知らなかった話なのだ。




