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23. OG参戦

その朝、早くもあたしの『悪い予感』は大当たりしてしまった。


目をさますと、布団がぐっしょり濡れて、冷たかったのだ。


え?


そっちの予感かよ、ですって!?


そう言わないでよ。


乙女にとっては一大事なんだからね!


幸いこの間のお漏らし事件の時とは違って広く知られてしまうことはなかった。


お布団を干しているところを、たまたまカンナさんに見られただけだったけど・・・


とはいえ、ショックはショック。


カイトやクラスの男子にでも知られたら今度もまた大変なことになる。


うーむ・・・。


まあ、あたしが嘆いてるのを延々と書いても仕方ないから、とりあえずこの話は置いておくとしよう。


で、今日は強敵の出現を受けて、緊急で魔法少女のOG会が開かれることになっていた。


まだ魔法の力を失っていないOGに協力を要請するためだ。


魔法少女は、少女でなくなる頃にその能力を失うんだけど、徐々にではなくて突然、魔法が使えなくなってしまう。


けど、もしも戦闘中にいきなり魔法が使えなくなったら、ものすごく危ないでしょ?


今までの、あたしたちがガラクタ呼ばわりしていたザコロボットだって、いきなり魔法が使えなくなって生身になってしまったら全く太刀打ちできない。


そういう危険を避けるため、魔法少女は特に戦力不足の時を除いては、だいたいみんな中学を卒業する前ぐらいまでには引退するのだ。(受験生になる頃に引退する娘が多いらしい)


だけど、そう言っていられたのも今までの話。


『ポンコツ』が相手だったら一人前の魔法少女ならよっぽどのことがない限り一方的に攻撃すればいいだけだったけど、あの新しい敵はそうは行かない。


だから、現役の魔法少女でも実力の落ちる娘は外して、OGの中からエース級の先輩だけを加える、新旧魔法少女の選抜メンバーで戦うのだ。


ちなみにあたしは、実力は足りてないけど、前の経緯からミカちゃんのサポートで入ることになった。


ミカちゃんは守りは鉄壁だけど、攻撃する役が必要だからその役をあたしが任されたのだ。


現役では美咲さんが大怪我をしてるから外れてるから、桃果さんとミカちゃん、それにあたし、あとはOGの魔法少女が2人で計5人。


美咲さんは命に別状はなかったけど、左肩脱臼と左手首の複雑骨折。


敵に捕まりそうになったところを無理やり引き抜いて、その時に怪我をしたらしい。


OG組の魔法少女は2人。


それに、今回はカンナさん自らが加えるから、合わせて6人で戦うことになる。


これだけ揃えばなんとかなるかも・・・ってちょっとだけ希望が見えたところに水を差したのが、魔法少女OG会会長、高校2年生の金城ルカさんだった。


ちなみにあたしはこの人が超苦手だ。


「緊急事態ですから、わたくしたちが力をお貸しするのはやぶさかではありません。でも・・・魔法少女の名誉を貶めたミカエラさんと一緒に戦うのはごめん被りたい。実力だけなら、彼女が必要なのは理解しています。でも、魔法少女は市民の希望でもあります。あの発言を聞いた子供たちがどれだけ傷ついたか、ご存じですか?」


これはもちろん、魔法の国のゲイルに脅されて言わされた、あの屈辱的な台詞のことを言っているのだ。


あたし、人が言われたくない事をネチネチ言う人って大っ嫌い!


「待って下さい。この間の敵が現れた時だってミカちゃんが一番活躍してるんです。あの発言だって、無理やり言わされただけで、本心のはずがないじゃないでしょっ!」


あたしが横から口を挟んだけど、ミカちゃんがあたしを制止した。


「申し訳ありませんでした。もう一度だけ、あたしにチャンスを下さい。今度こそ、命に代えてもみなさんのお役にたって見せます」


ミカちゃんは、腰を直角ぐらいまで曲げ、深々と頭を下げて謝罪した。


めちゃくちゃ悔しいはずなのに、それでもなんとか戦力が低下するのを避けようとしているのだ。


あたしじゃ、こんなこと言われたら頭に来すぎて絶対に謝罪なんてできなそうだ。


ていうかさ、普通は戦力の低下を防ぐために気を使わないといけないのは年上のルカさんの方じゃないの?


それなのにまだ、


「あら、謝罪でしたらわたくし一人ではなく、全コロニーの全ての魔法少女にすべきです。それとも、その謝罪もおままごとなの?おままごとなら他でやってください!」


なんて追い討ちをかけている。


そんなの、無理に決まってるじゃん。


それに、言い方が超ムカつく!


「引退してるロートルがミカより役に立てるとでも思ってんのか?抜けるならお前の方だろ」


口を挟んだのはカイトだった。


言いたいことはすごーくよくわかるけど、ここでルカさんを挑発しても状況は好転しない。


だけど、まだカイトと仲直りできていないあたしは何も言えないのだった。


「あら、何もできない男子があまり生意気な口を聞いてほしくありませんね。あなたがたはただ、守られていればいいのよ」


ルカさんは平静を装って目一杯の挑発を返す。


どう見ても平静じゃないけどね。


とにかく、雰囲気は最悪だ。


ああ、あのときあたしもカイトに似たようなことを言っちゃったけど、こうして典型的な反面教師が目の前にいると心底反省せざるを得ない。


カンナさんとか、桃果さんみたいな本物の一流の魔法少女だったら絶対にこんなこと言わないんだろうなと、あたしは思ってる。


「ルカさん、いくらOG会長だからって、言っていいことと悪いことが有りますよ。もしもう一度同じことをお兄ちゃんに言ったらあたしも許しませんから!」


これはカナちゃん。


温厚なカナちゃんがいつになく怒っている。


「あら、現場で戦えない子が口を出さないで欲しいっていうのは、あなたにも伝えたつもりですが?それにあなたが許さなかったらどうなるというんです?」


もう、この人ホントにケンカをやめる気なさそうだ。


ルカさんは、カイトとカナちゃんが言い返せないのを確認すると、満足したように貼り付けたような笑みを浮かべた。


「あら、これは失礼しました。王子様に王女様?」


もちろん、皮肉で言っているんだろう。


ああ、もう!


腹立つ、意外の表現が浮かばないくらい腹立つ!!


そして、ルカさんが悠々と立ち去った後、あたしたちに声をかけてきた人がいた。


もう一人のOGの花咲いろはさんだ。


「あの人、魔法少女の誇りには特に厳しいんだ。悪い人じゃないから、あんまり気にしないで」


ちなみにいろはさんは中学3年生。受験生なのに駆け付けてくれたありがたい人だ。


まだ引退したばかりでどちらかというと、桃果さんや美咲さんと感覚が近く、仲も良い。


しかし、高校生のルカさんとは年がだいぶ違うからギャップも大きいのだ。


「大丈夫です。それは知ってますから!」


って即答したあたしだけど、そう言えばミカちゃんは知らないんだ、と気が付いて、思わず口に手を当てた。


「気を使ってくれてありがとうございます」


ミカちゃんはそう答えて、ペコリとお辞儀をする。


「ミカちゃん、だっけ?戦い見たよ。凄かったね~。まあ、桃果に抜かれた時もそうだったけど、年上のあたしらとしてはちょっとフクザツだけどね・・・。結花ちゃんも将来性はバッチリだから、次の世代も安泰だね!」


ミカちゃんは、ちょっと返答に困っているようだった。


まあ、ミカちゃんってホントは中学生だから、年を偽ってるこの状況では確かになんと言っていいか難しい。


「でも、あたしも気になるよ。どうやって鍛えたらあんなに強くなれるのか」


「ん~、それはねえ・・・」


あたしの質問の方が答えやすいと思ったのか、ミカちゃんはちょっと考える。


「うんとねえ、みんな気がついてると思うけど、あたしには致命的な欠点が2つあるのよ。一つは立ち止まって集中しないと魔法が使えないってこと。もう一つは・・・あたし、ものすごく臆病で・・・だから戦うのもすごく怖かったの。でも、怖がってばかりもいられないでしょ。だから必死で誰も近寄らせない戦い方を目指したのよ。正直言って、まだ欠点は克服できていないけど、自分でそれを理解して、カバーしながら戦ってる、って感じかな」


実際のミカちゃんの戦いを見たのと合わせて考えると、その欠点まで含めてもやっぱりミカちゃんはすごい、と思った。


それと同時に、あたしがミカちゃんの欠点をカバーすることができるようになったら、ミカちゃんはもっと力を発揮できるようになる、とも思った。


どんなチームでも仲間との連携は大事だけれど、ミカちゃんと組むのならばなおさらだ。


もっと言えばあたしはミカちゃんを活躍させるための裏方でいい、ということでもあった。


「いいチームだね」


いろはさんはそう言ってくれた。


「ミカちゃんはすごいけど、あたしは足を引っ張ってばかりで・・・まだまだですっ!」


あたしはそう答えた。


謙遜とかじゃなくて、本気でそう思っていた。


「結花ちゃんは、もうちょっと自信を持った方がいいよ。結花ちゃんの攻撃は超重要なんだから!」


ミカちゃんはそう言ってくれたんだけどね。


「確かにミカちゃん一人なら、厳しいとは思うんだけど、別に組むのがあたしじゃなくても良かったんじゃないか、って思っちゃうんだよね・・・桃果さんや美咲さんと組んでたらもっと楽になるかもしれないし」


「ほら、それがダメなんだよ。あたしのパートナーは桃果さんでも美咲さんでもなくて結花ちゃんなんだから!」


まあ、明らかに実力不足のあたしにそこまで言ってもらえるのは魔法少女冥利につきるってもんだけとね。


ともかく、このタイミングでいろはさんと話ができたことで、なんとか上手くやれそうな雰囲気にはなってきた。


このあとの会議では、チームごとに別れて、苦しそうなところにカンナさんがフォローに入る、という感じの作戦を取ることになったけど、それでもチームとチームの連携が取れるのと取れないのとでは大違いだ。


だけどそれでも、あたしの嫌な予感は一向に消える様子はないのだった。 


あ、今回の嫌な予感はおねしょのことじゃないからね!


次回、ルカが後輩に厳しい理由は・・・

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