21. 第三コロニー陥落
第三コロニー防衛線。
かつては「一人要塞」と呼ばれたミカエラの領域が戦場を覆い、魔法少女たちはその守りの中で安心して戦うことができた。
マジカルゲージが十分でない日でも、経験の浅い少女でも、その領域の中では生きて帰ることができた。
だが、その要塞はもう存在しない。
ミカエラが去った日から、第三コロニーの戦いは変わってしまった。
それは、絶望しかない消耗戦・・・。
機械兵は魔法少女を倒すことではなく、生け捕りにすることを最優先としていた。
領域による防御を失った第三コロニーでは、未熟な魔法少女たちが一人、また一人と包囲され、拘束され、連れ去られていく。
誰も助けることはできなかった。
そして、とうとう最後に残ったのは三人だけだった。
白い魔法をまとったエミルナ。
黄色い光をまとったリーゼ。
紫の魔法陣を展開するセリカ。
三人は瓦礫だらけになった街で背中を合わせ、迫り来る機械兵の群れを見つめていた。
リーゼが苦しそうに笑う。
「これ・・・もう無理だね」
エミルナは震える手で杖を握り直した。
「まだ諦めない」
しかし、その声には以前の力強さはなかった。
セリカは静かに周囲を見渡す。
結界は次々と破られ、敵影は数え切れない。
冷静な彼女だからこそ理解していた。
もう、勝ち目はない。
しばらく沈黙が流れた後、リーゼがぽつりと呟く。
「ねえ・・・」
「ミカ先輩は・・・こんな景色を一人で見てたのかな」
エミルナの肩が小さく震えた。
セリカも目を閉じる。
誰も答えなかった。
あの日。
敵に敗れたミカエラは、自分たちの前で言った。
「魔法少女なんて、おままごとだった」
あの言葉を聞いた瞬間、三人は怒った。
失望した。
裏切られたと思った。
だけど今なら分かる。
守れなかった。
誰も守れなかった。
毎日仲間が捕まっていく恐怖。
助けられない苦しさ。
どれだけ叫んでも届かない絶望。
そして、『人質』となっていたのは、このコロニーそのものの運命だった。
リーゼが泣きながら叫ぶ。
「違ったんだ・・・」
「あの時のミカ先輩・・・本当は・・・」
言葉が続かない。
エミルナは唇を噛み締めた。
「私は・・・信じるって決めてたのに・・・」
「最後まで信じられなかった・・・」
涙が頬を伝う。
セリカも静かに呟く。
「私は理由を考えながら・・・何もしなかった」
「分析ばかりで、人の心を見ようとしなかった」
その時だった。
轟音と共に機械兵が一斉に突撃してくる。
「来るよ」
セリカの声と同時に三人は最後の魔法を放った。
白い光が敵を切り裂く。
黄色い雷が戦場を駆け抜ける。
紫の結界が仲間を守る。
しかし、数が違いすぎた。
一体倒しても二体。
十体倒しても、なお敵は尽きない。
無限に現れる機械兵が三人を飲み込んでいく。
リーゼの魔力が尽きる。
変身が解け、膝をついた。
「ごめん・・・」
次の瞬間、機械兵の拘束ワイヤーが彼女を捕らえた。
「きゃああっ!」
セリカが助けようと結界を張る。
しかし、その結界も砕け散る。
「しまっ・・・」
彼女もまた拘束される。
最後に残ったのはエミルナだけだった。
息は乱れ、マジカルゲージも底をついている。
それでも杖を構える。
「私は・・・」
「最後まで・・・戦う・・・!」
光が消える。
杖が折れた。
無数の拘束アームが彼女の身体を捕らえる。
地面に膝をつきながら、エミルナは空を見上げた。
脳裏に浮かぶのは、小さくて、少しだけ頼りなく見える笑顔。
自分より年上なのに、妹のようだった少女。
「ミカちゃん・・・」
涙が止まらなかった。
「ごめん・・・ごめんなさい・・・」
「私は・・・最後まで・・・あなたを信じてあげられなかった・・・」
「助けてって・・・言いたい・・・」
「でも・・・そんなこと・・・言えない・・・」
「私たちが・・・あなたを・・・一人ぼっちにしたのに・・・」
嗚咽混じりの謝罪は、誰にも届かなかった。
遠く離れた別のコロニーにいるミカエラに、その声が届くはずもなかった・・・。
やがて三人は機械兵に連れ去られ、戦場から消えていく。
その日、第三コロニーの防衛網は完全に崩壊し__
そして、機械の国によって制圧された。




