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16 ミカエラ・ファンタネラ③

「じゃ、結花ちゃん、あたしたちはここでお別れしよっか。デートの邪魔したら悪いし」


今度はカナちゃんが、そんなことを言い出した。


それも火に油だと思うんだけど・・・。


案の定ハルキがどもりながら


「で、ででで、で・・・デートじゃねえし!」


って言うと、ミカちゃんは


「なんだ、デートじゃないのか、残念だな~」


とか言ってハルキを困らせている。


「ほら、他のお客さんに迷惑かかっちゃうよっ!」


あたしがそう言って全員でお店に入るように仕向けたのも、この先も見て見たいという野次馬根性がなかったといえばウソになるけど・・・。


もちろん、二人を邪魔する気はこれっぽっちもないんだからね!


ホントだよ!!


とりあえず、全員飲み物だけ頼んで、2階の席へ上がった。


1階にも席はあって、十分に席はあいてるんだけど、外から見えない2階の方が都合がいいのだ。


見つかると先生に言い付けられる可能性もあるからね。


この場に至って、あたしとカナちゃんは完全に空気。


ハルキはもちろんだけど、主導権を握っているミカちゃんもまんざらでもなさそうだしね。


「改めて、さっきはありがとうね。すごくうれしかったよ」


ミカちゃんは、さっき言ったお礼をもう一度言い直した。


「ああ。でもあいつらだって、そんなに悪気があるわけじゃないと思う。たぶん、ホントに言いたいのはあんなことじゃないよ」


ハルキは、今度は照れずにそう言った。


「そうね。あたしもそう思うわ」


ってミカちゃんはいうけど、あたしにはわからない。


「え~、あれが悪気の固まり以外のなんだっていうのよっ!」


って、思ったことをすぐに口に出した。


「それはあたしが説明するより、男の子の口から聞いてもらった方が良いかな・・・ね、ハルキ君、説明してあげて?照れずに、省略しないで丁寧に、だよ!」


ミカちゃんにそんな風にお願いされたら、今のハルキに断るなんてできるはずもない。


「あのさ、このコロニーでは女子ってさ、魔法少女に憧れるように教育されてるだろ?それが第一段階。で、その次に、理想の魔法少女はこんな風だ、って刷り込まれていく。誰かを、みんなを守れるのは素敵なことだ、って。だけどさ、そんな回りくどいことをしなくても、男は本能的に誰かを守りたい、みんなを守りたい、って思ってるんだよ」


「え~」


とあたしは口を突っ込む。


「てっきり、あたしたちに意地悪したり邪魔したりするのが男子の本能だって思ってたよ!特にうちのクラスの男子は!!」


それはあたしの本音だったけど、カナちゃんとミカちゃんに、


「結花ちゃん、魔法少女はそういうこと言っちゃダメ!」


「話の腰を折ったらダメでしょ」


と、次々にダメ出しされた。


うーむ。


そのあとハルキにまで


「ま、ほとんどの女子はそう思ってるだろ」


なんて怒るでもなく普通に言われると、あたし1人が悪役みたいだ。


人の悪口ってさ、何の反発もないと、言った方にダメージはねかえって来るよね。


反省。


「本当はさ、誰かを守りたい、みんなを守りたい、って気持ちは男の方が強いんだよ」


ハルキのその言葉にも、あたしだけが反応しそうになった。


あたしだって誰かを守りたい、みんなを守りたいって気持ちは強いつもりだったし、その気持ちが男子に負けてる、って言われたら、ちょっとムッと来る。


あたしはミカちゃんとカナちゃんの方を見るけど、表情に変化はない。


こんな風に感じてるの、あたしだけなのかな?


とにかく、ここはさっきと同じで突っ込んだらダメなところっぽかったからぐっと我慢。


納得はできてないけどね!


あたしが突っ込まなかったから、ハルキはそのまま続ける。


「だけどさ、俺たちには魔法が使える女子たちと違って、そんな力、ないだろ?それがすげー悔しいんだよ。俺も・・・誰かを守れる人間になりたい。あいつらだって、同じ気持ちのはずだ。だけど・・・それは、無理なんだよ!」


だんだん話が見えてきた。


男子だって、本当は誰かを守りたい。


でも、魔法は使えない。


だから、悔しい。


その悔しさを、ぶつける相手を間違えちゃう子もいる。


もちろん、それが正しいなんて思わない。


だけど――。


「ただ意地悪だから」って決めつけるのも、違うのかもしれない。




ならば、少なくとも頑張ればそれが実現できる可能性がある女子に対してうらやましいとも思うだろうし・・・


ぶつけどころのないもやもやみたいなものが、女子への意地悪になったり、ひどい時には邪魔したり。


そういうことが起きるのも、まったく理解できないような話ではない。


もちろん、本質的には間違いなんだけど。


「あの人たちと同じように、ハルキ君だって悔しいって言ったけど、ハルキ君はあたしたちに意地悪しなかったよね?それはなんで?」


そう聞いたミカちゃんだけど、ミカちゃん自身はきっと答えをわかっている。


あたしに聞かせるためにわざわざハルキに質問したのだ。


「悔しいよ、悔しいけど・・・女子に意地悪するとか、邪魔するとか、そんなことは・・・俺がホントにやりたいことじゃないから・・・」


ハルキは、絞り出すように言った。


言葉の通り、すごく悔しいっていうのが伝わってくる。


あたしは、はっきり言ってなにもわかっていなかった。


多分、わかってたのはミカちゃんとハルキ、それにカナちゃんを入れても、3人だけ。


意地悪を言っていた男子たちと、あたしは(そしてたぶん、その他大勢の女子たちも)実は同じレベルで、低次元の争いをしていただけだったのだ。


そう思うと、急に恥ずかしくなってくる。


「ハルキ君は、きっとなれるよ。誰かを・・・みんなを、守れる人に・・・」


ミカちゃんは、きっと確信を持ってそう言ったのだ、って思った。


「いい加減なこと、言うなよ」


ハルキはそう言ったけど、ミカちゃんはクスッと笑ってこう返した。


「いい加減なことを言う女の子は嫌いになっちゃう?」


「その言い方、ずりーよ。嫌いになんて、なるはずないじゃん」


「でも、あたしいい加減なことなんて言わないよ。だって、ハルキ君に嫌われたくないもん。だから、信じて」


ミカちゃんは、ハルキをじっと見つめる。


こんな風にされたら、ハルキの答えは決まっている。


「わかった。わかったよ。一条さんの言うこと、信じるよっ」


ハルキの顔は、また真っ赤になっている。


「名字じゃイヤ。名前で、ミカって呼んで」


「み・・・み、み、みか・・・さん?」


「あーん、もう、さんじゃなくって」


「みかさんだって、俺のことハルキ君って言ってるじゃん」


「じゃあ、あたしも今度からハルキって呼び捨てにする。だからみかって呼び捨てにして!」


「わ・・・わかったよ。みか・・・」


あ~!


みてらんない。


いつの間にか超ラブラブモードじゃん!


あたしたち、まだ小3だよ?(ミカちゃんは違うけど)


テンパりまくっているハルキを見て、ミカちゃんは、


「ハルキってかわいい!」


って言った。


ハルキは


「男は、女の子にかわいいって言われてもうれしくないんだよ」


って答えた。


「じゃあ、なんて言われたらうれしいの?」


ってさらに聞かれると、


「かっこいい、って言われたらうれしいかな」


って答えた。


『かわいい』も『かっこいい』も、どっちもほめてるんだから、素直に受け入れればいいのに。


やっぱり男子って不思議。


「じゃあ、ハルキかっこいい!」


「付け足しみたいに言われてもうれしくねえよっ!それに、じゃあ、ってなんだよ!!」


っていうけど、言葉の通りにとったらダメなのがまるわかり。


ミカちゃんとハルキがこんなにうまくいっちゃうと、きっとからかった男子たちはすごく後悔するんだろう。


だってミカちゃんってすごく美少女だからね。


でも、今さら挽回するのは絶対無理。


だから、またからかったり冷やかしたりする。


だんだん男子の思考パターンが見えてきたよ。


そこまでわかっていると、からかわれた時のムカつきもちょっとは和らぐかも。


・・・と、あたしが達観した(気分になった)ところで今日は解散。


ちょっとだけ、平和な気分。


たまにはこんな日が、あってもいいよね。

次回 大昔の話。この世界の核心に迫ります

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