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大好きな婚約者と結婚したいだけなのに、世の中そんなに甘くない!  作者: 青李


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8 本当のはじめまして 【side:シャラフィーヤ】


あれは私が2歳の頃。

両親に連れられて訪れた、ロイノードル家のお屋敷。

両親の友人が、産まれた赤ちゃんのお披露目をするらしく私も一緒に連れていかれた。

まだ産まれたばかりだから、親しい人達だけ集めた小さなお披露目会だ。

赤ちゃんと言われても2歳の私はあまり興味は無く、ただ両親に言われるがままについていった。

草花が咲き乱れた綺麗で温かな温室の中央に置かれた大きな籠。

大人達がその中を覗いては笑顔を浮かべている。

両親と一緒に近寄り、中を覗けばそこには瓜二つの赤ちゃんが籠を覗く人達を不思議そうに見つめていた。


「抱っこしてみる?」


不思議そうに見つめる私に、ロイノードル夫人が優しくそう言ってきた。

最初に抱っこした赤ちゃんは女の子だった。

温室にあった白いベンチに座れば、白い布に包まれた赤ちゃんを膝に乗せるように抱っこさせてもらう。


「わぁ…ちっちゃくてかわいいね!」


小さな赤ちゃんは柔らかくて可愛くて、でも感じたのはそれだけだった。


次に双子のもう一人、男の子も抱かせてもらった。

男の子も重さは同じくらい。

そっくりな赤ちゃんだし、別に一人だけ抱っこさせてもらえれば満足だったのだが、断りきれなかった。

腕の中にいる赤ちゃんは金色の瞳でじっと私を見つめる。

私がにこっと微笑んだら、赤ちゃんもふにゃっと満面の笑みを返してくれた。


「……っ!!!」


その瞬間、私の心臓が大きく音を立てた。

パズルのピースがはまったようにしっくりくる、不思議な感覚。


(この子は僕のだ!)


何故だか、そう思ったのだ。

最初に抱っこした赤ちゃんと見た目も大きさも同じなのに、私が運命を感じたのはこの子にだけだった。

瞳を輝かせ頬を紅潮させながら腕の中にいる赤ちゃんを大切に抱きしめ、頬ずりする。


「かわい…ぼくの…ぼくの赤ちゃん…!」


「まぁ」


「あらあら」


「赤ちゃんにメロメロね。」


「自分も兄弟が欲しいと言い始めるんじゃないか?」


赤ちゃんを気に入った僕が変な事を言っても、子供の言う事だからと周りの大人達は微笑ましく見てくれた。


「この子、お名前は?」


「その子はアシューよ。もう一人の女の子がミシュー。」


「あしゅー…アシュー…かわいいアシュー…ぼくのアシュー…」


母がそろそろ…と私から赤ちゃんを受け取ろうと手を伸ばしてきたが、私はその腕から赤ちゃんを遠ざけイヤイヤと首を振った。


「もう、シャラったら…」


「ふふっ、シャラフィーヤくんがうちの子と仲良くしてくれて嬉しいわ。」


母は困った表情をしていたが、ロイノードル夫人が許してくれたから、そのままずっと抱っこしていた。

でもオムツの交換やミルクの時間になれば、渋々と乳母へアシューを返す。


私は用意されていたお菓子やジュースには目もくれず、アシューがお世話されている間も、籠に戻された後も眺め続けた。

双子を見に来た大人達がアシューを抱えると、不安や嫌な気持ちになって落ち着かず、早く返して欲しいとソワソワした。


「シャラ、そろそろ帰りましょう」


滞在時間は2時間とかそれより短かったと思う。


「はーい」


母の言葉に嫌がること無く返事をした私をロイノードル夫妻と私の両親はちょっと驚いていた。

離れたくないと駄々をこねるかと思ったのだ。

温室の入口あたりから母に呼ばれた私は、ロイノードル家の乳母に両手を広げてアシューをねだった。

帰る前にもう一度抱っこしたいのだろうと思った乳母は快く腕に抱かせてくれた。


「ありがとう。…アシュー、かえろう」


私はアシューを抱いたままゆっくり、ゆっくりと入口にいる両親の元へ。


「あら?」


「あらあらまあ…」


アシューを持って帰ろうとする私に目をパチクリさせる両親。

2人の反応に、どうしたの?と私も首を傾げた。


「シャラ…アシュー君はロイノードル家の赤ちゃんだから一緒には帰れないのよ?」


「ふぇ…なんで?…アシューをぼくにくれたんじゃないの…?」


そんな事一言も言われていないのだが、幼かった私は自分の中で、アシューを抱かせてもらった瞬間から“これは自分の”だと思い込んでいた。

目に涙を溜めて両親を見上げる。


「ふぇぇっ…ふみゃあ…ふみゃあっ…」


「あら、ミシュー様どうしましたか?」


背後でミシューが泣き声を上げた。

泣きたいのは私の方だ…


「ほら、アシュー君が居なくて、ミシューちゃんが寂しがっているわ」


「………」


「また会いに来たらいい。だから、アシュー君を家族の元に返してきなさい」


“やだ”

“一緒に帰るんだ”

口にはしないが、アシューを抱き締めたまま私は動か無いことで反抗した。


「シャラ…」


「…ぼくだって…アシューがいないと、さびしいもん……」


「あらあら……」


私もかなり粘ったのだが、アシューがお腹が空いて泣き出してしまった為、渋々乳母に返した。


「今のうちっ!!」


「うわぁっ!!?」


途端、父が私を抱えてすぐに馬車に乗り込む。


「やだっ!!アシューが居ないなら帰らないーーーっっっ!!!」


普段聞き分けが良かったらしい私はその日初めて馬車の中で大泣きして暴れ回った。

泣き疲れて眠ってしまうまで、それはそれは大変だったとか…


その後、引き剥がすのに苦労したからか両親は私とアシューを会わせてはくれなかった。










あれから2年が経ち、私が4歳の時に妹が産まれた。

妹のリンサーラは愛らしく、自分も兄になったのだ…と嬉しかった。

そして妹の小さなお披露目会に、ロイノードル一家もやってきた。

2歳になった双子のアシューとミシューも一緒に。

2人は水色のペアルックで、ミシューがワンピースを着て、アシューが短パンを穿いていた。


「あかちゃん?」


「あかちゃんだ!」


「かわいい」


「かわいいね」


「やわらか〜い」


「髪がきらきらきれい!」


二人は部屋に入るなり、私の母に抱かれている赤ちゃんに一目散に駆け寄ってはしゃいだ。

それを見た私はチリッと嫌な気持ちになったのを覚えている。

私は赤ちゃんに夢中なアシューに近寄り


「ねえねえ、見て。僕の髪もキラキラなんだよ」


それを聞いたアシューが振り返り、私を見た。

私はアシューがどんな反応をするかドキドキしながら反応を待つ。

私をじーっと見たアシューは頬を赤くして瞳を輝かせ


「ほんとだ!キラキラ!!」


アシューの視線は赤ちゃんから私へ移った。

私はそれがとても嬉しかった。

その視線を独り占めしたいが為に、赤ちゃんからアシューを離しつつ、気を引こうと色々頑張った。


「アシューはキラキラが好き?」


「うん!だいすきっ!」


「じゃあ、いいもの見せてあげる」


稀少な光魔法が使えた私は覚えたての魔法を使う。

掌から砂粒みたいに小さな光を沢山出して見せた。

光は掌から上に向かってふわふわと浮き、ゆっくり消えていく。


「わぁぁぁ!!お日様の欠片みたい!!」


アシューがキラキラした物が好きと知り、私は自分が光魔法を使える事に感謝した。


「他にもキラキラを見せてあげる。」


皆が妹に夢中になり、談笑している間に彼の手を引き、自室へと招く。

衣装部屋の奥にある装飾品用の棚の扉を開ければ、中には私のブローチやカフスなどが並べられていた。

その中から綺麗な宝石が付いたもの、特にキラキラする物を取っては彼に見えやすいように床に並べる。

アシューは床に膝と手を着いてそれらを見てはしゃぐ。


「わぁぁ!綺麗!!お兄ちゃん、これ綺麗だね」


「そうだね」


にこにこ笑って幸せそうなアシューを見るのが楽しかった。

もっと笑って欲しい、ずっと笑っていて欲しい。

そうあって欲しいと他人に望むのは初めてだった。


床に寝そべり、間近で宝石を見ていたアシューだが、急に私の方をじっと見つめてきた。

どうしたんだろう?と私は首を傾げる。


「…これもきれいだけど、僕さっきのキラキラの方が好き」


「さっきの…?」


ふにゃっと笑うアシューが可愛くて胸がぎゅっと鷲掴みにされた気分になった。


「お兄ちゃんの髪!それと同じ、キラキラのお日様のかけらっ!」


「……っ…」


宝石よりも私の髪のキラキラが好きなのだろうか…

キラキラした高価な宝石より私の魔法の小さな光の欠片を気に入ってくれるだなんて…

言葉に出来ないほどの喜びが胸に溢れてくる。


「ありがとう…アシューの瞳も、キラキラな色をしてるよね…僕もアシューのキラキラな瞳好きだよ。僕の髪と似てるね」


アシューは照れながら笑った。


「えへへ…キラキラをたくさん見てきたから、キラキラな色になったんだよ。」


「素敵だね。じゃあ、僕の髪とキラキラな魔法を見たら、もっとキラキラになるのかな?」


「うん!もっとキラキラになるよ!」


「キラキラになったアシューの瞳、これからもずっと見ていたいな…。僕のキラキラな魔法をこれから先もずっとずっと見ててくれる?」


「いいの!?もっとみたいし、明日も明後日も、大人になってもずーっとみたいっ!!」


無邪気にはしゃぐアシュー。

私は衣装部屋に光の雨を降らせる。

天井から落ちてくる光の粒にアシューは大喜びだ。

でも、光は個体じゃないから掴めないし、掌に溜めようとしてもすり抜けてしまう。

それにちょっとだけ不満そうにアシューは口角を下げた。


「触れない…」


「お日様のカケラだからね。お日様も触れないでしょ?」


「そうだけど……」


丸いほっぺが少し膨らんだ。


「ごめんね…魔法をもっともっと使えるようになって、いつかアシューが触れる光のカケラを作ってプレゼントするから、待っててくれる…?」


「ほんと…?」


アシューの瞳が期待に少し光を取り戻した。


「うん。約束」


私が差し出した小指にアシューも真似して小指を出す。

それに小指を絡ませれば指切りをした。

アシューは指切りをよく分かっていないようだったが、その顔には笑顔が戻っていた。


それから衣装部屋で光の魔法を披露して、沢山はしゃいで遊び疲れたアシューは眠ってしまった。

私は部屋にあるクッションを全部持ってきて衣装部屋の1番奥に敷き詰めてふわふわのベッドを作る。

そこにアシューを眠らせれば掛け布団も持ってきて風邪をひかないように被せた。


アシューが僕の衣装部屋に居る。

大切な宝物が自分のテリトリーにある。

やっと手に入れた…

2歳の時もアシューに対してだけ異常な執着を見せていたが、4歳になった今それはさらに増していた。

私はアシューをずっと衣装部屋に置いておくつもりだったのだ。

アシューの眠るクッションの空間に私も一緒にコロンと横になり、満たされた幸せを噛み締める。

アシューの好きなキラキラを、夜空の星くらいのささやかな明るさで周りに散りばめておく。


「ずーっと、大切にするからね…アシュー」



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