14 要安静だよ、アシュー?じゃないと…【side:シャラフィーヤ】
クウキュルルルゥゥゥ……
話のきりがいいところで、アシューのお腹が可愛い音を立てて空腹を訴えてきた。
あんなに動いて起きてから何も食べていないのだ。
もうそろそろお昼ご飯の時間だし、お腹もぺこぺこだろう。
「そろそろお昼の時間だったね。食事を持ってこさせよう。」
「ん…」
使用人に食事を持ってきて貰おうとアシューと少し体を離そうとしたが、アシューはお腹の音が鳴ったのが恥ずかしかったみたいで顔を真っ赤にして私の胸元に顔を押し付けて隠している。
…赤くなった耳がまだ見えているよ。
赤くて美味しそうで…食みたくなる。
離れてくれそうにないので、私はアシューを抱き上げ、衣装部屋から出た。
アシューの体をあまり揺らさないように気を付けながらベッドへと腰かければアシューを膝に乗せたままベッド横にある紐を引っ張り使用人を呼ぶ。
暫くしてメイドがやってきた。
昼食の用意を頼むといつも通り部屋を出ていくかと思ったら、そのメイドは私に抱っこされたままのアシューを見て心配そうに見つめ
「……アシュー様、もしかして体調が悪いのですか?病み上がりに廊下を全力ダッシュす「うわぁぁぁ!!ち、違うから!!俺超元気だから!!言わないで!!」
アシューがメイドの方を見て大声で言葉を遮ったがバッチリと聞こえた。
「そうですか…?ならいいのですが…」
まだ心配そうに何度かアシューを振り返りつつもメイドは部屋から出ていった。
部屋には沈黙が流れる。
アシューが恐る恐る…また私の胸元に顔を押し付けて隠そうとしたが、私はそれを阻止しアシューの顎に人差し指を掛けて上を向かせた。
アシューの黄金の瞳は揺れている。
「…廊下を全力ダッシュ?」
「………」
ビクッとアシューの身体が揺れ顔面蒼白になる。
「そんな怖がらないでよシュー…私は怒ってないよ」
顎を掴まれている為顔を動かしにくそうにしながらも横へと小さく顔を振るアシュー。
そう、怒っていない。
ただ、何もせずに傍を離れてしまった自分の迂闊さに憤りを覚える。
私はにこりと微笑めばまたベッド横の紐を引いて次は医者を呼んだ。
「でも次に危険なことをしたら、トイレも行かせてあげないからね。本当に一歩もベッドから下ろさないから。あぁ、安心していいよ…少し老後の介護が早まっただけだと思えばいい。ちゃんと私がお世話するから」
「んぅむ…っ!!」
涙目になって首を横に振り反論しようとするアシューの唇をキスで塞ぐ。
年齢は私の方が上だが、二歳差ならどうなるかなんてわからないだろう?
そんな姿を私に見せたくないだろうからもう二度としない…と、思いたいが、私のアシューは想定外の事をしでかしてくるから安心できない。
「ぷはっ!!…だって、妊娠してるって知らなかったんだ!今はお腹痛くないし、でも、今危ない状況なの理解したから!!……フィーもずーっと俺とベッドにいてくれるならどこにも行かねーし!!」
そう言って私の腰に腕を回してがっしりホールドしてくるアシューはキスのせいか分からないが頬を少し赤くしながら上目遣いで私を見てくる。
「…もし私がソレイユ騎士の仕事で一緒に居られなかったら…?」
ソレイユ騎士はもう退職届を出して辞めているが、眠っていたアシューは知らない。
私の言葉にアシューは唇をへの字にすれば腰に回している腕に力が入り
「…泣く」
「ははっ、それは困るな。」
「だろ?」
「ん。ならずっと一緒にいないといけないね」
アシューは私の言葉に満面の笑みを浮かべた。
「サンキュー、フィー!!すげー愛してる!!」
「私も愛してるよシュー」
子供が生まれるまでの9ヶ月間、仕事もせず二人だけの蜜月を味わうのもいいだろう。
幸い当主はまだまだ元気で若いから心配ない。
十年以上我慢したし、子供が産まれれば二人で過ごす時間も減ってしまうのだから…。
アシューと私の両親が
「なにもそこまで…」
「ずっと一緒なのもお互いストレスがたまってしまうわよ?」
と難色を示していたが、私が「妊娠してる兆しがあってもスタンピードの討伐に赴いたアシューの事だから、目を離した隙にベッドの上で筋トレや、調子が良いからちょっとお散歩くらいなら…で無意識に走ったり…若さと無知と無謀で何かしでかしそうで…」と話したら納得してくれた。
アシューの両親まであっさり納得するなんて…
私の考えは正しかったようだ。




