12 回想は終わり時系列は現在へ。シャラフィーヤは自室へ辿り着き 【side:シャラフィーヤ】
最初は物欲から始まって、
恋心が芽生えて
嫉妬して
彼が傷つけられたら傷つけた相手に殺意が湧いた。
私に色んな感情を教えてくれた大切で愛しくてたまらない私のアシュー。
彼が欲しくて、彼との婚姻を私は今か今かとずっとずっと待っていた。
早くアシューを書類上でも自分のモノにしたくて、同性婚が出来て低い年齢でも婚姻出来る国を探してそちらに移ろうかと考えたり、アシューと少しでも長く一緒に居たいから、アシューが入団予定だったソレイユ騎士団にも興味は無かったが入った。
私の全てはアシューを中心に回っている。
だから……本当に許せなかった。
国から出された“同性婚廃止”の報せ。
アシューの命を危険にした、スタンピードと、ソレイユ騎士。
スタンピードを誘発した王女様。
褒美として、私を王女様と結婚させようとした国王。
全てに私は怒っていた。
とある理由から私刑するのをグッと堪えたが、もし彼が無事で無ければ王宮を血に染めていただろう。
彼らはアシューと“とある理由”に感謝すべきだ。
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王女様の事は父親に任せてアシューの居る自室まで辿り着いた私は、ノックをしてゆっくりと扉を開けた。
返事が無かったのは少し気になる。
「アシュー?」
部屋を見渡して愛する婚約者の姿を探すが、室内には誰も居なかった。
荒らされた形跡も無く、いつもと変わらない自分の部屋。
だが、見ただけでは分からないが衣装部屋からアシューの魔力を感じた。
感じるというより、今の時代こんなに魔法を使えるのはアシューだけだろうから、俺以外でもすぐに分かる。
アシューは衣装部屋に居るようだ。
そちらへと向い、ドアノブに手をかければバチッと弾かれた。
バリアが張られている…
「シュー、開けてくれないか?」
「………」
「シュー…」
返事は無い。
バリアで入室を拒否されるなんて今まで無かったし、こうなると今までなら手立てが無かった。
が、今はドラゴン退治の時に身につけた魔法がある。
時間も経ったからバリアを切るくらいには魔力も回復しただろう。
私は光を圧縮して剣を魔法で作りだせば、バリアだけを狙って上から下に向かって斬った。
バリンッ!とガラスが割れる様な音がし、バリアが無くなる。
上手くいった。
私は再度ドアノブを掴み、扉を開ける。
「………っ……」
扉の先、その光景に息を飲んだ。
いつもと同じ衣装部屋。
だが…部屋の中に漂う夜空に浮かぶ星のような優しい光の欠片。
アシューに定期的に渡している私の光魔法で作った光を詰めていた瓶が空っぽになって床に落ちている。
1時間ほどしかもたない光。
きっと、それを開けたのだろう。
床には昔、アシューに並べて見せた宝石の付いた装飾品が全て同じ様に並べられていて、その奥には敷き詰められたクッションや布製品。
奥に敷き詰められたクッション達は、私がずっとそのままにしていた。
あの時の幸福感が忘れられず…
そして、またあの時みたいに私のテリトリーにアシューが保管されたら…と妄想しては心が満たされたり…。
あくまで妄想だ。
愛しているから、実際にしたいとは思った事は無い。
思った事無かったのに…
まさか、アシュー自らやってくれるとは思わなかった。
宝石を並べて、光を散りばめて…私が四歳の時にアシューを衣装部屋に閉じ込めようとした時の室内にそっくりにしてしまうなんて…。
覚えていないと思っていたのに…
覚えていたのだろうか…
覚えていて、もし嫌悪していたなら再現したりしないはず…
ということは、アシューは私が作ったこの空間を気に入ってくれていたのだろうか…
弱っている時に居たいくらいには……
「あぁ……もう……なんで君は私の喜ぶ事をしてしまうのかな……」
歓喜に緩んでしまう口元を落ち着くまで手で覆って隠す。
暫く衣装部屋の入口で愛しさで溢れそうになる感情を落ち着かせた後、眠っているアシューへと近づいた。
しゃがんで膝を床に付ければ優しく彼の頬を撫で声を掛ける。
「シュー…」
「んんっ…」
モゾモゾと動き、何度も私の掌に顔をスリスリ擦りつければようやく瞼が持ち上がり、金色の瞳が顔をだす。
「………ふぃー…?」
まだ寝ぼけているようで、呂律が回っていない唇で私の名前を呼び、焦点のあってない瞳で私を見つめてくる。
「…ゆめ…?」
「……そうだよ、夢だよ」
夢なら繕わずありのままの姿を見せ本心を話してくれるだろうか…
そう思った私は微笑みながらサラッと嘘を吐く。
それに気づかないアシューは緩んだ頬でふにゃっと笑い
「……ふふっ…しあわせだな…おれ、いしょうべやのここ、ずーっと…きになってたんだ…おもってたとおり…キラキラでふわふわできもちいい…おれ、ここ、すき…ずっと…ふぃーといたい…」
ふにゃっと笑って掌にスリスリと頬擦りしてくるアシュー。
私のアシューはほんとに可愛い…
釣られて頬が緩んでしまう。
「ふぃー……」
ほわほわしながら、上目遣いで見つめられる。
大好きだと言葉にせずとも伝わってくる視線と甘い雰囲気。
だが、何か言いづらそうにその視線が下へとずらされた。
「ずっとここに居ようよ…ふぃーが、…王女様とか…他の人と、あんなにひっつくの…やだ…」
「だめ?」
「ん…だめ…フィーに抱きついていいのは俺だけだ…」
潤む瞳で、頬に添えた手にスリッと擦り寄りながらねだるのがほんと可愛い。
私は愛しくて、頬から頭へ手を滑らせれば髪を撫でた。
アシューはそれが気持ちよかったのかうっとり目を細める。
「んん…フィー…キスも…」
気持ちよくなって…もっと気持ちよくなりたくなったのかアシューは口付けをおねだりしてきた。
彼からのおねだりはいつでも大歓迎だ。
「いいよ…」
私はクッションを抱き締めたままのアシューを抱き上げ胡座をかいた足の間に座らせれば、顎に人差し指をかけこちらを向かせ唇を重ねた。
「ん……」
唇が触れるだけの軽い口付け。
唇を離せば、アシューは抱きしめていたクッションを手放して私の首に腕を絡めてきた。
まるで離れるのを拒むように…
「もういっかい……」
「いいよ…シューが好きなだけ……」
そう言って微笑み、また唇を重ねる。
唇が離れる度にアシューが甘い声で「もういっかい」とおねだりしてくる。
何度も何度も……
「……ん…はあっ……」
身体が熱く昂ってしまうくらい口付けをしたら、ようやくアシューの口から「もういっかい」が出なくなった。
顔を覗き込めば、目が合ったアシューは焦点が合っている。
頬を赤くして眉尻を下げながら悔しそうな…恨めしそうな顔で私をじとっと見つめ
「……う゛ぅ……夢じゃ、ないんだな…」
「ん。そうだね」
微笑みながら肯定したら、アシューは私の首に回していた腕を離し自分の顔を覆って隠した。
私の膝からクッションの山にゆっくりと降りれば身を縮こまらせる。
「〜〜〜っ…早く言えよぉぉぉ!!小っ恥ずかしいことすげー言っちまったじゃんか!!」
「そう?私は可愛いシューが見られて嬉しかったけど」
昔私が作った場所を再現してくれたり、嫉妬してくれたり、キスを沢山おねだりしてくれたり…
私的にはとても充実して幸せな時間だった。
クッションに顔を埋める彼の髪を少しずらせば項へとリップ音を立てて口付けを落とす。
ピクッと身体を震わせ、真っ赤な顔でじとっと私を見てくる彼に、私はにこっと微笑み
「普段もこれくらい可愛い姿を見せて欲しいな?」
「…あれ、可愛いか…?…」
「うん。シューだから可愛い」
「〜〜〜ッ…じゃ、じゃあ…可愛い俺のお願い…聞いて欲しい…」
「うん?」




