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美醜が逆転した世界で、俺は美女のヒモになる  作者: だれか
閑話

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11/16

1.日常(激甘編)

久々に書きました

以前の話も全話改稿してるので読み直してみてね

 



「ん……」


 柔らかい温もり。

 それに包まれて、ゆっくりと意識が浮かび上がる。

 耳元で、小さく甘い声が漏れる。


 そして―— 


 目を開けると、すぐ隣にレイナの気配があった。

 規則正しい寝息。

 そして、腕の中に収まるように寄り添う温もり。


 腕に回されたレイナの手が、しっかりと俺を離さない。

 まるで、逃がさないと言わんばかりに。


「……起きてるだろ」


 小さく声をかけると、ぴくりと肩が動いた。

 しかし、すぐには離れない。

 むしろ――ぎゅっと、強く抱き寄せられる。


「……もう少し」


 耳元で、か細い声。


「……もう少し、このままで」


 以前のレイナからは想像できないほど、甘えた声だった。

 しばらくそのまま、何も言わずに時間が流れる。


 言葉にしなくても分かる。

 これはきっと、彼女なりの“確認”なのだ。


 俺がここにいること。

 離れていかないこと。


「……朝だぞ」


「知ってるわ」


 即答。

 それでも、体は離れない。


「離れないと、何もできないだろ」


「……できなくていいわ」


 躊躇もなく返ってくる。

 ほんの少しだけ、苦笑が漏れた。


 あの夜から――いや、正確には出会ってからずっと。

 彼女は少しずつ、“遠慮”を手放している。

 それが嬉しくて。


 同時に、少しだけ照れくさく思う。


「……起きるか」


「やだ」


「即答ですか」


「だって……今が一番落ち着くもの」


 その言葉に、何も返せなくなる。

 レイナは俺の胸元に額を預けたまま、小さく息を吐いた。


 仮面は外されている。

 晒された素顔。

 それでも――いや、だからこそ。

 レイナは今、安心しているのだろう。


 以前のレイナは、頑なに仮面を手放そうとしなかった。

 だが今では、家の中では俺の前でだけ素顔で過ごしている。


 その変化が、堪らなく嬉しい。


 あれほど固く閉ざされていたものが、今は当たり前のように隣にある。

 仮面の奥に隠されていた美しい顔を、毎日のように間近で見られる。


 これ以上の贅沢は、きっとない。


 その後もちょっとした葛藤があったが、2人して起き上がる。

 レイナは自身の身だしなみを整えると、自然にこちらの髪を整えてくる。

 指先が触れるたびに、くすぐったい。


「寝癖、ついてるわよ」


「……自分で直せるけど?」


「ダメ。私がやるの」


 有無を言わせない声。

 こういう時のレイナは、やけに強い。


「ほら、じっとして」


「……うむ」


 素直に従うと、レイナは少し嬉しそうに笑う。

 指先で髪を整えながら、時折、こちらの顔を覗き込んでくる。


「顔もいいわね」


「……急に褒めすぎじゃないか?」


「事実でしょう?」


「俺の感性だと、むしろ逆なんだが」


「私の感性では、世界一の美男よ」


 さらりと、何の迷いもなく返される。


 レイナは本当に、遠慮というものを知らなくなった。


 その率直さが心地いいのも事実だが――こうも真正面から褒められると、どう返せばいいのか分からなくなる。


 そもそも、褒められること自体に慣れていないのだ。



 ♢



「なあ、レイナ」


「駄目よ」


 即答だった。


「……まだ何も言ってないんだけど」


「どうせ“外に出たい”でしょ?」


「……」


「駄目よ」


「だから何も言ってないって!」


「言わなくても顔に書いてあるわよ?」


「まじで!?」


 このやり取りも、もはや日課になりつつある。


 少しでも外に出ようとすれば、すぐにこうやって止められる。


 レイナは以前にも増して、俺を外に出すことに慎重というか――


 はっきり言えば、嫌がるようになっていた。


 もっとも、外に出れば面倒ごとに巻き込まれるのは事実なので、強く否定もできない。


「外は危ないの」


「ぶー」


「シュナイダーなんて、すぐパクリといかれちゃうわよ?」


「ぶーぶー」


 真顔でとんでもないことを言う。

 どこの世界に、俺を食う奴がいるんだ。

 ……いや、此処は割とそういう世界だった。


「……はぁ」


 レイナは小さくため息をつくと、肩をすくめた。


「仕方ないわね。少しだけよ?」


「ほんとに!?」


「ええ。ただし、勿論私も一緒」


「……レイナ大好き!」


「っ……もう」


 ぱっと表情を緩めて、少しだけ目を逸らす。


 それでも、すぐに優しく笑った。


「私も大好きよ?」


 そのまま、当然のように距離を詰めてくる。


 そして――


 腕を取られたかと思うと、そのまま引き寄せられる。


「でもね」


 耳元で、少しだけ声が低くなる。


「今日は外に出る必要、なくなると思うわよ?」


「……え?」


 気がつけば、そのまま――


 レイナにパクリと頂かれていた。



 ♢



 ――気がつけば、日が傾いていた。


「……あれ?」


 外に出るどころか、部屋の中から一歩も出ていない。


「ふふ」


 隣で、満足そうに微笑むレイナ。


「今日はこれで十分でしょ?」


「いや、何もしてない気がするんだが」


「そんなことないでしょ?」


 軽く首を傾げながら、こちらを見る。


「私と過ごしてくれたもの」


「……まあ、それはそうか」


 否定はできない。


「でしょ?」


 満足げに頷く。


 レイナは本当に、自然に俺を囲い込んでくる。

 外に出すよりも――

 ここにいてもらうことを、当然のように選ばせてくる。


「ほら、今日はもうおしまい」


 軽く手を取られる。


「明日も、ちゃんとここにいてね?」


「……善処する」


「ダメ」


「即答かよ」


 笑いながら、手を握り返す。


「ちゃんと約束して?」


「……わかったよ」


 少しだけ肩をすくめて答えると――


 レイナは嬉しそうに、満面の笑みを浮かべた。

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