第9話 小学生時代⑧
翌朝。重い足取りで登校班の集合場所へ向かう。エレベーターで出会った大悟もそうだった。
「今日からだね…」
「うん…」
「嫌だね…」
「うん…」
登校班の集合場所には拓郎、理玖、旭がいた。みんな口を揃えて「いのっちがいやだ」と言っていた。
校門当番はいのっちだった、「おはようございます…」とちょっとだけ小さめに言うと、いのっちの怒号が響いた。
「もっと声張れよ!」
その声に理玖が泣き出した。周りの先生が宥めていたが、僕たちはさささっと教室へ向かった。
「怖かったね」
「ね…理玖まだ泣いてるよ。」
「またいのっちキレるよ。」
いのっちが入ってきた。みんなすぐに席へ座る。
「声は大きく元気よく。いいな?」
「はい!」
「小さい!!!」
「はい!!!」
「出席取るぞー…」
1時間目は算数だ。4年生にもなると、難しくなってくる。大悟とは離れてしまったため、答えを見ることは出来ない。仕方なく自分で解くことにした。
「じゃあ…隼人ー、答えは?」
「5です。」
「正解。」
算数の時間が終わる、拓郎の顔が青ざめていた。
「2時間目は…社会か…拓郎どうしたの?」
「教科書…忘れた…」
「うわ…嘘でしょ…」
「いのっちキレるよ…」
「一樹に借りてくる」
「おらー、座れー。」
「あ…」
「教科書出せ、教科書。拓郎、どうした?」
「教科書…忘れました…」
「あ!?」
机を思い切り叩くいのっち。僕たちはびくりと体を震わせた。
「あれ程教科書忘れんな!って言ったよなぁ!?」
「はい!」
「何で忘れた!」
「前の日に時間割を合わせてませんでした…」
「ふざけんな!教科書忘れたら授業できないだろ!?」
「はい…」
「声が小さい!」
「はい!」
「軍隊だね…」
「軍隊だね…」
「もういい!今日は授業しないからな!」
いのっちが職員室に帰っていった。緊張の糸が解れた拓郎が泣きだした。
「拓郎どんまいだよ…」
「とりあえず謝りに行こうよ。僕付いてくから。」
「大悟ぉ…」
「凛太郎委員長でしょ?一緒に行こ。」
「え!俺も!?」
「委員長でしょ?」
結局凛太郎と拓郎と大悟でいのっちに謝りに行って、その日は済んだ。
…いのっちの話はこれくらいでいいだろう。というかこれくらいにしたい。僕のトラウマだからだ。




