第10話 小学生時代⑨
早いもので、僕たちは小学6年生になり、あっという間に冬を迎えた。本当に早い。始業式があり、運動会、学芸会、修学旅行…多分このページには収めきれない思い出がたくさん出来た。いのっちは4年生の終わりに異動していった。6年生の担任は5年生の時と同じ、中島先生だ。
「もうすぐ冬休みです。中学受験する人も、そうでない人も、宿題は必ずやるように。」
「はーい!」
席は大悟の隣である。それだけで幸せだと思う。大悟が言う。
「もう最後だけど、楽しもうね。」
僕の心がズキッと痛んだ。そうだ、この1年が終わったら大悟は神戸に行ってしまうんだ。泣きそうになる僕に大悟が頭を撫でた。
「泣かないの」
「…うん。」
「はい、じゃあ授業を始めます。教科書の35ページからね。」
「あ、やべ!算数の宿題家に忘れた。」
理玖の声だ。中島先生が軽く諌めたあと、ため息をつきながら言った。
「やってはあるのね?」
「やりました!」
「じゃあ明日持ってくること。いいね?」
「はい、ありがとうございます!」
算数の授業で、その日は終了である。拓郎が理玖を連れていく。
「荷物置いたら竹屋な!」
強引である。しかし拓郎のいいところでもある。
「隼人、帰ろ。」
「あ、うん。」
通い慣れた道。この道を歩くのも、もう最後か。
「大悟受験終わったんだっけ?」
「まだだよ。でも、今月だよ。」
「遊んでていいの?」
「受験対策はもう済んでるし、過去問はやり尽くしたし、大丈夫でしょ。」
「自信あるねぇ。」
「隼人と離れるのは寂しいけどね。」
「僕だって同じだよ。」
そんな事を話していると、マンションに着いた。
「お母さんいるかな、あ、大悟のお父さんいる」
「ほんとだ。お父さーん」
2人して手を振っていると、大悟のお父さんが出てきた。
「今日早いんだっけ?」
「今日始業式だよ、お父さん」
「そっか、隼人くんも元気か?」
「うん!」
「それは何より。竹屋行くのか?」
「行くよー」
「じゃあほらこれ、母さんには内緒だぞ」
そうやってお父さんが僕たち2人に1000円をくれた。1人1000円と言うのは大きなものである。お礼を言った、お父さんが続ける。
「まぁいつも大悟に良くしてくれるからな、これくらいはするよ。」
「ありがとうお父さん!」
「ありがとうございます!行こう大悟!」
僕が走り出すと、大悟も走り出した。竹屋まではもう少しだ。
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そしてあっという間に大悟の受験生の日を迎えた。本人は余裕綽々である。そして何故か大悟のお父さんお母さんと一緒に受験会場に来ている。
「隼人にも見送って欲しくて。」
「そっか…寒い…」
「じゃあ行ってくるね。」
「行ってらっしゃい。頑張ってね。」
大悟を見送ったあと、大悟のお父さんお母さんが喫茶店に連れて行ってくれた。ココアを頼むと、大悟のお父さんが色々と聞いてきた。家での大悟はあまり喋らないらしい。
「色々ありましたけど、大悟はずっと友達ですよ。」
「3歳の頃から見てきたけど、頼もしくなったね隼人くん。」
「そうですか?」
「うん、ナチュラルに敬語を使えているし、私達のコーヒーが来るまで自分のに手を付けない。えらいよ。」
「ありがとうございます。」
「そろそろ大悟の試験終わる時間だね。中学の前の喫茶店にいるって伝えとこ。」
しばらくすると、大悟がやってきた。
「どうだった?」
「難しかったー!でも手応えはあるよ。」
「そっか…」
1週間後、合否結果が届いた。何故か僕もそこにいた。
結果は……合格。
「やったー!」
「おめでとう、大悟!」
しかし、それは決別をも意味していた。
卒業式。僕らは旅立っていく。教室で過呼吸になるくらい泣き、マンションの前でも泣いた。
「また会えるから。」
「うん…」
そう言って大悟一家は神戸に飛び立っていった。




