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第11話 同級生が推しになりまして。①

髪はボサボサ、目隠れ前髪、首からヘッドホン。これが今の僕である。


「お前見なりちゃんとしなよ。いくら推薦で国立医大受かったからってそりゃねーべ。」


 理玖の言葉だ。理玖は唯一小学生から高校生まで一緒にいる同級生である。拓郎と旭はいつの間にか中学受験をしていて、公立の中学に行ったのは僕と理玖だけだった。


「うるさい…今鬱期なんだよ。」


 おまけにうつ病にもかかり、今日電車に飛び込もうかと考えたほどである。父さんも母さんも大学進学は難しいんじゃないかと、特に精神科医の父さんは僕の病気を心配していた。うつ病の診断をしたのは父さんだ。


「薬飲んだ?」

「飲んだよ。ODしそうになったけどこらえた。」

「えらい!」


 そう言って僕のボサボサ頭を撫でる。くすぐったかった。なんだかんだ長く付き合っているのは理玖だ。僕のことをよく分かっているのは、理玖だ。


「あんたたち座りなさーい。SHR始め…隼人、髪切り行けっつったでしょ。生徒指導部連れてくわよ。」

「勘弁してください…」


 今日の1時間目は自習である。みんな黙々と受験勉強をしている。僕と指定校推薦で薬学部に行く理玖はずっとトランプをしていた。


「隼人、トランプする元気あるなら髪切ってこいよー」

「躁になってからな」

「トランプする元気はあるんだ…」

「あー、負けた!」

「十分躁だと思うけど…」

「あんたたちうるさい!遊ぶなら外行きなさい!」

「委員長そんな怒るなって。隼人が怖がるぞー」

「きゃー怖い!」


 そう言って理玖に抱きつく。委員長の怒りが僕に向かった。


「あんた全然鬱じゃないじゃない!髪切って来なさいよ。明日切ってこなかったらあたしが切るからね!」

「やべぇ、本気だ。」

「理玖、あんたお付きで行きなさいよ。何するかわかんないんだから。」

「御意」


 2時間目は生物だ。僕の好きな科目である。


「おー、隼人調子はどうだ?」

「そこそこです。」

「薬はきちんと飲めよ。隼人の病状はあんまり良くないんだから。」

「ありがとうございます。」

「えー、今日は85ページからだな。プリント配るぞー。俺の授業は受験終わった組と生物専攻組だけ聞いてたらいいからなー。」


この先生の授業はとてもわかりやすい。だから好きなのもある。


 3時間目 数学。理数系は得意な僕だが、先生が苦手なのである。真面目人間なのだ。


「この公式はテストに出すからちゃんとノートに書いとくように。ノートは提出してもらいますからね。」


 斜め前にいる理玖は眠っていた。先生は理玖を見ていたように見える。


 授業終了後、理玖を起こす。


「理玖、数学終わったよ」

「ん…あー、よく寝た。なんか言ってた?」

「…ううん。何も。」

「そっか。次なんだっけ?」

「現国だよ。」

「平井ちゃんかー。これ終わったら終わりだよね。」

「そうだよ」


 現国の授業も好きだ。担当の平井先生が担任であるのもあるが、本が好きだからということもある。そこは母さんに感謝すべきところだ。


「はい、あんたたち座りなさいよー。この授業終わったらそのままSHR入るからね。教科書87ページ、前回の授業の続きからね。」


 現国の授業は特に書く事が多い。追いつかない事も多い。


「…はい、今日はここまで。SHR始めるわよ。」

「待ってました!」

「理玖うるさい。卒業アルバム完成しました。明日配るからね。それからこっからはお説教。あんたたち古典の斎藤先生泣かしたでしょ。」

 

 そういえば選択古典の斎藤先生泣いたって言ってたな。授業がうるさくて、注意しても静かにならなかったらしい。


「あんたたちねぇ、斎藤先生はまだ新任なのよ?もっと優しく出来ない訳?」


 僕の選択は現国だから、平井先生だからそんなことは無いが、新任の先生なら舐められちゃうよなぁ。


「とりあえず選択古典の人たちは謝罪の機会を今日この後設けるから、視聴覚室に集まるように。選択現国の人たちはこの後何も無いからお好きにどうぞ。じゃあ解散」


 選択古典の人たちがゾロゾロと平井先生について行く。僕は理玖とトランプの続きをすることにした。


「あ、そうだ。理玖、髪の毛切りなさいよ。朝も言ったけど生徒指導部張り切ってるからね。」

「はい…」

「トランプする?」

「する。」


 ポーカーをやっていると、理玖の携帯が鳴った。焦る理玖。


「やべ、今日莉緒とデートだった。隼人、帰るぞ。」

「あい」


 理玖が降りる駅は、高校の最寄り駅から3駅。僕は髪を切りに渋谷に行くことにした。


「いいか?飛び込もうだなんて絶対思うなよ」

「分かってるよ。」

「じゃあな」


 そう言って理玖は降りて行った。僕はそのまま渋谷に向かう。

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