第6話 小学生時代⑤
「え?大悟中学受験するの?」
うちで2人でそうめんを啜っていると、唐突に告白された。
「うん、ほら、僕お医者さん志望じゃない?だから、中学受験しようかなって。北海道なんだけど。」
僕の気管にめんつゆが侵入してきた。咽せる僕の背中を大悟は優しくさする。その手はとても暖かった。
「北海道!?」
「そんなに驚かなくていいじゃん」
「通えないでしょ?」
「だから寮生活だよ。」
「え…」
僕はショックを受けていた。3歳から今まで6年間一緒にいた大悟と中学生でお別れなんて!
「あと3年しか一緒に居られないけど、精いっぱい楽しもうね。」
そう言って最後のそうめんを啜った。僕半分も食べてない…
翌日から大悟は塾に行き始めた。だから遊べない、と。
僕は少し寂しかった。
学校からの帰り道、大悟のお母さんに会った。
「こんにちわー」
「あら、隼人くんおかえり。」
「荷物持ちましょうか」
「あら、ジェントルマン。でも大丈夫よ、私力持ちだから」
「はい…」
「あ、大悟の中学受験で離れちゃうから落ち込んでるんでしょ」
「え!なんで分かるんですか?」
「まだあなたがこんなちっちゃい時から知ってるのよ、分かるわよ。」
「すごい…」
「私もねー。まだ早いんじゃない?って言ったんだけど、大悟自身がすごいアピールしてくるからさ。」
「そうなんですか…」
僕と大悟のマンションに近づく。すると、塾に行く大悟にあった。
「あ、大悟」
「お母さんに隼人じゃん。一緒に帰ってきたんだ」
「たまたまね、そこで会ったから」
「そうなんだ。行ってくるねー。」
颯爽と自転車で去っていった大悟。僕は呆然としていた。
「小学生時代なんて二度と来ないのにねぇ。」
「はい…」
自宅に着いてすぐお風呂に入る。頭を洗いながら今後の大悟との関係を考えていた。
多分大悟のことだ、みっちり授業を入れるだろう。遊びも好きだが、1番勉強が好きだからだ。
塾も1番頭のいいクラスに入ったらしい。今僕たちは3年生。大悟と関わるのもあと3年しかない。
「中学受験かぁ。大悟らしいけど…」
でも、寂しい。僕は湯船に沈んだ。湯船から溢れる水にこんな気持ち流れていけばいいのに。
お風呂から出ると、夕ご飯。今日は野菜炒めだ。
「「「「いただきます。」」」」
「大悟がさ、中学受験するんだって。」
「あら、そうなの。」
「なんか北海道の私立中学に行くんだって。」
「あらー、寂しいわね」
「寂しい。」
「素直じゃない。珍しい。」
お母さんの言うこと横に受け流しながら、ご飯を食べ宿題をする。なんだか身に入らない。すると、部屋のドアがノックされた。
「入るぞ」
4個上の兄、颯太。僕のことを1番理解してくれている。
「お前、大悟に恋してるだろ」
「え!?」
「違うのか?」
「違うよ!違う…」
「迷ってるな。」
「うーん、恋って言われても分かんない…兄ちゃんは奏ちゃんと付き合ってるじゃん。」
「奏と話してる時が1番楽しいんだよ。お前だって大悟と話してる時楽しいだろ。」
「そうかな…そうかも…」
「どうだろう…」
「悩みすぎだろ。」
結局兄は僕は自分の部屋に入ってマンガを読んで帰っていった。なんだったんだ。
もう今日は早く寝ちゃお。そう思って布団に入ると、大悟から着信が入った。
「もしもし、大悟?」
「勉強の中休みにさ。ちょっと声聞きたくて。」
「うん…」
「こないだはちゃんと言えなかったけどさ、別に永遠の別れじゃないんだよ。休みの日には帰ってくるし、こうやって話も出来る。しかもあと3年あるんだよ。」
「そうだけど…」
「それに、僕とは3歳からの付き合いなんだよ?」
「意味分かんない。」
唐突に3歳から一緒にいることをアピールしてくる大悟に、僕は笑った。
「とりあえず、悲しむことは無いよ。こうやって繋がれるんだしさ。」
「うん…分かった。」
「じゃあね、おやすみ」
「うん、お休み」
外を見る。満月が綺麗だった。




