第34話 2人の軌跡③
今回の会場は幕張メッセ。僕は関係者席に座っていた。周りには音楽関係者の方々。うぅ心細い。
早く始まらないかな、と思っていると、1人の男性が話しかけて来た。僕は一瞬身を固めた。
「あぁ、驚かせてすみません。Troopsのマネージャーをやっている平井と申します、いてっ」
「平井!隼人には一人じゃ話しかけるなっていっただろ!」
「あ、すいません…見かけたのでつい…」
「つい、じゃない!隼人!こいつは俺たちのマネージャーだから。大丈夫だからな。」
「う、うん」
「それじゃ公演始まるから.また後でな。」
「うん」
しばらくしてSEが流れて、1曲目はNothing or Elseだ…うん?ステージ下手に見慣れた人がいる?まさか。まさかね。
4曲目まで走り抜けたところで、MCが始まった。
「元気にしてますかー!?」
「いえええええ!!」
「今日は重大発表があります!下手をご覧ください!」
啓斗だった。ギターを掲げ笑っている。
「今日からTroopsは5人編成で活動します!」
会場に歓声が広がる。
「じゃあ啓斗、挨拶を。」
「今日から下手ギターとして加入しました、けいとです。よろしくお願いします!」
また歓声が広がる。僕は頭を抱えた。
「なんで啓斗がTroopsに…」
ライブが終わり、大悟に呼ばれた。
「隼人、隼人」
手招きをする大悟。僕はその方へ向かう。
「びっくりさせて悪かったな。」
「ほんとだよ。声出そうになったよ。」
「あ、兄ちゃん!見てくれた?」
「見たよ。ちゃんと全曲完コピ出来てたな。偉いぞ。
」
「えへ。ありがと兄ちゃん!」
打ち上げ会場に移動する。新藤さんと大悟が話していたので、莉緒残り姉さんと話すことにした。
「メタル歴長いんですか?」 ‘
「んー。10年位かな?」
「10年!長いっすね…」
「父親がメタルバンドでドラムやっててね。小さい頃からずっとそれを見てたから」
「英才教育ですね。」
「そうだね。」
そう言って莉緒姉さんはジョッキに入ったジンジャーエールを飲み干した。
「豪快ですね…」
「酒を飲まないからね。だいたい頼むのは炭酸かな。」
「炭酸美味しいですからね。」
大悟がこちらを見て手招きをしていた。新藤さんと席を変わる。
「どうしたの?」
「いや、怒ってるかなって、」
「啓斗のこと?」
「うん」
「怒ってはいないよ。驚きはしたけど。」
「啓斗くんもギターやってるって聞いてさ。今のTroopsには必要だって思って…」
確かに啓斗はギターをやっているが、まさかプロの世界に入るとは。驚きである。僕は陽さんと楽しげに話す啓斗を見ていた。
「ねぇ、啓斗って陽さんと…その…付き合ってる?」
「付き合ってるよ。」
「えぇ…陽さん男の子だよね?」
「いや、女の子だよ。」
「えぇ!」
驚き声を上げると、陽さんがやってきた。僕に覆い被さった。
「い、いえ何にもありません。」
「私が男の子だって?ほれほれ〜」
「や、やめてください、啓斗の顔が怖いです」
「私は女の子だよ。」
「よくあんな低い声とかデスボイス出せますね…」
「練習の賜物だよ、おっと啓斗くんの顔が般若のようになったから席へ戻るよ。」
席に戻ると陽さんが啓斗の頭を撫でていた。大悟は苦い顔をしていた。
「どしたの大悟」
「いや.バンド内恋愛って1番厄介なんだよね」
「そうなんだ。」
「別れたりするとバンドの空気悪くなるしね。」
「あー、確かに。」
「まぁ、何も無ければいいんだけど。そろそろ解散かな。
おーい、そろそろ帰るよー。」
お支払いはクレジットカードで、…あれ?
「大悟まだクレカ作れないんじゃない?」
「会社のだよ。経理計算を全部このクレジットカードでするんだ。持ち主は俺だよ。」
「そっか、進んでるね。」
「ありがたいことだよね」
明日も仕事があるTroops。また明日ー!と手を振り、僕と大悟と啓斗が一緒に帰る。
「それにしても啓斗がTroopsでギター弾くとは…」
「僕もびっくりだけどね、15歳でTroopsに加入するとはね。」
まぁいいか、と空を見上げた。星が綺麗だった。




