第25話 隼人と大悟④
公演終了後、大悟に呼ばれた。のそのそと着いていくと、「打ち上げ行くよ!」と莉緒姉さんが言った。
「いや、でもいいんですか?僕たち部外者ですよ?」
「大悟の友達でバックステージパス持ってるんだから、もう関係者だよ。」
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
「わーい!陽さん!」
「啓斗くん!」
いつの間にか、啓斗は陽さんに抱き付く仲になったようだ。まぁ、人懐っこいからな、啓斗は。
「可愛いなぁ、啓斗くん。弟欲しかったんだよなぁ。」
「陽さんは?妹さんですか?」
「兄がいるんだよ。なかなかシビアな関係なんだけど。」
「あ、そうなんですか…」
「はーいみんな打ち上げ会場に移動するよー!」
「はーい!ありがとうございました!」
打ち上げ会場。前回と同じ会場だった。
大量に料理を注文する。席は陽さんの隣に啓斗、莉緒姉さんの隣に新藤さん、僕の隣に大悟という配置についた。
「いやいや、シンディー新加入記念ライブ大成功を祝して乾杯!」
「「「「かんぱーい!!」」」」
「それにしても、打ち上げ、新藤さん新加入なのに、僕たちがいていいの?」
「もちろん。しかも莉緒姉お気に入りなんだよ、2人は」
「え?そうなんですか?」
「そうだよ。こんなに純情なファンはいないからね。だから毎回バックステージパス発行してるんだよ。主に大悟がだけど。」
「はぁ…ありがとうございます。」
「とにかく今はさ、食べて飲もうじゃないか!」
「ほら、啓斗唐揚げ好きだろ。」
「美味しい!」
「そうだね。あ、カルピスおかわりください。」
2人で唐揚げを食べていると、大悟が聞いてきた。
「今日のライブどうだった?」
「うん。アリスがかっこよかったね。あとはdorothyが良かった。」
「シンディー、dorothyかっこよかったって!」
「あ、ありがとうございます。」
「シンディーが初めて作曲した曲なんだよ。」
「だからですか、ギターがすごい全面に出てましたね。」
「うるさかったですか?」
「いえ、逆です。うるさいぐらいのギターが好きなんで。発売したら買いますね。」
「サンプル盤あげるよ?」
「いやいや。そこまでは。」
気がつけば啓斗が莉緒姉さんに絡まれていた。あの人だけお酒飲んでるんじゃないか。
3時間後、解散となり僕、啓斗、大悟の3人は帰路に着いた。
「それにしても啓斗でかいな…ライブ中すぐ分かったよ。柔道部だっけ?」
「剣道部だよ!」
「1日で1本牛乳消費するからね。」
「牛乳大好きだよ!」
「俺も小さい頃から牛乳飲んどけばこうなったのかな。」
「多分遺伝だと思う。父さん異常に高いし。」
「そっかぁ。」
季節も大分春めいてきた。着ていた上着を脱ぐ。大悟がじっと見つめてきた。
「な、何?」
「いや、細いなって」
「気にしてんだから言わないでよ…」
「兄ちゃんプロテイン飲んでるけど、運動しないと意味ないんだよ?」
「あ!秘密にしてたのに!」
「秘密にしてたんだ」
そう言いながら大悟が笑う。僕は少しむっとしながら言った。
「僕だって努力してるんですー!」
「はいはい」
軽くいなされた。そんな事を話していると、マンションに着いた。7階で大悟が降りる。
「今日は本当にありがとう。」
「また来てよ。バックステージパス出すからさ。」
「うん、また行くよ。」
「じゃあまた。」
「うん、おやすみ。」
大悟は最後まで見送ってくれた。
「兄ちゃん」
「なんだ弟よ」
「僕、兄ちゃんの弟で良かった」
「な、なんだいきなり。」
「優しくしてくれるし、こうやって毎回ライブに連れてってくれるし。すごい良かったなって思った。」
「そ、そうか。なら良かった。僕も啓斗の兄で良かったよ。」
エレベーターが12階に止まる。啓斗が先に降り、僕がその後ろを着いていく。家に着き、お風呂に入る。ここまで約10分。啓斗は母さんに今日のライブがいかに良かったかを語っていた。いい1日になったなら良かった。
湯船に浸かる。ふと手首を見る。傷跡は大分薄まってきた。そういえば最近メンタルが安定してきた気がする。薬は飲んでるけど。
お風呂から出て、体を拭き、自室に戻る。
楽しかった。そんな1日だった。




