第26話 大悟と隼人、入学式。
筑波大学に入学した。「入学式」の看板の前で大悟と2人、写真を撮らされた。
「なんか恥ずかしいな…」
「そうかな?なんか新しい門出を感じるけど。」
「そっか…」
「今日隼人、薬飲んで来た?」
「飲んで来たよ。頓服もあるし」
「よし、なら大丈夫だ」
「大悟ー、隼人くん、入学式始まるよー!」
「あ、はーい、行くよ隼人」
「あ、うん」
入学式は前方に新入生、後方に保護者という席順になっている。大悟とも離れてしまった。僕は頓服を飲む。しばらくすると、入学式が始まった。
学長挨拶、なんかの議員さんの話など話を聞き終わると、いきなり会場がカラフルな電飾で飾られた。何だ?と思っていると、見たことのあるアイドルが出てきた。wonderだ。曲をあまり聞いたことは無いが、顔くらいは知っている。曲を2曲やったあと、会場にスポットライトが当たった。
「平塚結依ちゃんです!」
あの子は確かセンターの子だったかな?ステージに連れて行かれ、僕でも知ってる「world wonder!」を歌ってハケていった、あれ、恥ずかしいだろうな。
「あれ、恥ずかしいよな。」
「え、うん、恥ずかしいよね。」
「俺、理学部数学科希望の萩原博樹!君は?」
「あ、医学部医学科希望の、西野隼人。よろしくね。」
「おう!後でLINE交換しようぜ!」
「あ、うん。」
つつがなく入学式が終わる。博樹くんと講堂を出ると、大悟がいた。
「お、隼人…?」
「あ、理学部数学科希望の萩原博樹くん。こっちは幼なじみの稲井大悟!」
「おう!よろしく!」
「…よろしく。」
LINE交換した後、博樹くんは高校のサッカー部の集まりに参加するとかで、1人去っていった。
「…ねぇ、さっきの」
「あ、博樹くん?気さくだよね。」
「…そうじゃなくて。何もされてない?」
「え、されてないけど。何かされた?」
「…別に。」
「?」
講堂の入り口に父さん母さん、大悟のお父さんお母さんが立っていた。
「もう、今日はこれだけでしょ?」
「うん。ガイダンスは明日から。」
「じゃあ、みんなでご飯食べに行きましょう。」
「いいですね。大悟も大丈夫でしょ?」
「俺は大丈夫だよ。」
「僕も大丈夫だよ!」
じゃあ車に乗って、と言われたのは、バスだった。小型の。撮影でもあるのかと、わらわら学生たちが集まっていた。これじゃ僕も大悟も人のことは言えない。
学生たちの間をすり抜けて、バスに乗る。恥ずかしい。
バスが発車すると学生たちが拍手してきた。
「ねぇ、大悟と僕で分けていくとか方法無かったの?」
「行く先は同じだからいいのよ。」
何処に連れて行かれるのか。不安だ。
行き先はホテルだった。何だ何だと、今日の演目を見る。
「稲井祐也先生を祝う会」と書かれていた。
「これ、大悟のお父さん?」
「そうだよ。難しい論文が2本通って、教授になることになったんだ。こんなに大げさにしなくていいのにね。」
大悟のお父さんが有名な心臓外科医だとは知っていたがまさかここまでとは。大悟のお父さんとうちのお父さんは大学が同じなので、うちのお父さんの知り合いも来るらしい。
僕と大悟、お母さんが先に会場に入り、大悟のお父さんが壇上に立つ。
「いやー、皆さんありがとうございます。こんなに大げさにやらなくて良かったんですけどね。ここまで段取りを付けてくれた心臓外科の阿部くんに感謝の意を示したいと思います。えー、この度は心臓外科教授に就任致しました。ご尽力いただきありがとうございました。これからも精進していきます、では。」
大悟のお父さんが、司会の人に目で合図を送っている。あの人は多分、大悟のお父さんのお弟子さんなんだろうな。
「では、皆さんお飲み物をお持ちください。では、稲井先生と心臓外科のますますの発展を祝いまして!乾杯!」
「乾杯!」
大悟は料理に目が行っていたようで、乾杯を僕とした。大悟のお父さんが戻ってきた。
「いやー、挨拶って緊張するな。心臓外科医なのに心臓バクバクだよ。」
「それは心臓外科医じゃなくても同じなんじゃないかな?」
「確かにな」
そう言って大悟のお父さんは笑った。朗らかな人なのだ。
「お、君が西野先生のご子息か!」
オレンジジュースを飲んでいると、知らない人に話しかけられた。誰だろうと思っていると、父さんがその人に話しかけた。
「お、笹井先生、久しぶり。」
「西野先生もお久しぶりです。」
そう言って固い握手を交わした。
「隼人、この先生はな、父さんの愛弟子の笹井佑樹先生だ。」
「よろしくな隼人くん!」
「よろしくお願いします。」
熱い人なんだろうなと握手を交わした。




