第16話 同級生が推しになりまして。⑥
「なんだ今日あったかいのに長袖かよ隼人」
「あ、いや…」
「来る時はちょっと肌寒かったんだよ。な、隼人」
「う、うん」
僕が長袖を着る理由。これを見る人には分かるだろう。父さんと母さんからもらった大事な体に傷をつけた。その代償はあまりにも大きい。我に返った時には必ず泣きながら嘔吐をしていた。
「いやー、それにしても大悟久々だな!」
「拓郎なんかオシャレになってない?」
「最近オシャレに目覚めてな。」
「変な方向にオシャレになったけどな。」
今日の食事場所は拓郎があの短時間でチョイスした。なんともオシャレな店だ。
「俺の叔父さんがやってる店なんだ。今日からリニューアルオープンらしくて。ノンアルコールも準備してくれてるらしいし、何よりも関係者限定だから無料なんだよ。」
「へぇ、助かるな。」
「お、拓郎来たな。みんなが拓郎の幼なじみか。今日は来てくれてありがとう。」
「こちらこそ、ありがとうございます。」
「さ、中入って。席は準備してあるから。」
「思えば小さい頃から拓郎はオシャレだったよな。」
「そうだね。お菓子とかもオシャレだった記憶がある。」
天井からはきれいなシャンデリア。最初の1杯はノンアルコールのスパークリングワインだった。
「乾杯。」
「乾杯!」
名前も知らないような西洋の料理をいただき、プレオープンは無事に幕を閉じた。
「美味しかったね。」
「フォアグラってあんなに美味しいんだね。知らなかった。」
「だけどやっぱり、来ちゃうんだよねぇ」
「「「「マクドナルド!!」」
拓郎が全て食べ終わったあとに「何か足りない」と言ってきたのがマクドナルドである。
「拓郎が手配したのにね。」
「やっぱりマックの誘惑には勝てん。」
「そういえば拓郎と理玖どこに進学したの?」
「俺はエスカレーターだよ。明大文学部。」
「俺は東京理科大薬学部」
「何だよ俺以外全員医療職かよ」
「いいじゃん文学部。かっこいいよ。」
「え、そ、そうか?」
「文学部って本読めて文章書けるってイメージ。」
「名だたる文豪がね。」
拓郎が照れていた。珍しい。
また昔みたいに遊んだりしようぜーと言って、理玖と拓郎は帰って行った。
「帰ろうか」
はい、と水が渡された。僕は急いで頓服を飲む。
「ありがとう。よく分かったね。」
「途中から喋らなくなったし、理玖も拓郎も気づかなかったと思うけど、顔色悪かったから。」
「ありがとう…気が利くね。」
「隼人と何年いたと思ってるの?」
「うん…」
大悟に感謝しながら歩いていると、マンションに着いた。降り際、
「CD聞いてよ。感想聞くからね。」
「分かった。今日はありがとう。」
「おやすみ」
そう言う大悟をエレベーターが引き離す。僕の住んでる階に着いた。家に着き、荷物を置いてベッドに倒れ込む。
「疲れた…楽しかったけど。」
ふとCDを手に取った。「アクアリウム」ねぇ…
パソコンに取り入れる。イントロからゴリゴリのベースが鳴り、それとは相対的なキャッチーなギターが入ってきて歌が入る。これが今人気なのかぁ…。
CDを取り出す。CD棚にそっとしまって、リビングに向かう。啓斗がテレビを見ていた。僕はその隣に座る。
「あ、お兄ちゃん」
「面白い?」
「んー、あんまり。」
「そっか。なんか飲む?」
「冷蔵庫の中にミルクティーあるから、あっためて欲しい」
「あい」
2人分のミルクティーを用意し、リビングに戻る。
「ありがとう。お兄ちゃん夜の薬飲んだ?」
「あ、忘れてた。まずいまずい。」
夜の薬を飲んだ後、啓斗の隣に座り頭を撫でる。
「ありがとう」
「どういたしまして。」
30分後。薬が効き始めたのか眠くなってきた。
「啓斗、お兄ちゃん先に寝るね。お休み…」
「お休み」
ベッドに倒れ込み、そのまま眠気に身を委ねる。
「おやすみ…」
その後意識はブラックアウトした。




