表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我が騎士道とは、剣に捧ぐことと見つけたり ~剣に恋する王女に口説かれる日々~  作者: アレセイア
第四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/38

第22話

 もう、迷いはなかった。


 目を開ければ、アウレリアーナの真紅の瞳が見つめている。真っ直ぐと、静馬の心を射抜くかのように見つめて離れない。その瞳に魅入られるようにして口を開く。


「――アウラ様に、お仕えします」


 ふわりと風が吹き、彼女の長い金髪が舞い散った。

 雲の切れ間から差し込んだ陽光が降り注ぎ、光を散らす。どこか幻想的な景色の中、彼女は大きく目を見開いていた。静馬はその前に跪き、その手を取る。

 そして、はっきりとその意思を口にする。


「自分も貴女と一緒に歩みたい――貴女とならばきっと、この剣の道の先が見えるから」

「――シズマ……っ」


 顔を上げれば、彼女の瞳は大きく揺れていた。真紅の瞳が食い入るように静馬を見つめ――やがて、その瞳からぽろり、と大粒の涙が流れる。

 その涙がどこか温かいものに感じる。その涙の中で彼女は微笑む。


「嬉しい……本当に、いいのよね……?」

「剣士に二言はありません」


 断言すると、彼女の瞳からさらに涙がこぼれだす。それに戸惑ったように頬に手を当て、震える声で笑って見せる。


「あは……あれ、おかしいな、嬉しいのに……涙が止まらない……」

「アウラ様――」


 懐からハンカチを取り出して差し出すと、彼女はそれを手に取って涙を拭いて微笑む。


「……ありがとう。シズマ。貴方の言葉は何より嬉しい。得難い友を得た気分だわ」

「友……ですか?」

「うん、私が勝手にそう思っているだけ、だけど」


 王族からそう言っていただけるのは恐れ多いことだ。


(だけど、アウラ様なら本心から告げられる――)


 静馬は目を細めながら微笑み、言葉を返した。


「ならば、これから友になりましょう。アウラ様」

「……シズマ……」

「同じ剣士として、そして主従として、これから理解を深めていけるはずですから。二人で行く先を見つけていけば良いのです」


 その言葉に彼女は目を細めると、うん、と幼子のように小さく頷き。

 やがてふんわりと花咲くような柔らかい微笑みをこぼした。


「これから――よろしくお願いするわね。シズマ」

「はい。アウラ様」


 彼女の手をしっかりと握り返しながら、その顔を見上げる。

 陽の光の下で微笑む彼女は、誰よりも可憐で美しく見えた。


   ◇


「すっかり日暮れね……つい楽しくなってしまったわ」


 王都に戻る頃には辺りは暗くなっていた。

 存分に馬を乗り回し、さらには手合わせをするなど、王都の外で静馬とアウレリアーナは充実した時間を過ごしていたのである。

 その甲斐があってか、城門を潜ったアウレリアーナは満足げな表情を浮かべている。付き従う静馬は思わず苦笑を浮かべながら訊ねる。


「大丈夫なのですか、丸一日外出していたわけですが」

「騎士たちが上手くごまかしているはずよ。あとは気取られないように戻ればいいだけ。王城まではお供してくれるかしら、シズマ」

「仰せのままに、殿下」


 王都に戻ったので呼び方を改めると、彼女は少し不服そうに唇を尖らせる。だが、仕方なさそうに一つ頷くと、軽やかな足取りで王城までに道を辿り始める。

 もちろん、ユーラも一緒だ。彼女は静馬の隣に並ぶと、目を細めて囁いた。


「これにて一件落着、でしょうか。シズマ様」

「ええ、そのようです。あっさりと決めてしまいましたが」

「転機とはそのようなものでしょう。これで私たちは同僚、となりますね」

「そうなるでしょうね。そのときはどうぞよろしくお願い致します」

「はい――それより同僚になるのならば、敬語も敬称も不要ですよ」


 ユーラの目が微かに笑う。ほんの少しだけ口角を吊り上げて言葉を続ける。


「どうぞ、ユーラと呼び捨てていただければ――今回は、受けてくれますよね?」

「ああ、そうだな――うん、よろしく頼む。ユーラ」

「はい、よろしくお願いします。シズマさん」


 同僚になる仲間と笑みを交換する。アウレリアーナは後ろを振り返り、目を細めながら告げる。


「とはいえ、シズマを引き抜くのにいろいろ手続きがあるから、まだ少しかかる予定だけどね。根回しも必要になってくるでしょうし」

「……いろいろと面倒なのですね」

「でも、そんなに待たせるつもりはないわ。第三軍のグノーシス将軍、第一軍のアルバレア将軍と相談して、すぐに移籍できるようにするわ。その辺の根回しは任せなさい、シズマ」

「はい、楽しみにしています」


 静馬がそう言葉を返すと、アウレリアーナは嬉しそうに表情を緩めた。長い金髪を艶やかに揺らし、鼻歌を微かに響かせる。


 だが、その上機嫌さが続いたのは王城の門前までだった。


 門前に立つ複数の人影。それを見てアウレリアーナが黙り込む。

 ユーラは表情を曇らせ、顔を伏せさせた。静馬は眉を寄せながら視線を向ける。近づくにつれて、その姿がはっきりしてくる。

 多く立つのは近衛騎士たち。その中心に立つのは煌びやかな服に身を包んだ男。


 第一王子のギルバルドだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ