第二十一話-【第四幕:俺たちの『公差(トレランス)』。黄金の酒に溶け込む兄弟の絆】-END
リナが立ち去った後、トールは再び座り直し、少し大人びた弟を見て、その顔に人の良い純朴な笑顔を浮かべた。
兄弟二人は温かい思い出話に花を咲かせた。
アーガスは働き者のバーテンダーのようになり、トールのグラスが空になるたびに、すぐに立ち上がって兄のためにワインを注いだ。
一方のトールは、普段は夢の中でしか味わえないような美酒を堪能することに専念した。
二人の間には温かくも少し滑稽な阿吽の呼吸が生まれていた。
アルコールの温もりが血管の中を流れ、過去のわだかまりは、この黄金色の液体の中でゆっくりと溶けていった。
「知ってるか、ちびすけ」
トールは滅多に飲めない美酒を味わいながら、家の近況を語り始めた。その語調はリラックスして楽しげだった。
「親父の奴、最近は毎日自慢してるぞ。あの黒髭の連中まで、自分に仕事くれって頭下げてきたってな。ハッ! お前にも親父のあの得意げな顔、見せてやりてえよ。まるでもう一度『ストームアイアンソーン』の伝説の職人にでも戻ったみてえな顔してやがるんだからな」
彼はワイングラスを掲げ、窓の外の夕日に透かして見た。
琥珀色の酒液が光を受けてキラキラと輝いている。
「母さんは母さんで、毎日お前のことばっかりだ。ちゃんと飯食ってるか、友達はできたかってな。ミリーみたいないい子に会ったって言ったら、母さん、きっと大喜びするぞ」
「それにアイリーン姉さんだ」
トールの目に一抹の誇りが閃いた。
「今じゃ本物の総監督みてえなもんだ。家ん中も工房もきっちり回してる。注文は山ほどあるし、街の貴族たちまでうちへ仕事を頼みに来るようになったんだ。おかげで鉄棘の名も、もう山城の中だけのもんじゃねえんだぜ」
兄弟二人は温かい蝋燭の光の中で顔を見合わせて笑い合い、アルコールのおかげで二人の頬は赤く染まっていた。
部屋の中は家族の温もりに満ち溢れ、まるで長年の隔たりがこの瞬間に完全に消え去ったかのようだった。
トールはまたワインを大きく一口飲み込んだ。
顔は赤らんでいたが、その眼差しは極めて真剣なものに変わった。
彼はグラスを置き、アーガスを見つめ、声を低くした。
「昔はさ……お前の描くあの鬼の金縛りみてえな図面は、全部、俺を馬鹿にしてるみてえに見えてたんだ」
彼の指は無意識に机の上で円を描いていた。
「俺が覚えてきたことを、全部否定してる気がしてた」
少し間を置き、それから静かに続けた。
「でも今は分かる。俺たちはただ、違うハンマーで同じ鉄を叩いてただけなんだ。お前が教えてくれた『公差』ってやつ、今じゃ工房の見習いにも全員覚えさせてる。あれはもう新しい決まりだ。俺たちの決まりなんだよ」
彼は再び顔を上げ、その目には真摯な光が輝いていた。
「だから、学院でも、びびるなよ。お前が作ってるものは『変なガラクタ』なんかじゃねえ。鉄棘家が胸を張るためのもんだ。もし誰かがお前を馬鹿にするようなことがあったら――」
彼は最後まで言わず、ただ自分の砂鍋のように大きくて、タコだらけの拳を掲げ、アーガスに向かってニカッと笑った。
アーガスは、兄のあの不器用でありながらも力強さに満ちた姿を見て、同じように笑った。
彼はワイングラスを掲げ、トールのグラスと軽く合わせた。
「チンッ」
澄んだ音が、温かい蝋燭の光の中で響き渡った。
長年の氷の壁が、この瞬間に完全に解け去ったのだ。
アーガスは知っていた。
この先の道のりがどれほど険しかろうと、彼の背後には、永遠にあの温かく、炉の火が激しく燃え盛る工房が存在していることを。
第一集『煤手矮人の観景窓』END
【あとがき:アイアンソーン工房より】
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 台湾からこの物語を紡いでいる作者です。
職人が伝説級の逸品を鍛え上げるためには、 確かな技術だけでなく、炉を赤々と燃やす「火力」が不可欠です。
私にとって、読者の皆様からの応援と☆☆☆☆☆評価こそが、 この物語(アイアンソーン工房)を燃え上がらせる、最高の燃料となります。
もし「続きが読みたい!」「熱かった!」と思っていただけたら、 ぜひ下にある【★★★★★】をタップして、 工房に薪をくべてやってください!
その熱を鉄に込め、次の章も全力で打ち込みます。




