第二十一話-【第二幕:腹黒令嬢の采配。ミリーの家紋が導く『一角獣』の新たな道】(挿絵あり)
「あの山積みの……作品についてですが」
彼女は口を開き、語調を先ほどのからかいから正式なビジネスのトーンへと切り替えた。
「アーガス君から、あなたが彼を大いに助けてくれたと聞いています。あなたの協力がなければ、感光薬においてあれほどの突破口を開くことは不可能でしたわ」
トールの目は瞬時に輝いた。
「待て、あのゴミの山、お前が作ったのか?」
彼は下の階でまだ動いており、様々な奇妙な音を立てているあの「暗箱一号」を指差した。
それがあのアーガスの「傑作」だと知った時、トールの顔には複雑な表情が浮かんだ。
そこには意外さがあり、安堵があり、さらには一抹の他人の不幸を喜ぶような満足感さえあった。
(なるほど、アーガスだってゴミ(バグ)を作り出すことはあるんだな!)
この発見は、彼にある種の無邪気な安堵感をもたらした。
彼の心の中で完璧に近い存在だった弟も、結局はミス(エラー)を犯すただの普通の人間だったのだ。兄弟の距離が、この瞬間にふっと縮まった。
アーガスは声なき抗議の視線をリナに向けつつ、仕方なくそれを認めた。
兄の目にある「お前も万能じゃないんだな」という安堵の色を見て取れば、こんな時にトールの滅多にない喜びを台無しにするわけにもいかなかった。
そしてリナは、気にしていないふりをして標準的なビジネススマイルを保っていたが、内心では昨晩徹夜させたあの企画書に対するささやかな復讐を喜んでいた。
会話はリラックスした雰囲気の中で続いたが、リナの注意力は密かに別の場所へと移っていた。
彼女の視線は羽毛のように軽く部屋を見渡し、最終的にミリーの上で留まった。
その紋章はミリーの襟元に静かに横たわっており、銀の光沢が蝋燭の灯りの下で流れていた。
一本の羽根ペンが、古代ルーンの緻密な模様に囲まれており、まるで失われた伝説を無言で物語っているようだった。
リナの瞳孔がわずかに収縮し、眉間にはほとんど気づかれないほどの皺が寄った。
「ミリー」彼女の声は湖面を撫でるそよ風のように柔らかかった。「その紋章、とても美しいわね。きっと、豊かな家族の歴史が刻まれているのでしょうね?」
ミリーは無意識に胸の家紋を撫で、その目には純粋な誇りが輝いていた。
「これは我が家に長く伝わる紋章です。私たちの家族は代々学者であり、精密魔法陣の研究を専門としてきました。今は没落してしまいましたが、伝承が途絶えたことは一度もありません」
「精密魔法陣……、それは一角獣学派のことかしら……?」
リナの目に鋭い光が走った。
「本当に敬意を表すべき伝承ね」
ミリーは、リナが一般人と同じように、自分が一角獣学派の人間だと知れば、嘲笑し、冷笑し、あるいは見下すのではないかと思っていた。
リナは少し首を傾け、ふと何かを思い出したように言葉を継いだ。
「そう言えば、私たちの学院にも、深く隠棲している同好の士がいらっしゃったわね。一年生の『魔力精製』の授業を担当している優雅な老教授なんだけど。聞いた話では、彼女も若い頃、その古代の精密魔法陣について深く研究されていたそうよ」
ミリーとアーガスは同時に彼女の方を向き、目に興味の火花を燃やした。
「もし自分たちの家族の歴史に興味があるなら、一度彼女を訪ねてみるのもいいかもしれないわ」
リナの語気は事もなげだったが、一つ一つの言葉が種のように二人の心に根を下ろした。
「きっと、共通の話題がたくさん見つかるはずよ」
ミリーの興奮は潮のように溢れ出した。
彼女は目の前にいる優雅な先輩と初対面であることも完全に忘れ、両手でリナの手を掴んで上下に振った。
「本当ですか! 本当にありがとうございます、リナ先輩!」
リナはこの純真な少女を見て、口元に温和な弧を描いた。彼女はミリーの手を軽く叩いた。
「どういたしまして。あなたたちなら、その老教授からきっと多くの価値ある情報を得られると信じているわ」
挨拶が終わると、リナは雰囲気を引き締めた。
彼女は机の上からきれいに整理された書類を手に取り、トールに渡した。
「トール様、こちらはヴァンデル商会がまとめた第一期の市場フィードバックと販売報告書です。『車椅子』と『旅行鞄』に関するものですわ」
トールは書類を受け取り、素早く目を通した。
そこにあるびっしりと書かれたデータ、図表、そして専門的なビジネス用語の数々に、この単純なドワーフの職人は目眩を覚えた。
しかし一点だけ彼にもはっきりと分かったことがあった。
数字がどれも大きく、その後ろにはたくさんのゼロが並んでいるということだ。
「こ……これは全部本当なのか?」彼はどもりながら尋ねた。
「純金よりも確かですわ」リナの答えは簡潔で力強かった。
トールは報告書を置き、懐から一巻の羊皮紙を取り出し、慎重に広げた。
それは彼の「改良版設計図」であり、数週間昼夜を問わず働き続けた成果だった。
彼は習慣的に、それをリナという「ボス」に提出して審査してもらおうとした。
だがリナは軽く笑い、その図面を押し戻す。
「トール様、餅は餅屋です」彼女の声には有無を言わさぬ権威が宿っていた。「私の役割は、あなたに『市場が何を求めているか』を伝えること。そして、あなた方の工芸でいかにして『市場を満たすか』は、アイアンソーン家の専門領域ですわ」
彼女は言葉を切り、視線をアーガスに向けた。
「あなた方が、私に最高の解答をもたらしてくれると信じています」
この権限と責任の明確な切り分けの裏には、リナのより深い計算が隠されていた。
(あなたが直接の雇用を受け入れたがらないのなら、あなたの家族を通すことで、結果的にあなたが私たちの専属デザイナーであることに変わりはないのだわ)
彼女の目には、獲物の捕獲に成功したキツネのような、満足げな狡猾さが漂っていた。




