第二十一話-【第一幕:扉の向こうのサプライズ。煤まみれの兄がもたらした『家』の匂い】(挿絵あり)
【第二十一話:銀の鈴と新たな種――兄のハグと予測不能な「バグ(家族)」】
扉が回転した瞬間、時間は凍りついた。
アーガスの掌が冷たい真鍮のドアノブに触れ、その冷気が掌から全身へと伝わっていった。
彼の表情は暗く沈んでいた。
工芸品を「ゴミ」だと強制的に認めさせられたあの屈辱が、茨のように胸の奥底で潜伏していたのだ。
しかし、扉が完全に開かれたその瞬間。
すべてのネガティブな感情は、驚愕の中で跡形もなく消え去った。
ドアの外には、いつも彼に温もりを与えてくれるミリーだけでなく、彼が全く予測(予測演算)していなかった人物が立っていた。
トールだ。
彼の兄。あの分厚い体躯で、全身煤まみれでありながらも満面の笑みを浮かべたドワーフの職人が、琥珀のように煌めく瞳で彼を見つめていた。
「驚いたか、坊主?」
トールの声には抑えきれない喜びが溢れていた。
「今のお前の顔、鏡で見せてやりたいぜ」
アーガスは口を開いたが、何の音も出なかった。
驚愕、困惑、そして名状しがたい暖かな流れが心の中で交錯していた。
だが、トールは彼に思考する隙など与えなかった。
背は低いが異常なほど分厚いその兄は、三歩を二歩で詰め寄ると両腕を広げ、ドワーフ流の力強く温かいベアハッグ(熊抱)を彼にお見舞いしたのだ。
その抱擁には、見慣れた石炭の煤の匂いに、金属と汗の匂いが入り混じっていた。
まさに彼の記憶にある「家」の匂いが、たっぷりと詰まっていた。
アーガスのこわばっていた肩が無意識に緩む。
胸に立ち込めていた陰霾は、この温かい抱擁によって一掃された。まるで本当に家に帰ったかのような安らぎだった。
二人がようやく離れた時、アーガスは少し気まずさを感じた。
彼は軽く咳払いをしてミリーの方を向き、この重要な同盟者を兄に紹介しようとした。
「兄さん、こちらはミリー。彼女は……」
「とうに知ってるさ!」
トールは粗っぽく彼の言葉を遮り、その琥珀色の瞳にはまるで宝物を見せびらかすかのような情熱が燃えていた。
彼はアーガスを完全に無視してミリーを直視し、よく通る大声で言った。
「母さんが言ってた通り、いいお嬢さんだ!」
この言葉は、静かな湖面に投げ込まれた石のようだった。
ミリーの頬は瞬時に、夕焼けに染まった雲のように真っ赤になった。
アーガスはハッと驚いて思い出した。
確かに母からの手紙でミリーのことに触れられており、母は彼女のことを「とてもいい子そうだから、仲良くしなさい」と言っていたのだ。
アーガスがまだこの情報を消化している間に、彼はもう一人、さらに圧迫感のある存在を紹介しなければならないことに気づいた。
彼は腹をくくり、ソファに優雅に座りながら、この混乱を面白そうに観察しているリナの方を向いた。
「兄さん、こちらは……リナ先輩だ」
彼の声は少し強張っていた。
リナは咲き誇る百合の花のように、優雅にソファから立ち上がった。
彼女はまずトールに対して軽くお辞儀をし、完璧な貴族の礼儀作法を見せた。
「初めまして、トール様。私はリナ・ヴァンデルと申します」
そして彼女は顔を向け、からかいと一抹の危険な面白がりを混ぜた視線でアーガスを見つめ、口角に軽い笑みを浮かべた。
「私が、アーガス君が手紙に書いていたあの……『少し変わった先輩』ですわ。アイアンソーン工房の未来の巨匠様、これからはどうぞご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします」
その言葉には裏の意味(裏テキスト)がたっぷりと込められており、アーガスは穴があったら入りたいほど気まずくなった。
しかし、生まれながらの「トラブルメーカー」であるトールは、その暗流を全く読み取れていなかった。
彼の目は突然明るくなり、まるで真理を悟ったかのような口調で叫んだ。
「おおっ! あんたがあの少し変わった先輩か!」
彼はリナを上から下まで値踏みし、その琥珀色の瞳には純粋な好奇心と感嘆が浮かんでいた。
そして彼はアーガスの背中を力強く叩き、部屋全体を震わせるほどの大きな声で言った。
「変わってる? どこが変わってるんだ? こんなに綺麗なお嬢さんを捕まえて、お前、目がどうかしてるんじゃないか! 母さんはあんたのことを悪い子みたいだって言ってたが、見たところ綺麗で優しそうじゃないか! 帰ったら、アーガスがでたらめを言ってたって母さんに言いつけてやる!」
この言葉は爆弾となって、部屋の気まずい空気を瞬時に吹き飛ばした。
リナは吹き出しそうになるのをこらえ、さらに満面の笑みを見せながらアーガスを直視した。その目はこう語りかけていた。
『なかなかやるじゃない。私は大馬鹿野郎で、少し変わった先輩で、その上悪い子なのね! 私の肩書きがどんどん華やかになっていくわ!』
一方のアーガスは、自分の顔が文字通り燃え上がっているように感じていた。
リナはこの滑稽な紹介劇を存分に楽しみ、内心で主導権の掌握を計算し始めた。
トールの単純さとアーガスの気まずさ、そしてミリーの目にある羞恥心。それらすべてを見抜いた上で、彼女は話題を本題へと引き戻すことにした。
アーガスに兄の前でこれ以上恥をかかせるのは、彼女の本意ではないのだから。




