第十八話-【第二幕:白紙小切手を拒否!? 不労所得を嫌う『職人魂』に令嬢もタジタジ】(挿絵あり)
アーガスが技術的な原理を滔々と説明し始めると、リナは優雅に窓辺へと歩み寄り、顔からすべての笑みを消し去った。
「でも、あなたのその『薬液』がこれほど完璧だからこそ、それはとても危険なのよ、アーガス。非常に危険だわ」
彼女の声は突然低くなり、嵐の前の海面のようになった。
彼女はその写真を裏返し、机の上に伏せた。
その動作は、死者の瞼をそっと閉じるかのように丁寧だった。
「想像してみて」彼女の声には、寒気を覚えさせるような予言めいた響きがあった。「もしこの技術が、貴族の土地の契約書を偽造するために使われたり、軍事要塞の配備図を複製するために使われたとしたら……」
「これを見つけた人間が、あなたにお金を払って『買い取る』と思うかしら?」
アーガスの顔から笑みが消えた。
「彼らはそれをあなたの手から直接『奪い去る』わよ。発明者であるあなたごとね」
リナは振り返り、その瞳には冷徹な真実が燃えていた。
「あなたは日の目を見ないどこかの秘密の錬金室に閉じ込められ、一生彼らのために働くことを強要されるわ」
彼女は一息ついてから、さらに言葉を重ねた。
「聖白学院はあなたを『冒涜者』と言い、深藍学院は『精神異常』と言った……彼らが十分に邪悪だと思っていた? いいえ、可愛い後輩君。あなたは、人間がお金のため、利益のために、どこまで『狂える』かを知らないのよ!」
アーガスは理屈ではリナの言うことが正しいと理解していた。
骨の髄まで凍りつくような寒気が広がり始める。
しかし奇妙なことに、パニックを引き起こすはずのこの恐怖は、心臓に到達した瞬間に何らかのより深い力によって抑え込まれた。
それはドワーフの血脈が持つ天賦、危険に直面した時の果敢さと強靭さだった。
恐怖は、より純粋で単一の思考へと転換された。
彼はパニックの渦に沈むことなく、即座に対応策の計算を始めたのだ。
リナはアーガスの顔に浮かぶ、警戒と落ち着きが入り混じった表情を見て、内心で密かに感嘆した。
彼女はわずかに首を傾け、陽光にハーフエルフの耳を透けさせながら、声はより優しく、そしてより危険な響きを帯びた。
「今、あなたの目に映る私は、もはやあの『少し変わった先輩』じゃない。唯一の救命ボートなのよ。分かるわね?」
リナがすべて自分の思い通りに進んでいると考えたその時。
彼女は精巧なポーチから、「研究協力覚書」のような魔法契約書を取り出した。
羊皮紙には金色のインクで、眩暈がするほど優遇された条件が記されていた。
学費全額免除、研究リソースの無制限供給、個人工房、専属アシスタント……。
「これは互恵関係に基づく協力合意よ」
彼女は契約書をアーガスの方へ押しやり、声は再び穏やかで誘惑に満ちたものへと戻った。
「ヴァンデル商会はあなたに必要なすべてを提供するわ。あなたはただ、」
アーガスは契約書を手に取り、条項を一つずつ確認していった。
最初、彼は確かにそのあまりにも良すぎる条件に圧倒された。
しかし、リソースリストにある魔法材料の具体的な数量や品質要件を目にした瞬間。
地球のエンジニアとしての魂が、即座にコストパフォーマンスの計算を開始した。
彼の理性が告げていた。
この技術は確かに計り知れない価値があるが、この報酬はそれでも過剰かもしれない、と。
そして彼の視線が契約の末尾にある、飾り文字で書かれた「甲方は上述のすべてのリソースを無償で提供する」という一文に落ちた時。
ドワーフの血脈の中にある「対等な取引」への執着が、先ほどまでの恐怖混じりの理性を瞬時に上書き(オーバーライド)した。
職人の倫理が彼の心の中で叫んでいた。
技術に価値があることは分かっているが、このような「不労所得」に近い巨大な利益は、彼の良心が許さないのだ。
「違う」
アーガスが突然口を開いた。
その声には、彼女が全く予想していなかった断固とした響きがあった。
リナは目をしばたたかせた。聞き間違いかと思ったようだ。
「何が?」
「これは合理的じゃありません」
彼は契約書の条項を指差し、眉をきつくひそめた。
「この技術に価値があることは分かりますし、理性的に考えれば計り知れないものである可能性も理解しています。でも、俺にはこの『不労所得』のような巨大な利益を受け入れることはできません」
「俺はそれに見合うだけの労働を提供していない。こんな優遇すぎる条件は、まるで受ける権利のない施しを受けているような気分になります」
彼ははっきりと告げた。
「良心が咎めるような契約は、結ぶことはできません」
リナは呆然とした。
彼女の脳は、この完全に予想外の反応を処理するのに数秒の時間を必要とした。
「……つまり」
彼女はゆっくりと口を開いた。声には信じられないという色が混じっていた。
「あなた、この契約があなたにとって……『良すぎる』って言いたいの?」
「俺は、この契約が恥ずかしいと言っているんです」
アーガスの語気には、ドワーフ特有の頑固さが宿っていた。
「知識が貴重なのは確かですが、職人の倫理が俺に告げているんです。報酬は相応の労働をもって得なければならないと。こんなに気前がいいと、自分が詐欺師になったような気分になります」
リナは完全に呆れ果てた。
「ちょっと、少し待ちなさい」
彼女はゆっくりと背を向け、窓際へと歩き、焦燥した様子で行ったり来たりし始めた。
この数秒間で思考を再構築しようとしていた。
彼女の右手は無意識に、腰にある十数種類の予備プランが入ったポーチへと伸びた。
それらは彼女が昨夜徹夜で用意した、強欲から恐怖まであらゆる反応を想定した対応策だった。
しかし、その中には、「投資家を相手に、自らの利益を削ろうとする愚かな天才」に対応するためのプランは、一つも存在しなかった。
なんてこと……。私は一体どんな怪物を拾ってきてしまったの?
彼女の指はポーチの上で一瞬止まり、それから力なく垂れ下がった。
丹念に準備されたそれらのプランは、この瞬間にすべて無意味なものと化したのだ。




