第十六話-【第一幕:悪臭のクレームと、からかう猫、そして追い詰められたネズミ】(挿絵あり)
【第十六話:賢い愚者と奇妙な先輩――「竜の糞」から生まれた記録媒体】
寮のドアを叩く音が、次第に乱暴さを増していく。
それに混じって、寮長の甲高い文句が響き渡っていた。
「アイアンソーン! 出てこい! フロア全体がお前のせいでドラゴンの糞溜めみたいに臭くなってるぞ!」
アーガスは額の汗を拭った。
あの小鍋から立ち上る複雑な匂いは、確かにむせ返るほどだった。
スライムのゲルをすり潰した時の生臭く甘い匂い。銀塩が酸化した金属の錆びた匂い。
さらに魔法の炎で加熱し続けたことによる、スライムの腐敗臭が混ざり合っている。
だが、これは感光薬を調合するために避けては通れないプロセスだ。
彼はドアに向かって歩き、深呼吸をしてからドアを開けた。
ドアの外には顔を見合わせる学生たちが数人集まっていた。彼らの目には嫌悪と好奇心がはっきりと書かれている。
そして彼ら全員の後ろに、腕を組み、気怠げにドア枠に寄りかかっている人影があった。
リナ・ヴァンデル。
アーガスの心臓がドクンと跳ねた。
こんな狼狽したタイミングで彼女に遭遇するとは全く予想していなかった。
サークル新入生歓迎会で彼がうっかり怒らせてしまった、あの危険な先輩だ。
「……おい、誰が寮の中でこんな危険な錬金実験を許可した!」
寮長の唾がアーガスの顔に飛んできそうだった。
「この匂いだけでも、風紀委員会がお前を……」
「もういいわ」
リナの声は大きくなかった。
だが鋭い小刀のように、事もなげに寮長の長々とした咆哮を切り裂き、強制終了させた。
彼女は寮長を一瞥だにせず、気怠げな手振りで廊下の奥を指し示した。
「ここは私が処理するからいいわ」彼女は淡々と言った。「あなたは戻ってちょうだい」
寮長の怒りは、頭から氷水を浴びせられたように瞬時に鎮火した。
彼は口を開き、自分の哀れな権威を保つために何か言おうとしたようだ。
だが、波一つないリナの青い瞳と視線が合った瞬間、すべての言葉は意味のない呟きへと変わった。
彼は最終的に不本意ながらアーガスをひどく睨みつけ、踵を返して立ち去った。
ついでに廊下で野次馬をしていた頭の群れも一緒に追い払って。
リナはすぐには部屋に入らなかった。
彼女はまず鼻をつまみ、大げさに空気を扇ぐ。
そしてアーガスに向かって満面の笑み――彼に冷や汗をかかせるような笑顔――を浮かべてから、部屋の中へと足を踏み入れた。
「すっごく大勢の人から生徒会にクレームが来たのよ。寮でドラゴンの糞を煮込んでる奴がいるって。どうやってここに来たと思う?」
「もしかして……って考えてたのよ」
リナは笑顔を収めた。
「も、もしかして……?」
アーガスは戦々恐々と尋ねた。
「そう、その『もしかして』よ……! またあなたなのね、アーガス・アイアンソーン。自分が生徒会のブラックリストでどれだけ上位にいるか、分かってるの!? もう、本当に信じられないわ!」
リナは額を押さえ、呆れたように言った。
「クレームが来れば、誰かが処理しなきゃいけない。誰かが報告書を『書・か・な・きゃ』いけないの! そして、私こそが! あなたみたいな可愛い後輩がしでかした尻拭いの報告書を書く、そ・の・当・事・者・なのよ!」
彼女の視線は隼のように机の上の混乱を走査した。
散乱した紙、散らばった魔法晶、そして不気味な酸っぱい匂いを放ちながら沸騰しているあの小鍋の汁。
彼女は眉をひそめ、あちこち歩き回ってすべてを検分し、彼女特有の面白がるような口調で口を開いた。
「なんてこと、アイアンソーン君。あなた本当に寮で古代竜の排泄物を研究しているの……? 一体何を調合しているの? フロア全体の空気を『サプライズ』で満たす『ドラゴン糞の香水』かしら?」
最終的に、彼女の視線は奇妙な泡を立てているあの小鍋に留まった。
アーガスの顔は瞬時に真っ赤になった。
口を開いて説明しようとしたが、言葉はつっかえてしまった。
「こ、これは……俺はそんな……」
彼の頭の中は綿を詰め込まれたようになり、リナの飛躍した論理に全くついていけなかった。
ドラゴンの糞? これがドラゴンの糞なわけないだろう! 俺は感光薬を調合しているだけなのに!
彼が「ドラゴンの糞」呼ばわりされた羞恥と怒りに震えている隙に。
リナの視線はすでに、机の上にあるアイアンソーン家からの手紙を正確にロックオンしていた。
彼女は優雅に歩み寄り、絹の手袋をはめた指先で便箋をつまみ上げる。
「違禁品の検査」という口実で、堂々と手にとって内容をちらりと見た。
「見せてごらんなさい、手紙? 何が書いてあるのかしら……ふむ……『お母さんに代わって念を押すわね……あの「少し変わった先輩」、リナからは離れていなさい……名前を聞いただけでも悪い子に違いないから……』あら〜」
彼女はわざと語尾を伸ばし、顔を上げた。
その青い瞳は、すでに顔を真っ赤にしているアーガスを笑っているような、笑っていないような目で見つめた。
「あら、私アップグレードしたみたいね? この前の新入生歓迎会での『大馬鹿野郎』から、『少し変わった先輩』を経て『悪い子』に昇格したの? あなたの家で、私ってそんなに有名な人物だったのね?」
蜜を塗った毒薬のようなその声が、崩壊寸前だったアーガスの神経を一つ一つ正確に叩き潰していく。
アーガスは耳がブンブンと鳴るのを感じた。
手紙を取り返そうとしたが、リナは指で軽く挟んだまま便箋を空中で揺らし、彼の無力さをあざ笑っているかのようだった。
圧倒的な権力の非対称性。
優雅に獲物を弄ぶ猫を前にして、彼はただの不器用なネズミでしかなかった。
【あとがき】
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