第十五話-【第三幕:温かな『真実』。足手まといの平民から、家族の首席(マスター)へ】
『だから、そのお金の袋は安心して受け取って。これは家からの「投資」よ。
お父さんが言っていたわ。「道のりは遠い、手元に資金があってこそ安心できる」ってね。
あなたが送ってきたあの『どうかお願いします』という手紙、私たちは真剣な仕事として受け止めたの。
家の足を引っ張るのが怖いと言っていたけれど、その言葉は今、姉さんがそっくりそのままお返しするわ。
あなたが送ってきた図面はね、私たちの所では『首席職人の依頼』なの。
助けを求めるものじゃないわ、分かった? 首席様!
最後に、お母さんに代わって念を押すわね。
寒くなってきたら、ちゃんとショールを羽織ること。お母さん、三回も言っていたわ。
本当はもっとたくさんの蜂蜜ナッツがあったんだけど、箱が閉まらないくらい多くて。
お父さんが見かねて、一掴み口の中に放り込んで、ようやく無理やり閉めたのよ。
お母さん、そのことで怒って何日も口をきかなかったわ。
甘すぎるなんて思わないでね、あなたの心の話よ!
それとそれと、お母さんが絶対に伝えてくれって言っていたんだけど。
そのミリーって同級生はいい子ね。それからあなたが言っていたあの……「少し変わった先輩」……リナ。
彼女からは離れていなさいって。名前を聞いただけでも悪い子に違いないから! 分かった?
彼!女!か!ら!離!れ!て! お母さんはそう言っていたわ。
炉の火を裏返さなきゃいけないから、まずはここまでにしておくわ。
次の手紙を待っているわ。ハグを。
、あなたを愛するアイリーンより』
アーガスは手紙を読み進めた。
「あなたとトールが一緒に設計してくれた車椅子が、今、たくさんの人を助け」という箇所を見た時、微かに眉をひそめた。
アイリーンが「ヴァンデル商会」と「旅行鞄」に言及した時、彼の呼吸が一瞬止まった。
(車椅子……旅行鞄……)
彼の脳内は混乱に陥った。
(どうして? あれは……あれはただ、俺とトール兄さんが問題を解決するために、手すさびに描いた(ラフスケッチした)ものにすぎない)
(たったあれだけで、『竜の税』を解決した? 工房を拡張しただと?)
「あなたが送ってきた図面はね、私たちの所では『首席職人の依頼』なの」
この一文を読んだ時になって初めて。
彼は自分の脳内の根深い基盤が、手紙の言葉によって一つ一つ叩き砕かれ、崩壊していくのを感じた。
彼はふとあの夜を思い出した。
窓の下で「どうかお願いします」という文字を書いては直し、直しては書き。
まるで何度もなぞることでしか、指先の震えを抑えられなかったあの時のことを。
(俺は頼み込んでいたんだ)と彼は思っていた。
自分はずっと、卑屈に嘆願する者であり、家族の足を引っ張るお荷物だと思い込んでいた。
しかし、彼はそうではなかった。
彼はお荷物などではない。
源だったのだ。
彼のあの何気なく手を下した「小さな事」こそが、本当に家族の運命を変える基盤となったのだ。
そして彼が送った罪悪感に満ちた助けを求める手紙は。
家族の目には、全く助けなどではなく、とうに自分の価値を証明した首席職人が下した、当たり前の依頼として映っていたのだ。
彼はゆっくりと顔を上げ、視線を箱の底にある重々しい小袋に戻した。
その重さは、バラストのように重く。
すべての非現実的な幻想を、容赦なく現実の地面へと叩き落とした。
彼は目を閉じた。
罪悪感と自己嫌悪によって十数年間も凝り固まっていた胸の奥の冷たい硬塊。
それが、遥か故郷から届いた、煮えたぎる溶岩のような温かい流れによって、強引に打ち砕かれるのを感じた。
その硬塊は破裂するのではなく、その温もりの中で、少しずつ、音もなく溶けていった。
長い時間の後。
一滴の温かく塩辛い液体が、きつく閉じた目尻から滑り落ちた。
長年の栄養不足で少し青白い頬を伝い、優しい言葉で埋め尽くされた便箋の上に滴り落ちた。
決して悲しみの涙ではない。
魂の解放だった。
しばらくして、彼はようやくゆっくりと息を吐き出した。
まるで、長年肺の奥底に鬱積していた冷たい黒煙を、完全に吐き出したかのようだった。
「よし」
彼は誰もいない部屋に向かって言った。
声はしゃがれていたが、自分でも気づかないほどの、久方ぶりの軽やかさが混じっていた。




