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第十四話-【第二幕:商人の嗅覚――「車椅子」という名の巨大な新市場】

 責任者の視線は、アイリーンが座っているその奇妙な器具に落ちた。

 彼は微かに眉を上げ、まるで新たな鉱脈の価値を嗅ぎ取ったかのようだった。


「それは……従者が押さなくてもいい椅子か?」


 彼はついに我慢しきれず、小声で尋ねた。


「ふふっ、まずは箱からご覧になりますか?」


 アイリーンはふわりと微笑み、巧みに商談のペースを握って、話を本題へと引き戻した。


「こちらが、先ほどおっしゃっていた『アイアンソーン製・旅行鞄』の試作品ですわ」


 彼女は鉄と皮革の匂いの中に、すでに新しい商売の気配を嗅ぎ取っていたのだ。


 アイリーンは箱の横にある取っ手の留め金を外し、引き手を使って箱を作業台のそばまで引きずってきた。

 トールはここでようやく我に返って手を貸し、二人がかりで持ち上げて押し、それを作業台の上に乗せた。


 トールが留め金を弾くと、箱の蓋が跳ね上がった。

 彼が引いてロックすると、引き手が軽快な「カチャ」という音を立てた。


 アイリーンは傍らで、澱みなく簡潔に説明した。


「箱の角は補強してあります。引き手は二段階で固定できるようになっていますのよ」


 責任者が手を伸ばして引っ張ってみると、箱は地面にぴったりと沿って滑らかに動いた。

 曲がる時も安定して偏らず、止まる時も揺れない。


 彼は指の関節で箱の角を叩き、さらに箱の蓋を押してみた。

 これはおもちゃではなく、長旅の過酷さに本当に耐えうる代物だ。


 彼は最初呆然としていたが、すぐに目を輝かせた。

 それは商人特有の眼差しだった。「需要」と「供給」が完璧に合致するのを見た時、彼らの瞳は光を放つのだ。


「街道沿いの歩荷や旅人は、毎日箱に締め付けられて肩を青くしている」


 責任者は小声で評価した。


「これを引いて歩く形に改良し、一人一つ引いて歩けば、労力を省けて肩も傷めず、道中をより速く、より遠くまで進める。宿場も商隊も、皆これを欲しがるだろう」


 彼は顔を上げて笑った。その笑いには、計算し尽くした後の痛快さがこもっていた。


「いい品だ。これは売れる」


 笑い声を収めると、彼の表情はすぐに引き締まり、後ろに向かって手招きした。


「お前、ちょっと見に来い」


 同行していた職人が足早に前に出た。


 二人は箱を横に倒し、箱の角を触り、引き手を押し、釘の縫い目を一本一本丹念に調べた。

 さらにそれぞれが引いて数歩歩き、急停止し、方向を変える。

 わざと石の隙間で二度ほど跳ねさせて、音を聞き、揺れ具合を見た。


 彼らの顔に浮かんでいた困惑と衝撃は、次第に「畏敬」へと塗り替えられていく。


 責任者は掌の埃を払い、短く頷いた。


「手荒に扱っても耐えられる。外へ出よう」


 一行は扉を押して外へ出ると、街角の最も状態の悪い道に立った。

 割れた石板、砂の混じった緩い坂、数段の低い階段。


 従者が箱を引きずって砕石を避け、わざと砂の帯を横切るように引っ張った。

 だが車輪は砂を噛んで空回りすることもなく、引き手も振動で節が縮んでしまうようなことはなかった。


 従者たちの表情が徐々に変わっていった。


 元々のからかいや疑いは目尻の奥へと退き、代わりに砂漠の旅人がオアシスを見た時の渇望へと取って代わられた。

 それは「俺も一つ欲しい」という眼差しだった。


 工房に戻ると、責任者はまず箱を作業台の上に戻し、それからようやくアイリーンの足元へと視線を落とした。


「さあ、次はこの魔法のような椅子について話し合ってもいいだろうか?」


 彼は半拍ほど考え込んだ。


「これは一体何だ? 従者に持ち上げてもらうことなく、体の不自由な者が自分で移動できるのか?」


 アイリーンは頷き、軽くハンドリムを押した。


 椅子は滑らかに進み、彼女は左右で力を変え、左へ行きたければ左へ、右へ行きたければ右へと、機敏で自由自在だった。

 終始、他人の助けを必要としなかった。


 この椅子はアーガスとトールが、下半身に力が入らない彼女のような者のために作ってくれたものだ。

 彼女は自分の慣れ親しんだ方法で実演しただけだが、責任者の目には、これがまるで未来の工学技術のように映った。


 責任者は前に出て試しに押してみた。軽く押すだけで進む。

 彼は二、三の角度を変え、さらに椅子の背もたれに二袋の荷物を掛けてみたが、それでもスムーズだった。


 その瞬間、商人の目に、先ほどの旅行鞄の時とは異なる光が宿った。

 彼はまるで、見えない帳簿を新しいページへとふいにめくったようだった……。


 これは単なる小賢しい新発明などではない。

 いまだ名付けられていないが、至る所に存在する「巨大な需要」なのだ!


 老人、労働災害に遭った鉱夫、戦後に障害を負った兵士、神殿の年老いた祭司、学院で負傷した見習い、出産を控えた婦人や産後の婦人……。

 どの町にもいて、しかも毎日増え続けている。


 もし彼らが「従者も必要とせず、誰にも頼ることなく」自分で移動できるようになれば、尊厳と効率が同時に解放される。


 椅子……いや、これは一つの道だ!


 これは単なる「一つの器具の販売」に留まらない。

 全く新しい商売の立ち上げであり、前人未到の業界を開拓するということだ!

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