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第十三話-【第三幕:ただの椅子ではない。少女が富商に突きつけた「希望」の価値】(挿絵あり)

 三日目の午後、転機が訪れた。


 一人の年老いた富商が工房の前を通りかかった。彼の馬車は華麗で、銅の縁取りが施されていた。

 彼は突然御者に馬車を止めさせ、その視線をアイリーンの乗っている車椅子に向けた。


 それは同情の眼差しではなく、真実の必要性から来るものだった。


 彼の目には驚きがあり、好奇心があり、そして「ついに見つけた」という焦燥があった。

 彼は馬車を降りて近づき、その滑らかな線と安定した構造をじっくりと観察した。


「この椅子は……あなた方が作ったのか?」


 アイリーンは深呼吸をした。


「はい、私の家族が私のために設計したものです」


 富商は頷いた。


「私の妻は長年病床に伏しており、動くのが不自由なのだ。もしこれがあれば、ずっとベッドに寝たきりでいなくて済む」


 彼は少し言葉を切り、突然傲慢な、恩を着せるような口調に変わった。


「こういうものは……相場の倍の銅貨を出そう、お宅への援助のつもりだ。値段を言いなさい、あまり高く吹っ掛けるなよ」


 その言葉はナイフのように、アイリーンの心に真っ直ぐ突き刺さった。


 倍の銅貨。

 彼は値段すら聞かずに、施しの態度をとったのだ。

 その上から目線の口調は、昨日のあの貴婦人と全く同じだった。


 屈辱の記憶が瞬時に蘇り、銅貨が転がる音がまだ耳元で響いているようだった。

 胸が締め付けられ、無念さがこみ上げてきて、喉を突き破りそうになった。


 しかし彼女はこらえた。


 深呼吸をし、その無念さを胸の奥へと押し込んだ。

 彼女は顔を上げ、富商を真っ直ぐに見つめた。もはや卑屈さはなく、目をそらすこともなかった。


「ただの椅子だとは思わないでください」


 彼女の声は少し上ずっていたが、その分だけ真剣な響きがあった。


「奥様がご自身の意思で進み、振り返り、止まるための……『足』となる器具なのです」


 彼女は車椅子の各部分を指さし、一生懸命に言葉を紡いだ。


「木材には軽い鉄木を使っていて、重くならないように工夫しています。車輪は鉄で縁取った木の輪ですから、すり減りにくくて、石畳の道でもスムーズに動くんです。車軸も特別に磨いてあるので、方向転換も……すごく機敏なんですよ」

「背もたれの角度は何度も調整して、腰をしっかり支えられるようにしました。肘掛けの高さも、使う人が自分の力で立ち上がれるように計算してあるので……毎回、家族の手を借りる必要がないんです」


 彼女は少し間を置いた。


「私は毎日これに座り、すべての通りを歩き、すべての路面を試しました。誰よりもこの良さを知っています。なぜなら、これは私に自分の足で歩くことを可能にし、健常者と同じように生きることを可能にしてくれたからです」


 彼女は富商の目を真っ直ぐに見据えた。


「これは施しで買えるようなものではありません。これは技術であり、心血であり、一人の人間が再び立ち上がるための希望なのです」


 富商は沈黙した。


 彼はこの車椅子を改めて見直し、指でそっと肘掛けを撫でて、その精巧な研磨を感じ取った。

 彼はしゃがみ込み、車輪の構造を丹念に観察し、各接続部の細部を見た。


 彼は自分の妻を思い出した。

 かつては庭を走り回っていたあの女性が、今はただベッドに横たわり、毎日天井を見つめている。

 彼女の目に浮かぶ絶望を思い出し、「私はお荷物になってしまった」と語った時の声を思い出した。


 もしこの椅子があれば、彼女は自分で起き上がり、自分で車輪を押して、行きたい場所へ行ける。

 人間らしく生きられるのだ。


 彼は顔を上げ、アイリーンを見る表情が、「哀れみ」から「真剣」へと変わった。

 彼は立ち上がり、厳粛な語気で言った。


「君の言う通りだ。これは銅貨で測れるようなものではない」


 彼は懐から一つの皮袋を取り出した。ずっしりと重く、中には銀貨が入っている。


「一台注文しよう。君たちの正規の価格で、君たちの最高の品質で作ってくれ。私は君たちを哀れんでいるわけではない、妻を救ってくれるよう頼んでいるのだ!」


 彼は街角の馬車のそばで、自ら第一号となる注文書を書き上げた。

 車椅子一台、前金として銀貨を支払い、「家内へ」と備考を添えて。


挿絵(By みてみん)


 アイリーンはその紙を受け取り、未来をこじ開ける鍵を握るかのように、指でそれをしっかりと押さえた。


 彼女の目頭は熱くなったが、今度は屈辱からではなく、認められたからだった。

 それは施しではなく、正当な取引であり、対等な尊敬の証だった。


 彼女は注文書を懐に挟み、その熱を持ったまま家へと帰った。

 足元の石畳の道さえも、軽やかになったように感じられた。

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