第十二話-【第四幕:誇り高き「転生者」の敗北。故郷へ宛てたSOSの設計図(ブループリント)】(挿絵あり)
彼一人では完成できないもの。
彼は、初めて、とうの昔に離れてしまったあの温かい家に、「助けを求める(ヘルプ・リクエスト)」必要があった。
深夜、アーガスは机の前に座り、微光術の明かりを頼りに、真新しい羊皮紙を広げた。
木炭のペンを握る彼の手は、初めて、エンジニアには似つかわしくない、見知らぬ震えを感じていた。
時代を超越した知恵で家族を救うと誓った、誇り高き「転生者」。
しかし今の彼は、自分が「保護対象」と見なしていた遅れた家族に対し、頭を下げなければならないのだ。
この要請そのものが、彼の自尊心を徹底的に粉砕していた。
彼がペンを下ろし、あの絶対に光を通さない「鉄木の暗箱」の構造図を描く時。
兄トールの姿が制御不能なまま目の前に浮かび上がった。
トールが眉をひそめ、千斤の重い鉄鎚を振るうことに慣れたあの大きな手で、不器用に、精密な木工カンナを操作している姿が見えた。
彼が要求する精度を達成するためにトールが何度も失敗し、最後には無念の怒号と共に、鉄木の端材を部屋の隅に激しく叩きつける姿が見えた。
彼が「スライム感光薬」の精製手順を書き記す時。
脳裏に浮かんだのは、母サラの姿だった。
彼女には専門の精製設備などなく、最も原始的な石臼を使って、硬いスライムの結石を少しずつ粉末にすりつぶすしかない。
そして最も基礎的な濾過布を使い、肉眼ではほとんど見えない不純物を、蝋燭の光の下で何度も何度も分離するのだ。
常に優しかった彼女の両手が、粗い硬い粉によって赤く擦りむけ、血が滲むまで。
(……滑稽だ)
彼の心に、冷たい、自嘲する声が響いた。
(俺がかつて見下していた彼らの『手作業』に、まさか頼らなければならないなんて……)
便箋に書かれた「スライム感光薬」や「鉄木の暗箱」という一つ一つの言葉が、彼の無能さを無言で認めているかのようだった。
その感覚は、いかなる失敗よりも耐え難いものだった。
長い内的葛藤を経た後。
彼は最終的に、不器用ながらも無比の誠実さをもって、彼の運命を決定づけるかもしれないその家族への手紙を書き上げた。
彼は自身の窮状には触れず、あの遥か手の届かない二階のことにも触れなかった。
ただ、より効率的に学習するために、新しい魔導具を設計したのだとだけ伝えた。
彼は部品で埋め尽くされた設計図と、詳細な仕様が記された長い材料リストを同封した。
手紙の末尾で、彼は長くためらった。
彼はその羊皮紙を見つめ、手にした木炭のペンを空中に浮かかせたまま震わせ、なかなか下ろすことができなかった。
それはまるで、間違いを犯した子供が、親にどう切り出せばいいのか分からない時のようだった。
最終的に、彼はやはり、彼にとって山のように重いその言葉を書き留めた。
――どうか、家族の協力を願う、と。
手紙は、学院の魔法の使者へと託された。
彼は自身の唯一の命綱を投げ放ったのだ。
彼は窓の前に静かに立ち、その伝書隼が遠くへ向かって羽ばたいていくのを見送った。
その姿は徐々に小さくなり、やがて夜の帳の中へと完全に消え去った。
窓ガラスに結露した冷気が、窓枠に押し当てられた彼の指を凍えさせたが、彼は依然として微動だにせず、いかなる影も見えなくなるまで見つめ続けた。
それからゆっくりと手を収めた。
群山に隔てられた遥か遠い故郷に、彼が投げ放ったこの最後のロープを、受け止めてくれる人がまだいるのだろうか。
彼には分からなかった。
だが、もしこの最後の希望さえも打ち砕かれてしまえば。
その時、彼自身が本当に、永遠に漂流し続ける、世界から隔絶された孤島になってしまうことだけは分かっていた。
【あとがき】
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