第十二話-【第一幕:時間と資金のデッドライン。立ちはだかる「権限不足」の絶対障壁】
第十二話:権限(アクセス権)不足の解決策――魔法世界の「化学反応」
チューベローズの香りに、氷のように冷たい血の匂いが混ざり合った奇妙な甘い香りが、まだ空気中に微かに漂っていた。
エルヴィラ院長のしなやかな後ろ姿が射撃場の影の奥へと消え、アーガス一人が静かにその場に取り残された。
彼は手にある「八十五点+五」と書かれた、インクも乾かぬ成績表を見つめた。
勝利の喜びは、銃身が崩壊した時のあの宙を舞う金属の塵のように短く、一瞬で消え去った。
彼はすぐに悟った。
このテストのため。
規則を迂回するための唯一無二の鍵を鍛造するために、彼が支払った代償は、丸二週間という時間だった。
二週間、図書館に一歩も足を踏み入れていないのだ。
彼があの伽藍堂の六人部屋に戻ると、強烈な焦燥感が突然襲ってきた。
その感覚は遅れてやってきた反動のように、彼の胸を激しく打った。
彼は見比べた。
机の上に積まれた、彼自身の手で書き写された「一角獣学派」と金属精製に関する分厚いノートの山。
そして部屋の隅にある、とうに生命線のカウントダウン(秒読み)と見なしている空っぽの革袋とを。
時間と金。
この二つの冷たい絞首縄が、全く異なる方向から、ゆっくりと、しかし無情に締まりつつあった。
(……駄目だ。遅すぎる)
彼の心に、冷たい警報が鳴り響いた。
彼のエンジニアとしての魂が制御不能に陥り、脳内に冷酷で赤字だらけの進行スケジュール(タイムライン)を引き出し始めた。
(……三階の公開エリアの蔵書は、約三千冊。今の俺の読書と書写の速度では、寝食を忘れても、初期のデータ整理を完了するのに少なくとも五年はかかる)
(ましてや二階の禁書エリアのデータ量は、三階の少なくとも十倍はある……)
(結論:俺の金と学内ポイント(クレジット)が尽きる前に、従来の方法に頼って知識の原始的な蓄積を完了させる可能性は……ゼロだ)
これは推測ではない。
データに基づいた、冷酷な死刑宣告なのだ!
翌日の早朝。
アーガスはテストに合格して稼いだばかりの哀れなほどの学内ポイントと、心の中の最後の一抹の希望を胸に、再び学院の大図書館へと足を踏み入れた。
今回、彼の目標は明確だった。
二階の奥深く、「上級文献区」だ。
巨獣の肋骨のような螺旋階段を上った彼は、初めて、あの見慣れた「知識の墓場」で立ち止まることはなかった。
二階の奥深くへと続く入り口まで、真っ直ぐに向かった。
彼が到着しようとしたその時。
流れる水銀のような魔法の光幕が、音もなく波紋を立てた。
華麗な服を着て、胸に宝石をちりばめた家紋のブローチを身につけた二人の上級生が、リラックスした様子で中から出てきた。
その内の一人は、甘やかされた者に特有の嫌悪感を言葉に滲ませて、仲間に愚痴をこぼしていた。
「……ジャスミン教授が指定した『古代光魔力構造考』とやらは、本当に長たらしくて退屈極まりない。おかげで午前中をまるまる無駄にしちまったよ」
そう言うと、彼は一冊の分厚い典籍を無造作に投げ渡した。
アーガスの目には聖物のように古の知識の光輪を放って見えるその本を、どうでもいい石ころを投げるように、後ろに付き従っている従者服を着たドワーフへと。
その何気ない光景は、真っ赤に焼けた鋼の針のように、アーガスの瞳の奥深くに激しく突き刺さった。
彼は深呼吸をして、心の中に渦巻く感情を押し殺し、前へ進み出た。
光幕の傍らには、黒曜石で彫刻された等身大のゴーレムの守衛が静かにそびえ立っている。
魔晶石で作られたその両目は、いかなる感情も持たない冷たい赤い光を点滅させていた。
彼がその光幕に触れようとした瞬間。
ゴーレムの守衛の巨大な石の腕が、音もなく、しかし極めて断固として、彼の前に立ちはだかった。
いかなる生物にも属さない、純粋な魔力で構成された機械的な(フォーマットされた)声が、直接彼の脳裏に響いた。
『権限(アクセス権)が不足しています』
『このエリアは、「首席」「研究生」、または「教授の推薦状」を所持する者のみに開放されています』
『それ以外の者は、一時間ごとに学内ポイントによる費用の支払いが必要です』
その冷たく、いささかの融通も利かない声。
先ほどの貴族の学生の軽蔑的な愚痴と重なり合い、見えない最も重いハンマーとなって、アーガスの心を激しく打ち砕いた。
彼は、この世界の知識の殿堂から、完全に閉め出されてしまったのだ。




