第十話-【第一幕:理論は完璧。だが『推進力』のバグが立ち塞がる】
第十章:銃身の創造――異世界の常識を粉砕する工匠
図書館の三階。
あの忘れ去られた隅で、アーガスとミリーは空中に静かに浮かぶ、透き通った「疑似水」を呆然と見つめていた。
呼吸すら忘れていた。
彼らは成功したのだ。
歴史に見捨てられた設計図と、異世界から来た論理を用いて。
魔法文明全体を覆すに足る真理を、共同で証明したのだ。
アーガスの内心は、創造者としての、かつてない狂喜に飲み込まれた。
しかし、彼のエンジニアとしての魂は、感情の衝撃による短いフリーズを経験した後、すぐに冷たく、いささかの温度も持たない姿勢を取り戻した。
そして、彼の最初の、唯一の目標に再び焦点を合わせた(フォーカスした)。
(……理論検証はパスした。だが……これがゴール(エンドポイント)じゃない)
彼の視線は再び冷たく鋭くなった。
(俺がこれを研究しているのは、手品をするためじゃない。『絶対安定』を備えた、方向を与えることができる弾頭を創造するためだ!)
(……純粋なエネルギー体は、魔法陣から離れると俺の意志では制御できなくなる。だがもし、俺が放射するのが『エネルギー』ではなく『実体』だとしたら?)
(『凝結金属』の技術を使って、何もない空間から微小で完璧な『弾丸』を創り出す)
(そして、最も基本的な『衝撃術』を使ってその後方で爆発させ、『火薬』の推進力とする!)
(弾丸自体が物理法則に従う実体であれば、その弾道は必然的に直線になる!)
この完璧で隙のない思考は、彼を興奮で身震いさせた。
彼はすぐに身を翻し、ミリーを呆然とさせたまま、学院の個人練習室へと突進した。
実験を、直ちに開始する。
彼は習得したばかりの「疑似魔法」を用い、空白の鉄板を取り出した。
疑似魔法金属の魔法陣を描き、その中心に鉄の分子配列を書き込む。
「曙光」のスロットに挿入する。
彼は人差し指を伸ばした。
指先の上に、微弱な魔力の光が灯る。
それに伴い、空気中から、米粒大の、金属の光沢を放つ鉄の弾が凝縮して現れた。
第一段階、成功だ。
彼は慎重に、その鉄の弾を空中に浮かせた。
そしてその真後ろで、最も基本的で教科書通りの「衝撃術」を発動させた。
理論上、この衝撃波は銃身の中の火薬のように、この完璧な弾丸を真っ直ぐ前へと推進させるはずだ。
しかし、次の瞬間。
「推進力」となるはずのその魔力は、前への推進を生み出さなかった。
あろうことか、あの哀れな鉄の弾の周囲で、無秩序で全く不規則な球状のエネルギーとなって轟然と爆発したのだ!
鉄の弾はその混沌としたエネルギー流に乱暴に弾かれた。
悪ガキに投げられた小石のように空中で回転し、無力に地面に落ちる。
清らかで、嘲笑に満ちた「カラン」という音を立てた。
アーガスはその場に立ち尽くした。
彼は理解した。
「弾丸」は創れても、爆発の推進力は四方へ拡散してしまうのだ。
俺には「銃身」が必要だ!
銃身を解決しなければ、彼の最も核心的な欠陥は、依然として解決できない……。
疑似魔法金属の成功は、この瞬間、全く役に立たない、哀れな奇跡へと変わってしまった。
(銃身、か……。一つの難題を解決すれば、また別の難題が生まれる)
(異世界に来てまで、俺はデバッグの運命から逃れられないのか?)
神の領域を突破したとはいえ、凡人の枷までは外せていないのだ。
彼は魔力が尽きて消散していく鉄の弾を失意の中で見つめ、黙って練習室を出た。
【あとがき】
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次の章も、全力で鍛えます。




