第八話-【第三幕:無料タイム終了。平民の前にそびえ立つ、越えられないルールの壁】
アーガスは長い沈黙に陥った。
彼はようやく理解した。
自分は孤独な異物などではない。
失われた伝承の、正当な継承者だったのだ。
二人がこの思想の「同期」によって興奮を隠せずにいた、まさにその時。
図書館三階の壁にある、時間を計るための魔法水晶が、音もなく色を変えた。
安全を示す柔らかな緑の光から、警告を促す黄色の点滅へと変わったのだ。
最初に反応したのはミリーだった。
彼女はその点滅する水晶を見て、顔に焦りの色を走らせた。
「もう時間だわ」
彼女は声を潜め、切羽詰まった様子でアーガスに注意した。
「ここの一般閲覧区は、新入生は毎日二時間しか無料で利用できないの。時間を超過すると、学内ポイント(クレジット)を引かれてしまうわ」
アーガスはそれを聞き、あの知的探求の狂喜から抜け出した。
彼はここで初めて、自分がこの埃にまみれた隅で、長い時間を過ごしてしまったことに気づいた。
彼は立ち上がり、あの『粒子派の誤謬』を登録して借りようとした。
しかし、彼の視線は制御不能なまま、二階の方向へと惹きつけられていた。
アーガスは、帰属感を見出したあの衝撃から我に返った。
しかし彼の視線は、ミリーの肩越しに、図書館のさらに奥深くを見つめていた。
さらに上層にある、水波のように揺らめく微光の結界に覆われたエリアだ。
そこには、月光木で作られたいくつかの古い独立した書庫が微かに見え、入り口には分厚い鎧を着たゴーレムの守衛さえいた。
「あそこは……」
彼の目には、知識に対する最も原始的な、隠しきれない渇望が満ちていた。
ミリーは彼の視線を追ってそこを見た。
その瞳には、羨望と無力感が入り交じった複雑な表情が浮かんだ。
「あそこはね……」
彼女の声は一筋の煙のように軽かった。
「『上級文献区』よ」
彼女は少し言葉を切り、淡々とした、それでいて心を抉るような声で残酷な事実を突きつけた。
アーガスがさきほど燃え上がらせたばかりの希望の炎に、「現実」という名の最も冷たい泥水を浴びせかけたのだ。
「聞いた話だと、中に入るだけでも一時間につき大量の学内ポイント(クレジット)が必要らしいわ。さらにその奥は、各大学院の首席か、あるいは院長クラスの直筆の推薦状を持つ正式な研究生でなければ入れない深部なのよ」
この言葉は、見えない冷たいハンマーのように、アーガスの心に激しく打ち下ろされた。
「同盟者」と「理論的根拠」を見つけたことで、一度は比類なき熱を帯びた彼の心。
それはこの瞬間、一瞬にして冷却され、凍りついてしまった。
彼はついに、極めて明確に悟ったのだ。
この世界において、彼と「真実」の間に横たわっているもの。
それは階級、身分、そして特権によって共に築き上げられた、現在の彼には……到底越えることのできない、「権限(アクセス権)」という名の絶対的な障壁なのだと。
思想の衝突によって、先ほどまで興奮の光を点滅させていた彼の黒い瞳は、少しずつ、その光を失っていった。
代わりに現れたのは、さらに深く、さらに冷たい……絶望だった。
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【あとがき】
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