第三・五話-【第三幕:折れた傲慢】(挿絵あり)
半日後。
鑑定科の長机には、すでに暴力的に解体された旅行鞄の残骸が山のように積まれていた。空気中には、乾燥し、どこか腐敗した木屑の匂いが満ちている。
ウォーレンは出来上がったばかりの試験報告を手に、足早に執務室へ戻ってきた。その顔色はいつもより重く、そこにはわずかな信じがたさすら浮かんでいた。
「お嬢様、結果が出ました」
リナは変わらず窓辺に立っていた。姿勢さえ、半日前とほとんど変わっていない。
「言いなさい」
「秋収月ロットの旅行鞄に対して全数検査を行いました。結果は……」
ウォーレンは一度、息を吸った。
「試験にかけた百個以上のサンプルのうち、八個以上が、設計上の耐荷重上限の半分にも達しない段階で、支持構造の崩壊を起こしました」
彼は少し言葉を切り、背筋を伸ばした。
「偶発的な要因を排除するため、私の判断で、前後の月に出荷された旅行鞄も無作為に抽出し、対照群として試験いたしました」
その声には、ヴァンデル家の執事としての有能さが滲んでいた。
「結果は、故障ゼロです。あのロット以前の鉄木は鋼のように硬く、完全に基準を満たしておりました」
リナの視線がわずかに動いた。
彼女は振り返り、ウォーレンを見た。口に出して称賛することはなかった。ただ、ほとんど気づかれないほど小さく頷き、眼底に満足の光を走らせる。
それは、部下が自分の思考についてこられたことへの、無言の承認だった。
ウォーレンは断裂した木片のサンプルを机の上へ置いた。
「この断裂口をご覧ください。木材が引き裂かれた時にあるはずの繊維の粘りがありません。平らで、乾ききっており、微細な黒い粉末まで出ています」
彼の指が、灰色に変わった木質繊維を示す。
「木材は、まるで内部の生命力を吸い尽くされたかのような状態です」
リナはその生気のない木片を見つめた。
その目には、やはりそうか、という冷たい光が宿っていた。
「車椅子が折れ、旅行鞄も崩れる。製造した職人が同じでも、形も用途も違う。なら、問題の根は材料にある」
彼女は淡々と言った。
「工芸の問題なら、ここまで均等に、ここまで徹底して腐り果てるはずがないわ」
リナは手を伸ばし、その木片の縁を軽くつまんだ。
「パキッ」
乾いた音と共に、木屑が散った。
「老化……いいえ。これは病変よ」
リナの声が低くなる。
「ウォーレン。黒鋼商会は先月、鉄峰山産の最高級鉄木を大々的に宣伝していたわね?」
「はい、お嬢様」
ウォーレンは即答した。
「彼らは高級文房具市場を押さえるため、百年不壊を謳った鉄木製ペーパーナイフの新作を発表しております」
リナの視線が、執務室の隅に置かれた廃棄物用の籠へ落ちた。そこには競合商会から送られてきたいくつかの見本が捨てられており、その中には黒鋼商会の記念版ペーパーナイフも一本含まれていた。
「それを拾ってきなさい」
ウォーレンは従った。油で磨かれたように滑らかなペーパーナイフを拾い上げ、きれいに拭いてからリナの前へ置く。
リナはそれに触れなかった。ただ、その青い瞳で、まもなく判決を下される囚人を見るように冷たく見下ろした。
「黒鋼商会の仕入れ筋はアイアンソーン工房とは違う。でも、大元はすべて鉄峰山にある」
彼女は顔を上げ、ウォーレンを見た。
「もし私の推論が正しく、これが鉄峰山の原料から発生した病だとしたら、不運に当たったのはアイアンソーン工房一社だけではないはずよ」
リナの口元に、冷たい笑みが浮かぶ。
「黒鋼商会が同じ山の木材を使ったのなら、彼らの百年不壊という宣伝文句は、今ごろ客の手の中で笑い話になっているはずだわ」
リナの目から、眠たげな気配は完全に消えた。
代わりに現れたのは、自らの領地を巡回する女王のような冷徹さだった。
「市場に放っている私たちの耳を動かしなさい。黒鋼商会、それから鉄峰山産の鉄木を使っていると宣伝している商会すべてについて、最近一ヶ月の返品率と苦情記録を調べ上げるの」
彼女は冷ややかに続けた。
「特に、断裂、粉砕、折損といった言葉に関わるものをね。この嵐の中にいるのが、私一人だけなのかどうかを知りたいわ」
「承知いたしました」
ウォーレンはすぐに理解した。
「もしこれが広範囲の材料劣化であれば、市場にはすでに何らかの噂が出ているはずです。直ちに人員を派遣し、情報を集めさせます」
「よろしい」
リナの口元に、冷たい笑みが刻まれた。
「調査結果をまとめなさい。進展があれば、最速の信使鳥で私に届けること」
「お嬢様に、お届けするのですか?」
ウォーレンはわずかに目を瞬かせた。
「お嬢様は、ここで結果をお待ちにならないのですか?」
「待たないわ」
リナは身を翻し、衣装掛けへ向かった。その動きには、すでに決断があった。
「アイアンソーン側の五件の事故は、すでに動かしがたい事実よ。これが全体に広がる災厄であろうとなかろうと、私の資産が損なわれていることに変わりはないのだから」




