第二話-【第七幕:慈悲という名の略奪】
バロックは懐から一つの巻物を取り出した。
それを広げると、細かな条文がびっしりと書き込まれていた。
「あなた方が自力でこの問題を解決できず、かえって事態を悪化させてしまったのであれば」
彼はゆったりとした声で言った。
「この技術を、しばらく王国の管理下へ置かれてはいかがでしょう」
空気が凍りついた。
「王国は専門の技術審査会を設けます。あなた方の工芸を調べ、評価し、改良し、安全な形へ整えるのです。そうすれば、今ある問題を解決できるだけでなく、この技術をより多くのドワーフ同胞へ届けることもできる」
「そしてあなた方は」
彼はブレイクを見た。
「創始者として、山王陛下からの褒賞を受けることができる。名誉工匠の称号、賞状、そして」
そこで、彼の声はさらにやわらかくなった。
「残された名声を守る機会を得る」
バロックは、壊れた車椅子をちらりと見た。
「考えてみてください。王国が、あなた方が自ら技術を差し出し、全ドワーフのために貢献したのだと公に称えれば、昨日の騒動はどう見えるでしょう」
彼は微笑んだ。
「責任ある職人が、問題のある品を自ら改めた。そう語られるでしょう。人を傷つけた悪徳商人ではなく」
それは略奪だった。
だが彼は、それを庇護のように語った。
それは脅迫だった。
だが彼は、それを救済のように差し出した。
ブレイクは震えながら顔を上げ、バロックを見た。
言いたいことはあった。
これは俺たちの心血だ。
どうしてお前たちに渡さなければならない。
そう叫びたかった。
だが口を開いても、声が出なかった。
床に散らばる残骸が、すでに答えていた。
お前たちには、守る力がない。
「もちろん」
バロックは巻物を静かに巻き戻した。
「山王陛下は慈悲深いお方ですが、公正なお方でもあります。陛下は、あなた方に半月の猶予をお与えになります」
彼の声が、より事務的なものへ変わった。
「その間に、完全な技術報告書を提出してください。材料の選定、加工手順、構造設計、危険性の評価、そして考えうる改良案のすべてを」
「十五日後、それを受け取ることができれば」
彼はまた微笑んだ。
「この件は、もっとも体面のよい形で収められるでしょう。あなた方は生産を続けることができる。ただし、王国の定期的な監督を受け、統一基準と割り当てに従っていただくことになります」
「ふざけるな!」
トールが猛然と立ち上がった。
拳は固く握られ、関節が白くなっている。
「これは俺たちの心血だ! どうしてあんたらに渡さなきゃならない!」
「トール……」
ブレイクが息子を止めようとした。だがその声は、あまりにも弱かった。
「どうして、ですか」
バロックはトールを見た。怒りもせず、声を荒げもしない。
「公共の安全を損なったからです。昨日、あの老人が今も寝台から起き上がれずにいるからです。外の人々が、あなた方の看板を見るだけで道を避けるようになったからです」
彼は一歩、トールへ近づいた。
「それとも、トール君」
声は穏やかだった。
だが、冷たかった。
「さらに多くの人を傷つけてからでなければ、自分たちの心血が守るに値すると証明できませんか」
トールの顔が赤く染まった。唇が震える。だが、何も言えなかった。
アイリーンが肘掛けを握りしめた。
「でも……私たちはまだ、原因が分かっていないのです。このまま技術を持っていって、もし……」
「もし、何です」
バロックが遮った。
「もし王国の専門家でも解決できなかったら、ということですか。ならば少なくとも、王国は全力を尽くしたことになる。あなた方が危険な品を作り続けるよりは、はるかにましです」
サラは隅で顔を覆い、声を殺して泣いていた。
その時、アーガスが口を開いた。
「もし、解決できなかったら?」
恐ろしく静かな声だった。
バロックは初めて、はっきりとアーガスを見た。
その目に、わずかな興味が浮かぶ。
「解決できなかった場合は」
彼の笑みが消えた。
残ったのは、官僚としての冷たい顔だった。
「より多くの無辜の民を守るため、王国は公共安全を脅かしたものとして、アイアンソーン工房を無期限に封鎖することになります」
彼は少し間を置いた。
「その際には、王家衛隊が自ら赴き、あなた方の技術改善を支援することになるでしょう」
そして、意味ありげに笑った。
「その改善にどれほどの時間がかかるかは……陛下のご判断次第ですが」




